第17話 激突
ガツンっ
硬い。アムールトラは頭を下に、そのまま落下する。前脚の巨大な爪が、アムールトラに向かって振り上げられる。自由落下ではどうすることもできない。
がしっ
アムールトラの右脚が掴まれた。
「危なかったな」
「ヘビクイワシ!」
右脚の傷から血が噴き出す。
「もう一度だ」
だが、前脚を振り上げたことで、大型セルリアンの速度が上がった。間に合わない。医療施設のビルに激突する。
グシャアっ
コンクリートの堅牢な建物が、紙のように潰れる。
「ああっ」
「大丈夫、あれは外来棟だ。避難は完了している」
大型セルリアンは止まらない。外来棟を突っ切ると、美しく整えられた園庭を乗り越え、さらに大きなビルに突き進む。
「石はどこだ」
「頭の少し後ろ、鱗で覆われているのを見た」
「それを先に言え」
再び急降下爆撃。今度は頭の少し後ろを狙う。一撃では鱗に弾かれるかもしれない。
ドガッ
やはり拳は通らない。が、打撃の反動を利用して、うまくセルリアンの頭に着地した。
四つ脚でセルリアンの頭を駆け、石を覆う鱗を引き剥がしにかかる。全身の筋肉が肥大。鱗が少しずつ剥がれる。止まっていた血が流れたが、気にしてはいられない。
「があっ」
鱗の下には、見たこともない大きな石があった。剥がれた鱗を振り上げ、鋭い先端を叩きつける。石には傷一つつかない。
「くそっ」
入院棟はすぐ背後まで迫っている。アムールトラは左拳を叩き込む。何度も、何度も。だが石は曇ることもない。
「なんでだよっ、砕けろ、砕けろっ」
ドカアッ
セルリアンの頭が入院棟に激突した。コンクリートとガラスの破片がアムールトラにも降り注ぐ。
めりめりと音を立てて、セルリアンがビルにめり込んでいく。アムールトラ自身も、既にコンクリートの建物の中だ。
視界の端に、人間たちの姿が見える。建物の中で、誰かを守るように手を広げている。
その中に、見知った顔もあった。
「うわあああああっ」
やるしかない。
アムールトラの左拳が金色に輝く。
野性解放。
それまでとは比較にならない威力の拳が、石を砕いた。
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