娘さんとの面会は後ほどにし、自分に出来ることはないか訪ねてみる。





「タケル君、君は何か魔法は使えるかい?」






種族の次は、魔法というワードが出てきた。


魔法がある世界だ。生活する上で取り入れてるのは当たり前だ。






ということは、この世界では全員魔法が使えるのか?


さっき話していた子供達も、魔法打っちゃったりするのか?


そうなってしまうと、元々ない立場が余計に無くなってしまう!




 それでも魔法を使えないことを隠すことは出来ないだろうし、素直に答えるしか無い。





「すみません、俺魔法とか全然わからなくて……」




「こちらこそ済まない、魔法も学ぶ場所がなかったのなら使い方を知らないのは当たり前だ。この村も見る限り田舎だろ?私も生まれてからずっとこの村で暮らしているため、簡単な魔法ぐらいしか使えないさ」





「そのなんですが……魔法ってどうやったら覚えれるんでしょうか?」




「まずは自分の相性が良い属性を知ることが重要だろう。私は土属性の相性が良いが、まったく魔法を知らないとを含めなくても、君が土属性と相性が良くないのなら私が教えてもすぐには使えないだろう。私自身人に教えれる程魔法に詳しい訳ではないが」




 人によって相性の良い属性があるらしい。簡潔に聞くこうだ。


  一般的には生まれたときから相性のよい属性は決まっているらしいが、育った環境や性格にも影響され、いつの間にか違う属性とも相性が良ることもある。ごく希にだが相性が完全に変わってしまうというケースもあるらしい。


  相性の良い属性の魔法は、習得まで他の属性に比べて早かったり、威力や効果を発揮されやすとのこと。




「その属性ってどのようにしたらわかるんですか?そういった機会がなかったので、自分の相性の良い属性を知らないのですが」




「なら、まず教会に行ってきなさい。そこにいる神父さんに、私のところから来たと伝えれば教えてくれるだろう。場所はわかるかい?」




「十字架のある建物内ですよね、少し行ってきます!」




「あぁ、私よりも魔法について詳しいからこの機会に聞きたいこと聞いておきなさい」




  家を出て向かう最中、やっぱり服装からか声をかけられることが何度かあった。自身にとっては普通の制服でも見慣れない人にとっては珍しいのだろう。こっちからすればRPG世界の住人の服装そのものを着ているほうが珍しいのだが。ついでに協会について多少教えて貰った。




  教会は、神に祈りを捧げる場所という認識で合っているが、これぐらいの規模の村なら、ケガや病気、呪いや毒も治療してくれる病院のような役割もしてくれているらしい。それでも、大きな病気やケガをしてしまった場合は、より高度な魔法や薬を作っている医者がいる街まで向かう必要があるらしい。




  簡単な病気なら魔法で直すことも可能だが、重い病気になってくると魔法での治療はどうしても限界があるとのこと。


  治療に関わる魔法は、普通の人でも覚えることはできるが、取得難易度や適正に左右されやすく、教会に勤めている者は、少しでも人の助けになるように治療に関わる魔法の鍛錬を義務とされているらしい。そういうことから、教会の存在は村にとって有り難いものとなっている。




  料金は、村に住んでいる住民なら、村を管理している国に一定額を毎年納税や納品しているということで、無料で受けることができる。


  よそ者である俺は、料金を払わなくてはいけないかと懸念していたが、適正を計るぐらいなら無料でやってくれるらしい。




 教会の前


  結婚式場に使われたりする建物ってイメージがあったが、屋根の部分に十字架を掲げているぐらいで、他の建物と殆ど一緒で、扉が大きな両開き扉といったぐらいだろうか。




 扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。




 入り口から数歩の場所に、2人は座れる木で作られた長いすが左右に1つづつ置かれており、奥にもう2列の合わせて3列。中央壁沿いに、女性らしき石像が1つ飾られている。



 横を見ると、左右に1つづつ別の部屋への入り口がある。




「どなたかいらっしゃいませんかー!」





  てっきり、入ってすぐに神父さんがいて祈っていたりするものだと思っていたが中には誰もいない。


 勝手に隣の部屋に入るのも失礼だと思い、来たことを声で知らせて待つことにする。


 これで返事がないのなら、外出でもしているのだろう。




  声を出してまもなく、右の部屋に繋がる扉が開かれ、白一色で統一された服装の、年はあまり変わらないであろう青年が出てくる。




「はいはーい、どうされましたか?おや、見ない顔の方ですね。初めまして、私は、この教会を任さいます、サーモルと申します」




「初めまして、タケルって言います!いきなりで失礼なんですが、おいくつですか?」



「本当にいきなりですねー。私は17の歳になります。今年の春先からこちらの村に配属されることになりました。本日は、どのようなご用件でいらっしゃったのですか?」





  神父という名前から、お爺ちゃんかおじさんぐらいが出てくると考えていたが、そうではなかった。さすが異世界、労働基準法とかあるのだろうか。17ならアルバイトぐらいならやっていてもおかしくない歳である。出てきたのも一人ということは、一人で協会を任されているのだろうか。聞いている限り、国が管理しているらしいので、公務員みたいな扱いなのかもしれない。





  よくよく考えてみると、この村の子供たちも畑仕事を手伝ったりしているとしたら、小学生ぐらいの歳から働いていることになるのか。


  テレビの中で見たことあるのが、日本とは別の国で、学校に通えない子や、そもそも学校が無い地域ぐらいでしか、子供が働いているという現場を見たことない。もちろん田舎の方で農家の手伝いをしている子供はいるが、学校に通わず全日を通して働くなんて日本の常識では考えられない。




「魔法がどういったものかあまり知らなくて、自分と相性の良い属性を教会に行けば教えてもらえると、村長のムウラさんから聞いて来ました!」





「ムウラさんからのご紹介なのですね。わかりました、少し用意をしてきますので、そちらの席に座ってお待ちください。それと、今後来られた際、わざわざ叫んで頂かなくても、左右どちらかの扉の奥にはいると思いますので、ノックを頂ければ有り難いです」





 終始にこやかに会話してくれたサーモスさんは、最初に登場した扉へ戻っていった。



教会で、大きな声を出したら駄目だよな。常識的に。


日本の常識どうのこうの以前の問題だった。

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