ないないvsあるあるー仁義なき闘いー

「トイレットペーパーがないよ」


結婚して最初のころ、M夫くんが言った。

見に行くと、棚に4ロールくらいある。

「えー、あるよぉ?」と私は言った。


それから何カ月も経ってからだったと思う。

トイレから出て来たM夫くんが、「あのさぁ、けっこうすごいよね。どれくらい減ったら買い足すのかずっと気になって見てたんだけど、いつもギリギリなくなるまで買わないよね〜」と言ったのだった。


そうだったのか。そんなことか。


私は、ギリギリを攻めるのが好きなの。どれくらいまで保たせられるか、どこまでガマンできるかとか。

それで、最後の1ロールを使ってる間に、仕事が忙しくなって買い物に行けなかった〜ってなったら、ボックスティッシュやポケットティッシュでしのいだりするでしょ? すると、こんなふうに乗り切れた! って達成感とか快感を感じるわけよ。


トイレットペーパーだけじゃなくて、食材でも何かの道具でも、ない! ってなった時にほかのもので代用できたり、なんなら自分で簡易○○を作っちゃったりして、それで用が済んだ! ってなると、創意工夫の楽しさを再確認できるわけなのよ。

何でもかんでも備えておかない方が、むしろ楽しく生きていけるんだよ!


そんな私のドヤ顔の話し振りをア然として聞いていたM夫くんの感想は、「それ、全然意味わかんない。なんで、そんなことする必要が!?」だった。


その後、トイレットペーパーの在庫がさびしくなってきても、M夫くんは何も言わなくなった。

すると私は、ますますヤキモキさせてやろうと思って、さらにギリギリを攻める。しかも、実は残り2ロールくらいの時に新しいパックを買って来ていたとしても、それを隠しておいて、いつM夫くんがしびれを切らして「ないよー」って言うか、密かにニヤニヤ観察していた。


ところが、全然言ってこない。

なんか、つまんないなー。


そんなある日、やっとM夫くんが言ったことは——。

「あ、トイレットペーパー買ってきたんだね。実は、どれくらいまで減ったら買ってくるのか、ずっと観察してたんだよね」


なヌっ!?

単に、お互いに相手がどれくらいのタイミングで言ってくるか、買ってくるか、密かに観察し合っていたってことだ。


どっちが先にラインを割るか。

これからも、仁義なき闘いは続く。


M夫くんメモ:

M夫くんはストック症候群だ。(私が命名したが、似たような言葉はあるらしい)

在庫がないと落ち着かない、あるいは、使用中のもののすべてに在庫が控えてるのが当たり前。買い物に行って目についたら、とりあえず買っておく、など。

私は、住んできたのが狭い所ばかりだったせいか、グータラなせいか、なきゃないで何とかなる! 主義。

在庫をそろえておくのはスペースが倍要るから、なくなりそうなものだけ買う。そして、時には切らしてしまう。それで悶絶することもあるが、最終的には、そんなこともあるさ〜で終わり。

観察合戦なんてしてないで、お互いの欠点を補い合うようにすればまるく収まると思われる。

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