第八話 生まれ変わる
第八話 生まれ変わる
趙永安は明らかに穆炎を信用しなかった。この鋭い目をしている土地はすぐ目を閉じ、穆炎の頭に潜り込んで、穆炎と千守がいままで経験してきたことを速やかに読み取ろうとした。
しばらくしてから、趙永安は悠々と目を開けた。「こっちに来て。お座りなさい。」
二つのソファー椅子が同時に彼の左右に現れ、2杯のスーパーアイスコーヒーもそばに浮かんでいた。
千守は口を開けて、「なるほど。土地はみな、飲み物を御馳走するのが好きみだいね。」といった。
穆炎は眉をつりあげて、賛同した。
二人は非常に注意深く前に歩いた。穆炎はアイスコーヒーを取り、迷った。実は、あらゆる蛇が冷たいものがあまり好きではないのだ。脾と胃が弱いから。
趙永安:「Just be relax!MyBoy!」趙永安は微笑みを浮かべ、深くソファーに座りこんでゆったりと二人を眺めていた。
穆炎と千守はアイスコーヒーをゆっくり味わう暇もなく、一瞬このぺこぺことしたお世辞には、思わず歯が浮いてしまった。まさかこれは南京おじさんが言った手強い相手か?!!!或いは。。。
他の意味があるか?やっぱり、その通りだ。
趙永安:「ここに遠くから来てもらった以上、また行き甲斐がなかったとに言わせない。二人は輪廻を信じるか?」と単刀直入、本題に入った。
「プ。。。。。」アイスコーヒーが千守の口から遠くまで噴き出された。「輪廻?この世界には本当に輪廻がある?」
穆炎は同じ困惑した表情を見せ趙永安を眺めていた。「わたしが知っている限りでは、これは仏様の最も奥深い手配で、我々小妖怪には理解できるものではない。わたしがこの人間の世界には二千年いるが、聞いたことがあるが、この目で見たことはない。でも、わたしが信じる。」穆炎はちょっと間を置いてから、言い続けた。「人生の常ならぬ移り変わりや、苦しみや悲しみは、現実的なものと繋がっているだけではなく、前世と様々な、切っても切れない関係を持っているかもしれない、とわたしは信じる。」
趙永安は頷いた。「その通りだ。このようなことには、わたしでも久しぶり遭遇した。特に千守、」趙永安は再び穆炎をじっと見つめ、「とあなたのいまのような状況は本当に手を焼くものだ。」
趙永安:「人間の夫々の存在には、原因がある。すべては、理由がない手配は存在しない。これは仏様の意図だ。」
千守:「仏様の意図?」千守は口をはさまずには居られなかった。
趙永安:「そうだ。恨みを解消することや、再び縁を修復することなどは、いずれも前世で終了していない宿題或いは残された課題である。実は細かく言うと、これはすべて仏様一人が決めることではない。人間にも自分の執念がある。ただ仏様が慈悲深い心を持っているので、ある時は話半分しか話さなかったり、」趙永安は目をばたばたさせて、千守を眺めて、言い続けた。「ある時は、二人のかたきをわざと近いところ、ひいては想像よりもっと近いところに置いたりする。」
千守は思わず震えた。心の中で、「まさか、李雲燦のことか!!?」
千守:「じゃ、病院の肉体に封じられた1/3の魂の記憶は、前世のものだ、というのですか?」
趙永安は穆炎をちらっと見た。「あなたはもう気付いたかもしれない。そうじゃない?」
穆炎はゆっくり頷いた。その通りだ。当日、雲知の夢の中で、本屋に踏み入れ、部屋の中にあるすべての飾り物を見たとたん、穆炎はおかしいなあと思った。それは、なぜかわからないが、なんだか見覚えのある感覚がどうもあったようだから。初めて雲知のお父さんを見た時も、なぜかわからないが、一瞬不思議に思った。
趙永安は振り返って千守に向いて、口ぶりが急に柔らかくなった。「千守、普通は一般の人はこのような記憶を持っていない。でも、あなたが死んだことで、すべてが変わった。」
と言いながら、目の前の空間に指差して、一つの雲の塊を描いた。雲の塊が徐々に消えてゆくにつれて、千守が水の中で穆炎の尻尾に振られ落ちた時、同じタイミングで近くにいた雲知と狄子裴は水の中でもがいていた、という情景が浮かんできた。これと同時に、上海でバスケットボールをやっていた李雲燦は、急にふらついて床に倒れた。
千守と穆炎は目の前のこの場面に呆気にとられた。
