21-白雪姫
長く生きてるくせして、高矢って案外、知らないことが多いから笑っちゃう。
参考書買わなきゃいけなくて、この前高矢と一緒に本屋さん行ったのね。高矢は本とか興味ないらしくて、子ども向け絵本のほら、なんて言うの? ぐるぐる回せる棚みたいなのあるでしょ、あれを回してヒマそうに待ってた。私は参考書選びに忙しくってさ、いろいろ見比べたりしてたら、ほんとヒマそうに高矢が言うわけ。まだかよー、みたいなことを。
高矢もたまには本くらい読んだらー? もしかして、字ぃ読めないとかー? って、冗談のつもりだったんだけどさ。高矢、黙って動かなくなっちゃって。わ、もしかしてまずいこと言っちゃったかなって、ちょっと気まずくなってね。本探してるふりして、本棚の裏に隠れてみたわけ。まあ、そこにも気になってる教科の本があったから、パラパラ見たりしてさ。
で、しばらくして、そーっと覗いてみたら、高矢、さっきまで回してた棚の絵本とか読んでるわけよ。子どもの絵本と無精ヒゲの高矢、って組み合わせがありえなくて、一瞬笑っちゃったんだけどさ、よくみたら、めちゃくちゃ真剣なの高矢。怖いくらい真顔。もしかして、ほんとに文字読めないのかな、そう言えば昔の人って学校とかないから読み書きできなかったって聞いたことあるかも、って思って。これは謝らないとまずいかなーっておずおず近づいたらさ、いきなりよ、いきなり。
「これ、史実なのか?!」って。
何が?! って思うよね普通。持ってた絵本見たら、まさかの白雪姫。いやいや、えーと、グリム童話? だっけ? 童話だから違うんじゃない? って言ったの、そのときは。
そしたら、そっか、だよな、でもな、とか言いながら、じっと絵本見ててさ。まあ、とりあえずひらがなは読めるんだなって分かったからいいんだけど。
書籍代は一応親からもらってるし、欲しいなら買う? って聞いたら黙って頷いて渡してきたから、参考書と一緒に買ったんだけどね。や、それにしてもさ、まさか高矢が白雪姫知らないとは思わなかったよ。何百年も生きてるみたいなのに、意外と知らないこと多いよなーって。
でも、なんだろ、思いつめたみたいな顔で「マー…」ってつぶやいてたの、ちょっと気になった。
あとでちょっと調べたんだけど、グリム童話って、民間伝承とか口伝の民話とかを集めたものが元になってるのもあるんだって。さすがに史実って言っちゃうと違うと思うけど、でも、なんだろ、もしかして元ネタ知ってるのかな、高矢。
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