第22話変身
「はぁ~」
ミヅキは目が覚めて立ち上がると…いつもより高い目線に違和感を覚えた…
(あれ?家具が小さくなってる?)
シルバ達が側に居ないし…何故かベイカーさんのベットで寝ていたようだった…。
「あれ?」
声を出すと、いつもと違う低い声にびっくりして口を抑える。
(なに?今の声…)
そっと手を離すと…
「あー…」
やっぱり自分の声じゃない…
「べ、ベイカーさん!」
ミヅキが大声を上げると…
ガターン!
奥で何かが倒れる音が響いた。
何事かと一歩足を出すと…いつもよりも進む距離に扉にぶつかりそうになる…
「きゃぁ!」
野太い声で悲鳴を上げると…
「ミヅキー!」
自分に似た声が自分の名前を呼んでいる…
(えっ?なに?何がおきたの?)
ミヅキはおぼつかない足取りで自分の部屋へと向かうと…そこにはシルバに睨まれている自分の姿があった…。
「シルバ!」
【…ベイカーじゃないな…その気配…ミヅキか!?】
シルバが自分に話しかける言葉に違和感を覚える…
【シルバ何言ってるの?それになんで私がいるの?】
ミヅキが自分の姿を見つめると…
「俺?」
【お前…ベイカーなのか?】
シルバがミヅキの姿の方に向かって驚きの表情を見せる…。
落ち着いて皆で座り話を整理すると…。
「つまり…ミヅキと俺が入れ替わったって事だな…」
「へー!ベイカーさんの目線てこんな高いんだー」
ミヅキが立ち上がりキョロキョロと周りを見ていると…
「ミヅキ…座ってくれ、何だか自分がやってると気馬鹿みたいだ…」
ベイカーさんが自分の体の足をつんつんと引っ張っていると…
【ミヅキ…早く戻さないと…ミヅキの体だが…気配が違うし…ベイカーの体でミヅキの気配…嫌だ!】
シルバがガクッと項垂れる…
「シルバはどうしたんだ?」
ベイカーさんが聞いてくるので説明すると…
「俺だって嫌だわ!俺の体でシルバに抱きつくなよ!」
「えー!駄目なの!シルバに触れないなんて…耐えられない…」
ミヅキが両手を顔に当てて膝を折ると…ミヅキの姿のベイカーがブルっと震える…。
「やめてくれ…気持ち悪い…直ぐにどうにか直す方法を考えないと…とりあえずセバスさんに相談するか…」
「じゃ急いでギルドに行こうよ!」
ミヅキは立ち上がると…
ガン!
戸棚に頭をぶつける…
「いたーい!」
大きな体で蹲ると…
「ミヅキ、大丈夫か?体が大きくなってるから気をつけろよ」
「うっうう…うん…」
べソをかいてゆっくり立ち上がると周りに気をつけながら家を出た…。
ミヅキ姿のベイカーさんを先頭に歩いていると…
「ミヅキちゃん!ベイカーさんこんにちは~」
ギルドの冒険者が声をかけてきた…
「こんにちは~」
「おう!」
「へっ?ミ、ミヅキちゃん…今…おうって…」
ミヅキからの男らしい返事に戸惑っていると…
「あっ!えーとこんにちは~」
ベイカーは言い直してニッコリと笑うと…
ゾクッ…
「なっ…なんだろ?いま寒気がしたぞ…」
冒険者はキョロキョロと周りを見るが…周りに変わった様子はない…
「ベイカーさん、ミヅキちゃんすみません…何だか寒気がして…今日はゆっくり休む事にします…じゃまた…」
冒険者はくるっと来た道を引き返して行った…
「ベイカーさん!変な返事するから驚いてたよ!」
「いや…悪い。ついいつもの調子で…」
「とりあえずお互いのフリをしながら行こうよ」
ミヅキの提案にベイカーも頷くと…
「あっ!ミヅキ、ベイカーさんこんにちはー」
コジローさんが近づいて来た…
【シルバさんもこんにちは!これからギルドですか?】
【…あ、ああ…】
「じゃ俺も一緒に行こうかな!いいかい?」
コジローがミヅキに笑いかけると…
ヒクヒク…ベイカーが笑いかけられ笑顔が引き攣る…