趙永安:「あなたと関係するすべての人は、あなたのためにお互いに絡み合い、存在している。だから、あなたが消えた時、時空に割れが発生した。これらの人の前世の記憶は今後少しずつ蘇ってくる。」
千守:「雲知の夢は、わたしと彼女は雲燦と一緒に経験した前世のことか?」
趙永安は頷いた。「あなたが見た古代の彼女は、诺雲と呼ばれている。恒诺雲。西漢呉王の下の大将軍、恒将軍の娘さんだ。あなたに殺されたのは、恒家族のお坊ちゃん、恒裕杭だ。つまり、彼女のお兄ちゃんだ。」
千守:「彼女のお兄ちゃん!!?どうしよう!じゃ、彼女は。。。わたしを見た??わたしが殺したのを知った?」
趙永安は真正面から答えず、ただ穆炎をじっと眺めていた。
「人間の世界では、一人ひとりの居る所はみな、システムが複雑な網を作っている。お互いに絡み合い、またそれぞれ自分の生命の意義を持っている。」趙永安は間をおいて、言い続けた。
「だから、千守、これら前世のことを思い出した人々、あるいは間もなくあなたの前世に関することを思い出す人々はみな、あなたの一生にとって、とても重要だ!」
千守はぼんやりと夢の中で血の中に倒れた雲燦を思い出した。「その床に倒れた人は、いま雲知の実のお兄ちゃん!もし、彼女が今後、少しずつ思い出したら、わたしは彼女とどう顔を合わせたらいいのか?」
趙永安:「あなたの三生石に、あなたの運命の人として、彼女の名前が刻まれた。」
趙永安はソファーに戻り、意味深長にもう一方側にいる穆炎を眺めた。
西漢七ヵ国の戦乱 紀元前156年 初春 西漢の文皇帝が統治中、皇太子の劉啓の宮殿にて 書斎
二人の侍は頭を垂れて、書斎の外の階段に跪いていた。書斎の中、一人が机の前に正座していた(皇太子劉啓)、一人がうやうやしく傍に立っていた(皇帝の伯父さん魏其侯窦婴)
皇帝の伯父さん:東南角では山の近くに住めば山に頼って生活し(注釈:山辺の者は山に糧を求め,水辺の者は水を頼りに暮らしを立てる.目的のためにその場にある有利な条件をよりどころとするたとえ.)、銅貨をこっそり作っているだけでなく、塩も販売している。朝廷の役人ですら無視しているし、お金で賄賂を賄うばかりしている。呉国の国内ではどの家も豊かな生活をしているが、藩王は一国の皇帝より強い。わが皇帝様は領土をあげるとおっしゃった以上、取り戻すわけにはいけない。いままで我慢するしかない。。。。。。皇太子様がその人の一人っ子を殺す仇は、いつか必ず討たれるから、この人を防がなければならない。
皇太子:「伯父さんのおっしゃった通りだ。父親が政治を行っていた頃、彼はいくら肝が太くても、できないと思う。ここ二年間、呉王はこっそり兵士を招へいしたり、馬を買ったりするなど、人員を拡充していることから、謀反の兆しが段々見えてきた。もしある日、兵を起こし、君主になろうとしているのなら、その勢力は無視してはいけない。」
皇帝の伯父さん:「先日、連れてきてほしいと言っていた二人を今日は、連れてきた。門の外で待っている。」
皇太子は頷いた。魏其侯はすぐ外に振り向いて「入れ」と叫んだ。
二人は頭を垂れながら、入った。机まで後7、8歩離れるところに、止まった。
二人はお辞儀をしようとしたところ、皇太子は軽く命令した。「ちょっと待て」
そして、伯父さんに向かって、「この二人の中の一人に私が会えばよい。文武両道に優れているかどうかは別として、心がきめ細かな人がよい。」
伯父さんはしばらく考えてから、「それもいい。やっぱり皇太子は心遣いが私より行き届いている。」と答えた。
それから、頭をあげ、大きな声で「蔡啓恩、前に5歩歩いて、お辞儀を」と言った。
左側の侍は微かに震えて、前に歩き、片側の膝を跪いて、叩頭の礼をして言った。
「臣下、皇太子と王様に謁見させていただきます。」
皇太子:「頭をあげろう。」皇太子は言った。「呉王の下に、いろんな人が混入している。数年以内に各ルートのスパイがその間に混じっている。お二人はわが宅を出たら、名前を変える必要がある。危ない時は、お互いに助け合おう。また、他人のことを簡単に信じてはいけない。」
蔡啓恩:「かしこまりました。」
皇太子:「これは二人に差し上げた名前だ。取っていけ。」
皇帝の伯父さんは名前が書かれた書簡を受け取って、蔡啓恩の前に渡した。
蔡啓恩は両手で受け取った。その上に、「蔡允、穆炎」と書いてある。
