心のままに、翔び上がれ
タクト
第1話 早く帰りたいので
またか。
途中からめんどくさくなって数えてないけどこれで二桁に乗ったか乗らないかだろう。
渡された手紙の中身を見てそんなことを感じていた。
俺は嫌々ながらも手紙で指定された時間、場所に赴いた。
「…来たぞ」
手紙の主の姿が見えなかったので思わずそう言葉にした。
すぐに俺の死角から一人の女子が姿を現した。
「ふっふっふ…、よくぞ来てくれました。手紙、読んでくれて嬉しいです」
…えーっと。
ノリとキャラが分かり辛いな。
「さて、私も早く帰りたいので単刀直入にいいます」
おい、今本音が出たぞ。
早く帰りたいならこんな茶番しなけりゃいいと思うんだが。
「高瀬翔さん、私はあなたのことが…」
「うるぁ!」
言葉を言い終わる前に、俺は目の前の女子のふくらはぎに弱めの蹴りを入れる。
「いったい!何するのお兄ちゃん!」
「こころ、何するのじゃないだろ…。今回はかなり微妙だったぞ」
「えーうそー?行けると思ったんだけど…」
「そもそも慣れてきてるのかどうかわからんが緊張感が欠片もない。俺だって言葉を待たずに蹴りを入れることになるとは思わなかった」
「じゃあなんで私蹴られたの?」
「…ふっ」
「笑ってごまかさないでよ!」
「悪い悪い。それより、早く帰りたいんだろ?ほら」
そう言って俺はいつも通り手を差し出す。
するとすぐに手を握り返してきた。
「えへへ~」
ふにゃっとした顔で笑うこころ。
「それじゃ帰ろお兄ちゃん!早く帰ってゲームの続きしよ!」
「それならこの茶番止めればいいだろ…」
「それはダメ!私は一日も早くお兄ちゃんの妹から恋人にランクアップしたいの!」
「はいはい…」
「お兄ちゃんお兄ちゃん。今日のご飯何?」
話題切り替わるの早いな。
「うーん…。こころは何が食べたい?」
「麻婆豆腐!」
「お、おう…。じゃあそれにしようか…」
「やったー!お兄ちゃん大好き!」
「本当、お前の好きは軽いよな…」
グラウンドの方から運動部の掛け声が聞こえてくるいつもの放課後。
俺はため息をつきながら妹と手を繋ぎ、帰路に着くのだった。
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