「ミヅキ?」
何だかいつもと様子が違うミヅキにコジローが心配そうに顔を見る…。
「どうしたんだ?大丈夫か?」
コジローがミヅキの頭に手を置こうとすると…
「うわぁー!とっ!」
凄い勢いでミヅキが後ずさった…
ミヅキの拒否反応にコジローがショックのあまり固まると…
「コジローさん!」
ベイカー姿のミヅキがコジローに駆け寄った…
「違うの!コジローさんが嫌なわけじゃないんだよ!」
ベイカーに擦り寄られコジローがビクッと体を固める…
「べ、ベイカーさん…俺…そういう趣味は…」
「はっ!俺だってお前なんてゴメンだわ!」
「ミヅキ…」
コジローが愕然と立ち尽くすと…
「ごめん…」
コジローさんが風と共に消えて行った…
「わぁー!ベイカーさんコジローさんどっか行っちゃったよー!何してんの!」
ミヅキが自分の姿のベイカーの体を叩くと…
「うわぁっ!」
ミヅキの体が後ろに吹っ飛んだ…
「えっ…」
【お、おい!】
シルバが回り込みミヅキの体を壁に激突する直前で止めると…
【ミヅキ!気をつけろよ、自分の体が怪我するぞ!】
【ごめーん!こんなに力が強いなんて…ベイカーさん凄いね…】
「自分に殺されるかと思った…」
ベイカーがはぁはぁと息を整えていると…
「回復~」
ミヅキがベイカーに回復をかけてみる…
「おお!使える!筋力とかは変わったけど…魔法とかはそのままみたいだね」
「ミヅキの体で剣なんて振り回せるかよ…これ…襲われたらどうしたらいいんだ…ミヅキ早いとこギルドに行くぞ!」
「うん!じゃ私がベイカーさん抱っこしてあげるよ、その方が早いんじゃない?」
ミヅキは自分の体を抱き上げるとギルドに向かって走り出した!
「お、おい、ちょっ、ちょっと待て…ミヅキ…」
ベイカーさんの返事も待たずにどんどん走り出すと…
「すごーい!ベイカーさんの体早く走れる!」
「嫌だぁー自分の体に抱きかかえられるなんてー」
ベイカーさんの叫び声を無視してギルドまで走り抜けた…。
ギルドにつくとベイカーさんがガクッと膝を着いて落ち込んでいると…
「ミヅキちゃんどうしたの?」
「ミヅキ大丈夫か?」
「ベイカーさんに怒られたの?」
ギルドのみんなが心配して話しかけてくれる…
「なんでもないよ~気にしないでね」
ベイカーさんがニコニコと笑顔で返事を返してくる光景に皆が怪訝な顔をする…
「ベイカーさん?ミヅキが落ち込んでるのになんで笑顔なんですか?」
「あっ!えーと…ミ、ミヅキはご飯食べられなかっただけだから…気にすんな!」
「?」
「なんか…ベイカーさん変じゃないか?」
「うん…なんかいつもよりなよっとしてるな…」
ベイカーさんからみんなが距離をとろうとすると…
「おい!セバスさんを呼んでくれ!いや!いい行くぞ!」
ミヅキが大股で歩き出すと…
「ミヅキちゃん?」
「な、なんかワイルドになった?」
「あれはあれで…」
「「はっ?」」
そんなミヅキの後を慌ててベイカーが着いて行った…。
「セバスさん!」
ベイカーさんがノックもせずにギルマスの部屋に入ると…
ギルマスとセバスが机で仕事の書類に目を通していた…
「ミヅキさん…?」
セバスさんがノックもせずに入ってきたミヅキに目を向けると…スっとギルマスの前に出る…
「あなた…ミヅキさんじゃありませんよね?」
セバスさんにニッコリと笑いかけられて、ミヅキ姿のベイカーがゾクッとする寒気に立ち止まると…
「ベイカーさん!待ってよー」
開いた扉からベイカーが入ってきた…。
「ベイカーさん?」
セバスとギルマスがミヅキとベイカーを交互にみると
「なるほど…」
セバスが頷いた…。
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