入寮!②
大浴場では20人以上がほぼ同じタイミングで入った。しかし、大浴場は一度に約30人が収容できる広さだ。少し人口密度は高くなるが、風呂に入れないというわけではない。
「まぁ、私が寮母さんという立場でいいのかな?まだ高校生だけど。それに料理洗濯炊事は早川さんと尾関さんに任せているから」
優衣は20人のメンバーに向かってこう言う。そして、
「皆さんはいつデビューするんですか?」
と優里が言った。すると、
「9月上旬のイベントでファンにお披露目やから、その日やね」
とリーダーの
「そうなんですか。あ、皆さんは兄についてどう思ってますか?」
とメンバーに言った。すると、
「優くんだっけ?同い年だし仲良くしようかな。はっきり言って私のタイプっぽいし・・・」
とメンバーのセンター・
「うわ玲香、タイプって言っちゃったよ!でも、あいつ坊主頭じゃん!それにガタイもデカいし、顔も日焼けしまくって真っ黒だし!」
と玲香に一言言う。すると玲香は、
「遥だってそんなこと言って、優くんのことめっちゃ褒めてるじゃん!」
と遥に苦言を呈する。しかし遥は結局、
「・・・玲香。もしかしたら、私と相川くんを巡る恋のライバルになるかもしれないわね。だって私は玲香に勝つ自信があるんだもの。根拠はないけど・・・」
と沙羅は小声で呟き、遥は、
「まぁ、うちは恋愛禁止だけどね」
と苦笑いした。そして玲香は、
「遥、沙羅!ツバキガールズが恋愛禁止なのはちゃんとわかってるもん!」
と2人にこう応えた。
◇ ◇ ◇
メンバーが一斉に大浴場へ向かってから1時間あまり、今度はメンバーがぞろぞろと風呂から上がったようだ。しばらくすると、風呂から出たばかりの優衣姉と優里がやってきた。
「優、玲香ちゃんがあんたを呼んでるよ」
と優衣姉が言う。そして優里は、
「遥さんと沙羅さんもいるよ。リビングに来てってさ」
と言い、俺はリビングに来た。
リビングに向かうと、風呂から上がったばかりの安達・松永・尾崎がすでにいた。俺は「他のメンバーは?」と3人に尋ねた。すると、「まだ大浴場に入っているか自分の部屋にいるわ」と尾崎が答えた。そして俺は、
「それより安達、俺に何の用だよ」
と言う。すると安達は、
「優くん、私と友達になってください!」
と言ってきた。そして松永と尾崎も、
「私からもお願いします!」
と揃うように言ってきた。しかし俺は、
「・・・ってもお前らアイドルだろ?恋愛禁止だろ?」
と言う。そして、
「でも、友達くらいならいいかな。これから同じ屋根で暮らすんだから。でも俺との友達付き合いはここだけにしろよな」
と言った。それに対し安達は、
「まぁ、私たちアイドルだからこれくらいのこと言われても仕方ないよね・・・」
と言う。そして松永は、
「と言っても、明日からはずっとレッスン漬けだから寮に戻る頃にはみんなバテてると思うけどね」
と言ってきた。
◇ ◇ ◇
そして翌日からは松永の言う通り、メンバーはレッスン漬けの日々だった。レッスンを終え寮に戻るとみんなバテバテだった。食事や風呂どころではないらしく、みんなすぐに部屋に戻って眠ってしまうくらいである。俺は毎日のようにレッスンを終えたメンバーにマッサージをしていた。
そして9月になった。2学期になり、俺の学校生活が再開した。それと同じくして高校生のメンバーは芸能人がよく通っているという某高校に転校し、中学生のメンバーも近所の某中学校に転校したという。
入寮からおよそ2週間。その間、メンバーは近所のスタジオで毎日のように厳しいレッスンを行っていた。さすがに9月に入ると、学生のメンバーはちゃんと学校に通い始めたが、それでも学校が終わると近所のスタジオに直行し、数時間のレッスンを行い寮に戻るという生活を送っていた。しかし俺は毎晩、レッスンで疲れた彼女たちを見ることしかできないのか・・・
そして日曜日、ツバキガールズ初めてのイベントが行われる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます