9. 煙草吸う花売り筵に坐りいて我にすすめぬ都忘れを
煙草吸う花売り筵に坐りいて
我にすすめぬ 都忘れを
通学の駅の側で、花売りの老女が花をならべて筵に坐っていた。往来の人に声をかけることもなく通りをみつめて煙草を吸っている。
どんな花があるのかと見ていたら、たくさんのパンジーやチューリップの中にミヤコワスレがあった。下宿の窓辺に都忘れを?
わたしが生まれ育ったのは木の少ない都だったが、今は自然に囲まれていた。故郷のことは忘れて、未知のあたらしい人生を歩みはじめていた。
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