6-6 タンクの在処

 ジェラールも、リャンにキースの話題を投げかけないようにしていた。というより、彼にキースの話をするのを恐れていた。

 キースの思い出話をすれば、リャンの心が目を覚ましてしまう――その瞬間、リャンが自ら命を絶ってしまうような気がするのだった。



 今日のリャンは、調子が良さそうに見える。それでも、何が彼にかわからない。

 リャンの記憶の中で、タンクがキースの存在と強く結びついていたとすれば、タンクの話をすることで、彼の動揺を招く恐れもある。



 ジェラールは、他人の生傷に触れるような心持ちで、こう切り出した。


「リャン。『おつとめ』の宝玉に繋がるタンクのことを、教えてほしいんだ。あんたが繋いだんだろ?」


「タンク? タンク……。ああ、あれの話か……。なぜ?」


 思いのほか、リャンの反応は薄い。どうやら、気に障る話ではなかったらしい。

 落ち着いて話ができそうな雰囲気に、ジェラールはほっとした。


「調子が悪いんだ。原因を調べたい。場所と、タンクとしているものが〈何〉なのかを教えてくれ。すぐに調査隊を向かわせる」


 ジェラールの言葉に、リャンが、静かに首を横に振る。ジェラールがその意図を尋ねる前に、彼はこう言った。


「あれは、火の都フラメリアにはない」


「は?」


 ジェラールは、思わず素っ頓狂な声を上げる。



 火の都フラメリアの外は、それぞれの都に置かれた支部の管轄となっている。他の支部の領域に土足で踏みこむのは御法度だ。


 もちろん、現地支部の了承を得られれば、外部での活動にも問題はない。しかし、大抵の支部は、他支部の干渉を嫌がるものだ。

 調査隊を派遣するのも、簡単ではない。

 

 

 どんなに質のいいタンクでも、点検や修理の手が及ばない場所にあるとなると、運用には致命的だ。


 キースは何を思って、外部のものをタンクに選んだのだろうか。ジェラールには、まったく理解ができなかった――ときどき他者の理解が及ばないことをするのが、キースという男ではあったが。

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