蔡啓恩は頭をさげ見て、慌てて叩頭のお礼をした。「王様のご恩情を永遠に忘れることはありません。力を尽くし、犬馬の労を取らせていただきたいと思います。」
上海趙永安の本屋にて
穆炎は急に震えて、夢の中からはっと目を覚ました。目を開けたら、自分がなんどさっきの本屋のソファーに座ったまま寝てしまったとは。趙永安と千守の方向に振り向くと、千守はソファーに深く座り込みとっくにぐっすり寝てしまった。趙永安はにこにこしながら穆炎を眺めていた。
趙永安:「やっと思い出したか?」
穆炎:「はい。」穆炎はぼんやりと頷いた。
趙永安:「千守とあなたは雲知の夢の中にいた時、あなたはその情景、場面を見慣れたような感覚を持っていたか?」
穆炎は頷いた。。。。。。「特にその書斎だ。」
趙永安:「その通りだ。。。それは、あなたは蔡家族の長男を守るために、一緒に兵士になるからだ。」こう言いながら、趙永安は穆炎の金色の瞳を眺めた。「つまり、あなたは人間の視野に6年間、現れつつある。蔡千守、李雲知、李雲燦、彼達の前世に関する記憶の一部となる。」
穆炎:「彼達の前世に関する記憶の一部となる?」穆炎はぶつぶつ言った。
趙永安は頷いて、言い続けた。「でも、あなたは人間の形で現れるべきではなかった。だから、同時代のこれらの人がなくなった後、あなたの記憶も抹消されてしまった。これはあなたの頭の中にこの部分の記憶がない故だ。」
穆炎:「でも、なぜいまはまた思い出したか?」
趙永安:「それは千守のためだ。先ほど言ったように、蔡千守に関するすべてのものはみな、記憶が蘇ってくる。あなたが人間じゃないにも関わらず。」
穆炎:「なるほど。だから始めて河の中で出会った時、どうも千守がだれかに似ているようだと思った。なんどその時の蔡允だとは!」
穆炎:「それじゃ。。。。」穆炎はふと雲知の夢を思い出した。「李雲知もわたしのことを思い出すの?」
趙永安:「そうだ。前世の記憶がいったん蘇ると、彼女はすべてのことを思い出す。もちろん、あなたのことも。」
穆炎:「彼女は、わたしが蛇である、ということを知っているか?なにか関わりがあるか?」穆炎はこの前、趙永安のあやしい目つきを思い出した。
趙永安はにっこりと笑った。「何か関わりを望むか?」穆炎はすこしぼうっとしていた。
趙永安は頭をあげ遠くを眺めた。「もしかすると、千守の事故は、偶然でないかもしれない。。。。」
李雲知の家 朝3時
夜がしんしんとふけていった。住宅団地全体はどの家も、どの猫も犬もぐっすり寝ていた。李雲知は、再びあの本当のような不思議な夢を見た。恒诺雲は、左手にはパチンコ、右手には死にかけたガビ鳥を持って、にこにこしながら壁を飛び越え、庭に入ろうとした。诺雲は壁に足掛け座ったとたん、ふと鎧を着ている蔡允がこそこそと壁に沿って、電気がこうこうとついた書斎に潜り入ろうとしているのが、遠くから見えた。彼のすぐ後ろにいるのは、同じようにこそこそとしたお兄ちゃん、恒裕杭だった!
诺雲は急いで壁から下りたかったが、先ほどあまり急いだため、壁にあしかけた時、ズボンのすそが壁のそばの枝に引っかかり、一時うまく外せなかった。この時、もう一度みると、恒裕杭はもう蔡允にくっついて書斎に入った。诺雲はいらいらし、「ス~!」とズボンの裾を破って、手の中のパチンコ、ガビ鳥を捨てて、地面に飛び降りまっすぐ書斎に急いだ。部屋の中に入ったら、恒裕杭はもう血の中に倒れてしまった。この時、書斎の中には他の人がいなかったので、千守は遠くまで行ってないと思われる。
诺雲はお兄ちゃんを抱いて、頬を軽く叩いて、「お兄ちゃん!どうしたの?目を覚まして!」と叫んだ。
恒裕杭は目をあけ、「诺雲」と小さい声で言った。
诺雲:「ええ。。。」诺雲は涙を流しながら頭をさげ血が出たところを見ると、匕首が恒裕杭の心臓に刺された。何も言えず、恒裕杭はこのように诺雲の懐で息が絶えていた。诺雲はかんかんに怒って、歯を食いしばって、跳び上がり外に駆けていった。前の庭には十数人の侍がぞろぞろ倒れた。
蔡允は、東庭の壁の隅に疾走し、飛び上がって壁を乗り越えた。
雲知は体中が震えて、はっと目を覚まし座りあがった。かんかんとなっていた。「お兄ちゃん!千守!」
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