第56話 素材探し

よーしお小遣い稼ぎの許可を得た(?)からにはがんばるぞ!

村の中だったら集められそうなのは海岸のところぐらいかな?林や湖の近くまで行ったら柵の外だし。でも素材って何が売れるんだろうね?まずは『冒険者の心得』を読み終わってからかな?

パラパラと素材や売却についてのページまで飛ばして読む。ティアは読めないと思うんだけど、オレの頭の上でじーっと眺めている。ラピスとアリスはページをめくる時にぴょんと飛び越すのが楽しいらしい。右側のページでオレがめくるのを今か今かと待っている。

うーんやっぱりツノとか毛皮とか・・そういうのが多いみたいだね。あとは魔石。魔石かあ・・カケラじゃダメなのかな?今度は『魔石の実際と効能』のページをめくる。こっちの本はちょっと難しい言葉が多くて解読に時間がかかる。でも、その分深いところまで書いてあって面白い。


ふーん、魔石っていうのは魔力の凝ったモノ・・・・・あ、じゃああれも魔石?ごそごそとかばんから取り出したのは黒い結晶。禍々しい穢れだったそれは、今はただ静かな魔力を湛えて煌めく闇色の結晶だ。でも、これが何か分からないから売れないよ・・・万が一呪いが~なんてなったら大変だ。

待てよ・・じゃあさ、魔石ってこんな風にやれば作れたりしない?魔力を凝らせればいいんでしょ?



「魔石を作るだぁ?!」

「うん!どうかな?ルーの時みたいに魔力を結晶にできたら、それって魔石になるんでしょ?」

「・・・・理屈としてはそうかもしれねーが・・・。」

「だからね、やってみようと思って!」

「・・・それでなんで俺のとこに来やがる。」

「ここが一番安全だし、魔力集めるのに集中できるもん。」

「・・・・。」



オレはカバンから小さな瓶を取り出して、中から魔石のカケラを一つつまみ出す。かすかに感じる魔力は、水と相性がいいヤツだ。

その小さなカケラを両手で包み込むようにすると、目を閉じて集中する。

まずは周囲の魔素のうち、水と相性のいい魔素をひたすら集めてオレの回路に流していく。そしてぐるぐる回す内に、魔石のカケラを種石として魔素を引っ掛けるように凝らせていく。理科の実験みたいだ。ミョウバンや塩の結晶を思い浮かべながら、結晶を成長させていく。


「きゅきゅう!」

ラピスの声でハッとする。どうも集中すると周りがみえなくなっちゃうな。

あんまり大きな魔石、売るの大変と思うよ、そう言われて見ると、オレの両手にずっしりと乗っかる大きな結晶。えーと、前にカロルス様からもらった魔石の・・5倍以上あるかな・・・。


「あ・・あれ・・集中しすぎちゃった。・・・これ、大きすぎるよね?」

「ホントにやりやがった・・・・テメーは何者だ?」

「きゅきゅ!」

ワイバーン上位とかオークキングならそれぐらいだと思う!だからこのぐらいならいけるかな?

・・・っていやいや!そんな怖そうな魔物サイズは困るから!せっかく作ったけど、これどうしよう・・。えーとえーと・・・そうだ!

「ねえ。これルーにもらったことにしてもいい?」

「なんでオレが・・・。そいつがいればワイバーンでもオークキングでも倒せるだろう。問題ないじゃねーか。」

「だって!危ないことはしないって約束だもん・・」

「じゃあそもそも魔石持って行くのがおかしいだろうが。何か魔物を倒さねーと魔石は手に入らねえ。」

「あっ・・・・。」


ホラ見ろ、と言わんばかりの顔で目を細めるルー。危ない危ない・・・そっか、魔石を作るのも常識外れっぽいしこれもダメかあ・・・。

「ここか、村の中で手に入る素材ってないの?」

「ハッ、村の中でタダで手に入るような素材があれば、こぞって取り尽くしてるだろうぜ。」

「そうだけど・・・このあたりは?」

「知らねー。人が来ねーんだから何だってあるだろ。」

フン、と鼻を鳴らしてごろりと体を横たえた。これは撫でていいってことかな?

艶やかな毛並みに片手を滑らせながら、安全に採取できる素材を考える。えーと素材には何があるって書いてあったかな・・魔物由来の素材、植物由来の素材、自然由来の素材・・そうだ、ここなら木材とか・・鉱石とかどうだろう?木材はちょっと丸太とかは無理だけど・・香木みたいなのとか、アクセサリー用の木とか少量でも価値のある木ってないのかな?

鉱石は・・・どんなものがいいのかサッパリ分からないから・・綺麗な石とかあればもって帰って聞いてみようか?

あ、もしかして・・アクセサリーとか作るといいかもしれない!土魔法が応用できそうな気がする!土や石で鍋や家が作れるんだから、アクセサリーだってできるんじゃない?そう思うとさっそくやってみたくなる。

何かないかな・・なにか・・


「「きゅ?」」「ピピッ?」

何を探すの?

というみんなにもお願いして、綺麗な石を探してきてもらう。


ルーは撫でるのをやめたので不満そうだけど、ちょっと待っててね。

湖のほとりには石がゴロゴロしているところもあるから、しゃがみこんで良さそうなものを見繕った。せっかく作るんだから綺麗な石でやりたいな~!

一人と3匹でうろうろした結果、結構な収穫だ。さて、これで・・とりあえず簡単そうなものから・・シンプルなバングルをイメージして形成に挑戦してみた。半透明の緑がかった石はイメージに沿って徐々に形を変えていく。


「できた!」


石は、きちんとバングルの形をとって滑らかな曲線を描いている。表面の形を整えると透明度も輝きもぐっと上がって、瑪瑙のような雰囲気だ。うん、結構きれいだからいいんじゃないかな?そっか、表面を整えると宝石みたいにできるんだ・・・。


よーし!と意気込んで取りかかろうとした所でラピスに止められる。

「きゅきゅ!」

それは帰ってからできるから持って帰ったら?また集中しちゃうから。

はい、ごもっともです・・。

「きゅ!」

ラピスたち、もっと探すー!

どうやら、素材探しは結構楽しかったみたいだ。じゃあなにか珍しいモノあったら持ってきてね、と3匹にお願いして、オレはルーのご機嫌を直すとしよう。


半身を起こしたルーの首元をぎゅっとする。そのまま乗っかるように寄りかかって耳の後ろをがしがし掻くようにこすると、金の目を細めた。

「乗るんじゃねー。」

そう言いながら、大きな両前肢を組むとアゴを乗せて完全に目を閉じた。リラックスモードだな・・思う存分モフらせていただこう・・。ほっぺたまですりすりしながら全身でルーの毛並みを堪能する。

ああ・・幸せ。

そしたらラピスたちも飛び込んできた。どうやらルーだけ撫でているのはずるいらしい。ラピスたちは小さいからな・・歯ブラシみたいなものがあればブラッシングできるのに。温かいルーに背中を預けながら、みんな順番に撫で撫で。


またここでみんなでお風呂入るのもいいな・・・ルーも少し汚れてきた気がするし。

うとうとしだしたルーを見ながらそんなことを考えた。




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