第64話「仮装大会へようこそ!」
イベント会場の一つである広場に到着した。
広場にはたくさんの屋台が出ていたり、ステージでは色々と催し物がなされていた。
「すっごい人多いね」
「そうだね。結構仮装している人もいるね」
「ほんとだ。あの、自分の父親が大事にしていた壺を割ってしまい、それを誤魔化すために、マヨネーズで壺をくっつけようとしたものの、結局ばれてしまい、父親からトランポリンキックをお見舞いされたライオン型の獣人の仮装も本格的ね」
「待って。なんで一目見ただけでそれが分かるの?っていうかツッコミどころが多すぎて困るんだけど」
「あ、あれは仮装じゃないわね。本物のマヨネーズキックをくらったライオン型の獣人よ」
レインさんが青木さんの言葉を訂正する。
「本物のマヨネーズキックってなに?」
「これだけ人多いと、仮装してるのか本物か分からないね」
僕のツッコミはスルーされる。
キョロキョロしていると、左手を根津さんに握られた。
「……?え、えーと根津さん?」
「人が多くてはぐれそうだから、手握っててくださいね」
すると、今度は僕の右手を青木さんが握ってきた。
「じゃあ、私もそうしようかな」
「……いや、もういい年なんだし、別に迷子とかにはならないでしょ」
「そんなことないよ。だってほら、レインさんが見当たらないし」
言われて気がついたけど、さっきまで一緒にいたレインさんが見当たらない。
「どうせみんな集まるのはまだ後なんだし、とりあえず屋台でもまわろっか」
二人に連れられてとりあえず屋台を見て回ることに。
普通に考えれば、両手に花の状態なのだが、僕を含めてみんな異形の姿になってるから、なんだか変な感じだ。
「なんかステージでイベントやってるみたいだね」
「ホントだ。……ミスコンっぽいね」
屋台で買ったものを飲み食いしながらステージの方を見る。
ステージ上では何人かいて、胸元には数字の書かれたプレートを付けている。
根津さんの言う通り、おそらくミスコンなんだろうけど、ステージ上にいるのは人以外の種族ばっかりだから、そもそも男なのか女なのか分かりにくい。
そして、大トリの人が出てくると、ひときわ大きな歓声が。
フリフリのピンク色の衣装を着た可愛らしい女の子が出てきた。
「あれって………魔法少女?」
「だよね。日曜朝のアニメに出てきそうな衣装だよね」
「ね。……なんかあの子どっかで見た気もするんだけど……」
ステージの上にいる女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに立っている。
「あ、それよりも、そろそろ時間じゃない?」
「……そうだね。えーっとたしかあっちの方だよね」
さっきまで一緒にいたレインさん他の冒険など、この世界に来てから仲良くなった人たちと集まる約束をしていた。
人込みをかき分け、広場を離れる。そして、街外れの裏山みたいな場所のふもとに到着した。
この近くにある酒場に行く約束をしていたのだが……
「みんなまだ来てないのかなー」
「待ち合わせの場所はこの辺だよね」
キョロキョロと辺りを見渡してみる。さっきの広場ほどではないが、そこそこ人の流れがある。
そんな時、一匹の狼男が近づいてきた。
「もしかしてケンタたちか?」
「……えーっと……誰ですか」
「ああ、そうか分かんねーのか。ケリーだよ」
ケリーさんは僕たちより少し年上の冒険者で、職業は『アルケミスト』だ。
はじめ声を聞いても分からなかったけど、言われてようやく分かった。
「ケリーさんもすごい狼っぷりですね」
「おお、そうか?三人もすごいぞ。アンテッドがコハルちゃんでライオン型獣人がフミコちゃんだよな?……それで、ケンタはなんの仮装だ」
「名もなき怪物の仮装です」
「はは。レインも考えるのがめんどくさくなったのかな」
「来てるのはケリーさんだけですか?」
「たぶんな。いや、レインが張り切って仮装したっぽいから、来てるけど分からないだけかも」
僕たちやケリーさんを含めて九人で集まる予定だから、あと五人だ。
「四人で固まっていれば、他のメンバーも分かるだろうね。どのみちお店はそこだし、ここで待ってれば来るだろ」
「ああ、そうで―――」
「うわあぁぁあああ!!」
すぐ近くから悲鳴が聞こえ、僕たちのすぐそばに何かが落下してきた。
「な、なんだ⁉」
「ひゃあ!」
見れば、地面に小柄なゴーレムが横たわっている。首がおかしな方向に曲がっているゴーレムはピクリとも動かない。
「だ、大丈夫ですか?」
声をかけゴーレム体に触れてみるが、全く返事がない。表面はザラザラしているものの、ゴーレムの感触とは違うような気がした。
「こ、これって……」
「ゴーレムじゃなくて人……?」
ゴーレムの仮装を施された人間が落下してきたのだった。
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