人類
時計が壊れた
だからまた買ってきた
そしてまた壊れた
それを繰り返した
今年の夏は
そんなことばかりしていた
「人類」
おれは呟いた
「おれは人類だ」
それは間違っていない
庭の生き物に話しかけてみた
「お前は脊椎動物だよな?」
こくんと頷かれた
いいぞ
世の中が正しい方向へと進み始めている
おれは人類
既に人類
そしてそれは明日も明後日も継続される
公園の鳩は言う
「わたしも一日でいいから人類になってみたいわ」
人類になって何するつもりなの?
「メロンパンを食べるの」
頭の中身は鳩のままだ
どうせなら力任せに異性を強姦したり手当たり次第、気に食わない奴を車で轢き殺してみたりすればいいのに
おれは公園から帰宅することにした
メロンパンを噛みちぎった
メロンパンの旨味成分がおれの口内を駆け巡った
「………母さん、おれって人類なんだよな?」
死んでしまった母さんの遺影にそう問いかけた
母さんはにっこりと微笑んだ
「なに馬鹿なこと訊いてんだい、お前が人類じゃないって言うなら一体なんだい? チーカマかい?」
母ちゃんのお墨付き
もはや疑いようの無い事実
おれは人類
確実に人類
風向きが変わってきたぞ!
だが翌朝、目覚めると扇風機の羽の一枚だった
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