No.5-44

 多国籍陸軍少将メグミ・トーゴーの副官であった女性士官アリア・クーベルタンは長い時間をかけて多国籍陸軍の資料を読み続けていた。彼女のポストは宙に浮いており、上層部がメグミ・トーゴーの捜索を諦めれば別の役割が与えられるであろう……しかしその役割とは、それ以上先のない袋小路になることは容易に想像が出来た。

彼女は野心家である。そうでなければあの少女の副官などという任を真面目にこなすことはなかった。そして少なくともあの少女の指揮能力は本物であったことを考えれば。その身体能力も同様に高いものであったことを思い出せば、彼女が……メグミ・トーゴーがまだ何処かで生きているという可能性もそう望み薄というわけではない。少なくとも彼女、アリア・クーベルタンはメグミ・トーゴーが生存しているという可能性の方にはる他ないのである。

そして、彼女は行き当たった。

もしあの男がメグミ・トーゴーを殺そうとしているのであれば、前線で訳も分からぬうちに戦死してくれた方が良い。そうなればあの男はメグミ・トーゴーを損耗率の高い部隊に配置し、その部隊を意図的に酷使するのではないか……そう考えれば、自然と候補は絞られてくる。

彼女の脳裏に、一つの連隊の名前が浮かぶ。その連隊とは、第二十七歩兵連隊である。

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