ザ・マサコ
精神病棟で患者が斧を振り回していた
よくある光景だ
年に二十六回はある
だから医者は首を撥ねられたふりをする
うぎゃー
斧は偽物だった
だがその日は偶然、本物が使用されたので院内に衝撃が走った
吹っ飛んだ首から上だった
二度と元に戻ることはない
切り離された直後「え?」という顔をしていた
状況を把握すると死んだ
女医のマサコは昨日まで一緒に勤務していた同僚の医師の首の断面から噴出するおびただしい血液を見て不謹慎にも身体が疼いた
こんな夜には何か固い棒切れ的なものを膣内に挿入したいと思った
誰にも訊かれていないのに発言をした
「………野生のパイソンを彷彿とさせるような屈強な雄に無理やり力任せに背後から犯されたいという欲望を抑えることが難しいわね」
マサコには昨今の草食系男子なんてまるで論外だった
マサコ・ウォッチングが始まった
このうろうろが始まるともう固い棒切れ的な何かを手に入れるまで収まらない
マサコが病棟を徘徊すると患者がよく死ぬ
そんな噂が立っていた
どうやらマサコによって強制的に精気を吸い取られてしまうというのが医師たちの間でのもっぱらの説だ
「ぺろりんちょ」
マサコはそう呼んでいた
マサコのターゲットは患者だけでなく医師にも及んだ
廊下を歩くマサコの気配を敏感に感じ取った若く有望な医師は無意識下にお守りを握り締めていた
(どうか素通りして………)
だが医者が神などに頼っては駄目なのだ
そのせいで手元が疎かになりオペ中の患者の正常な部位が切り取られてしまったりする
「せんせ、それ」
ハッと気付く
「また、遺族がうるせーぞ」
早くも目の前の患者が死んだと想定し物事を進めるその頭の切り替えの早さはさすが先端医療に従事するクールガイだ
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