夢を見ていました

夢の中ではなんでもできました

愛する人も居て、望んだ職業に就いて、周囲から憧れの眼差しを浴びる

つまらない欲に塗れた現実とは違い、質素で謙虚な自分がそこにはいました

全てが手に入り、何もかも思い通りになる

ひとたび目を覚ませば全てが終わり

そこには何も持たない男が一人、布団の上で目覚めるのでした


彼は努力の才能を持っていません

何かを一生懸命やることも出来ないし、夢を実現させる努力もしません

死にたいと願うことはあるものの死ぬ勇気も度胸も持ち合わせていません

ですが、今生に未練はなくいつ死んでも良いと思っています

何かを諦めているはずなのに諦めきれていない自分に辟易していました


彼はなぜ生きているのでしょう?

疑問に思いますが生きる理由があるのではなく死ぬ理由がないだけなのです

死ぬよりは生きる方が楽なだけ

何か生きる理由が欲しいのだけど今それはない

欲しいものを予約しそれが手に入るまでは生きたいと自分自身を騙す

傍から見れば趣味に生きる人に見えるだろうけどそんなことはない

無理矢理生きる理由を作っているだけなのだから


夢が現実にならないことを知っている

だから自分を騙し日々を生きる

いずれ死ぬことが生きることより楽になるまで世界を彷徨う

世界にさようならを言えるその日まで

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