第2話 エンケン2、

 ロックスターの殆どは、異世界出身だ。数少ないその他は、僕のように異世界で修行をした者だという。

 エンケンは、異世界出身だった。僕が生まれた現実世界と異世界とでは寿命が違う。現実世界で死んでも、異世界ではその三倍は生きて出来るらしい。エンケンがそう言っていたし、現実世界ではしでしまっているその年齢の人物に実際に異世界で出会ったこともある。

 エンケンとの再会は、僕たちが頻繁に出入りしていたライブハウスでだった。かつては存在していたロックスターに憧れていた僕は、友達とバンドを組み、近隣のライブハウスに片っ端から出演していた。

 そのライブハウスの一つに、五番街があった。現実世界で僕が暮らす横浜では有名な老舗のライブハウスで、有名人を輩出しているだけでなく、その昔には多くのロックスターが使用していたらしい。

 そんな五番街のオーナーに、お前らのは本物じゃないと言われてしまった。ロックがなんなのかをまるで分かっていないな、と。ただのモノマネロックに騙される奴が多過ぎるんだ。

 そんなことを言われて黙ってはいられなかった。だったら本物を教えてくれよ! と食ってかかった。

 するとオーナーは、僕が知っている古い時代のロックスターの名前を並べて、それを聞いて勉強するんだな。なんて言う。奴らの中には今でも現役がいるから、直接会いに行くのも手だけどな。死んだ奴に会うのも悪くはない。

 ふざけるな! って思ったけれど、僕たちの音楽が彼らには遠く及ばないってことも理解していて落ち込んでいると、背後から声をかけられた。

 だったら行ってみるかい? あんた達なら、なんとかなるかも知れないな。

 振り返るとそこには、数ヶ月前に死んだとされていたエンケンの姿が見えた。十数年ぶりの再会に、驚く余裕がなかった僕は、ただ呆然とエンケンの顔を見つめていた。

 ロックが何処で生まれたかは知っているかい? 残念だけど、アメリカでもイギリスでもないんだ。もちろん日本でもない。こことは別の世界、異世界の音楽だって言ったら信じるかい? この世界のロックスターは大抵が異世界生まれなんだ。オイラも含めてな。なんてことをエンケンは笑顔交じりに語っていた。

 エンケンの姿を見て、オーナーも笑顔を見せる。そして、まさか本当に戻ってくるとは思わなかったよ。エンケンに向かってそう言った。

 あんたが面白いバンドがいるって言うから、来てみたんだ。確かに面白い。まだまだ本物には程遠いけれどな。残念なことに、今じゃあ異世界でもロックは衰退しているんだ。彼らなら、こっちの世界もあっちの世界も救ってくれるかも知れない。その気があるなら取り敢えず今から行ってみるかい?

 エンケンにそう言われ、僕たちは頷く暇もなくその日に異世界へと旅立つことになったんだ。

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