M夫くんへ

思えば、こうやって手紙を書くのは初めてですね。

結婚する前にやり取りしたたくさんのメールはデジタルだし、誕生日、バレンタイン、クリスマスなどのイベントで、贈り物といっしょに渡したカードは、手紙という感じではないし。

いつも顔を合わせているのに、いざこうして便せんに向かってみると、なんだかとっても照れくさいです。

でも、がんばって最後まで書きますね。これまでの結婚生活でなかなか口に出しては言えなかったこと、これを機会にあなたに伝えたいと思います。

まず、お仕事大変なのに、いつも私のことをやさしく気づかってくれて、本当に感謝しています。M夫くんは保育士資格を持っているので、私のこともきっと子供に接するように面倒見てくれてるだけなんだろうなぁ。そうは思いつつ、面倒見られることが心地よかったりしています。

次に、大変なお仕事してくれて、ありがとう。独り身だったらやめていたかもしれないって思っているんでしょう？

本当は、M夫くんの体をとても心配しています。どうか無理はしないでね。

せっかく二人でいるのだから、一人だけがつらい思いをするなんておかしいよね。もしも違うことがしたくなったら、遠慮しないで言ってね。私も仕事を増やすように頑張ってみるから。

いつもいろいろ教えてくれて、ありがとう。特に科学に強いM夫くん、たいていのことは訊けばすぐ答えてくれるので、とても助かっています。即答できないことであっても、パッと調べて解決してくれる。そういうところ、結婚する前から頼もしくて、惚れちゃったポイントの一つでした。

それから、いつも私に合わせてくれるよね。

行きたい場所、食べたいもの、買いたいもの、その日の予定、どっちが車を使うか、家の中をどういうふうにするか、など、合わせてくれてることを数え上げたらキリがないくらいだね。

たまに意見が食い違うこともあるけど、合わせてくれてることに比べたら些細なものです。これもM夫くんのやさしさなんだろうね。

でも、時にはM夫くんのしたいようにしたり、思うことを言っちゃってくれてもいいんだよ。夫婦なんだから、お互いがお互いの心地いいように歩み寄るのがいいよね。

最後に、今日一番言いたいことです。

M夫くん、どうして食品関係の袋を閉じる時は、ふんわり閉じるのでしょうか。

昨日も、調味料の袋、空気いっぱい入っていたね。

私を含め、世の中の大多数の人は、何かを保存する時になるべく空気を抜くようにしています。なんなら、袋を閉じる時にストローを入れて空気を吸い出す人さえいるようです。なぜなら、みんな、「酸化」を遅らせたいからだと私は思っています。

以前、私がこのことを訊いたの、覚えていますか？

M夫くんは、「一度空気に触れてしまえば、あとはどうしたって同じ」と答えていました。そして、頑として改めてくれてませんね。

でも、これまでのところの当社比では、短期間の場合なら明らかに空気を抜いた保存の方が長持ちしています。私の実感です。

が、科学に明るいM夫くんに、私なんかの実感だけで異を唱えるのはどうかと思ってしまうのです。一度、反論されているし。

なので、こうしてこの手紙を書いています。

本当のところはどうなの？M夫くん。

人々が、わざわざ装置を買って真空パックにしたがったり、ストローを入れて吸い出してまで空気を抜こうとするのは、はたして本当にムダなことなのでしょうか？？

ぜひとも、「科学的に」説明していただきたい。

お返事お待ちしています。　　　　みさえより愛を込めて

※妻から初めての……は、「公開質問状」でした！

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