12 強い風の吹いた日
強い風の吹いた日
……強い風が吹いているね。
その日、貝塚菜奈と桜井蛍のいる世界にはとても強い風が吹いていた。二人の小さな体を(二人はまだ十五歳くらいだ)ばらばらにして吹き飛ばしてしまうような強い風が吹いていた。
でも二人はその強い風の吹く日を耐え抜いた。
それは二人だけの力じゃない。
蛍には菜奈がいて、菜奈には蛍がいてくれて、そして二人にはそれぞれの人生を助けてくれるたくさんの人たちがいた。
だから二人は、この強い風の吹く日を耐え抜いて、乗り越えることができたのだ。
だからってわけじゃないけど、菜奈は(あるいは蛍も)今度そうした強い風の中にいる人を見つけたら、絶対にその人の力になってあげたいと、そう思うようになった。
お母さんのベットの横で、菜奈はそんなことを考えていた。そんな菜奈に「菜奈。そろそろ寝なさい」とお母さんは優しく笑ってそう言った。
「うん」菜奈は言う。
「お母さん。今日、ここで眠ってもいい?」菜奈は言う。
「ええ。もちろん」にっこりと笑ってお母さんは言った。
菜奈は仮眠用の毛布をかぶって、お母さんのベットのところに頭を乗せて目をつぶった。
すると、すぐに眠くなってきた。(きっと私はすごく疲れていたのだと思う)
「おやすみ。菜奈」お母さんが言った。
「……うん。おやすみなさい。お母さん」小さな声で、菜奈は言った。
それから貝塚菜奈は久しぶりにすごく安心できるとても深い眠りの中に落ちていった。
その日の眠りの中で、菜奈は、大好きな桜井蛍くんの夢を見た。
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