第6話「葬儀」
私が高校生の頃のお話です。
親戚の叔父が亡くなり、葬儀に参加していた時の事。
お坊さんが棺の前でお経を上げていたのですが、その際、従姉の7歳くらいの息子君が突然大きな声で泣き出したのです。
従姉がなだめようとするも、その男の子は一向に泣き止む気配もなく、見かねたうちの母親が、
「あんた、ちょっと休憩所に連れて行ってあげなさい」
と、私に子守を任せてきました。
仕方なく、私は母親に言われるがまま、泣き続ける男の子を連れ出し、葬儀場の中にあるロビーで休憩する事にしました。
適当に子供が好きそうなジュースをチョイスし男の子に渡すと、ようやく落ち着いてきたのか、一口、二口とジュースに口を付け、やがて嗚咽交じりの声で、私にこう言ってきたのです。
「あのね、おじちゃんの入ってる箱の……」
おじちゃんの入ってる箱、つまり叔父の遺体が安置されている棺桶の事です。
男の子は鼻をすすりながら、話を続けてくれました。
「箱の前にね、頭の大きなお坊さんみたいな格好をしたのがいてね」
頭の大きなお坊さん?お経を上げているお坊さんの事かと思い、
「お経をあげているお坊さんじゃなくて?」
と聞き返しました。
すると男の子は激しく首を二度三度横に振り、両手を一杯に広げ、目の前にある丸テーブルを掴みながら
「これよりも大きい頭のお坊さんみたいなのが、おじちゃんが入ってる箱の中に手を入れて、何か食べてたの!」
青ざめた顔の男の子はそこまで言うと、悲痛な顔をくしゃくしゃに歪め、思い出したかのようにまた泣き出してしまいました。
後で聞いた話ですが、叔父は定年退職後に家庭の悩みを抱え、欝を煩っていたそうで、
自殺だったそうです……。
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