見渡す限り詩人


詩人がいた

見渡す限り詩人だった

中には普通の人間もいるようだったが

詩人だった

ぱっと見、普通の人間でも

皮を剥くとその中身は詩人なのだ

普通の人間のふりをしているだけなのだ

溜息をついた

わたしの仕事はこれらの詩人を崖から突き落とすことだった

いくら突き落としてもきりがない

次から次へと湧いて来た

「もううんざりだっ」

わたしは叫んだ

この星の酸素だって限界が無いというわけではないだろう

お前たちに与えられるべきものなんて何も無い

裸で生まれて裸で死ね

わたしは詩人を崖から突き落としまくった

だが崖が詩人で埋め尽くされてしまった

平地になった

わたしは唖然とした

その上を残された詩人たちがへらへらと歩くのだ

わたしは射殺することにした

手当たり次第にぶっ殺した

だが弾丸に限りがあった

詩人はといえば………次から次へと溢れて来るようだった

「一体、どれだけいるんだ!」

悲鳴をあげた

わたしは詩人を殺さなくてはならないのだ

それが仕事なのだ

わたしの身にもなってくれ

詩人がいた

大地に

見渡す限り

もううんざりだった

疲れ切ったわたしは大樹の下に座り込み詩人の観察を始めた

詩人が物陰から頭を出したり引っ込めたりしていた

起きたままおねしょしていた

散歩に出かけてそのまま帰って来ない奴もいた

そして数年後に腐った蜜柑を一つだけ持って帰って来た

それらは全て詩人だった

最低の間抜け面をぶら下げてそこに生存していた

中には正常な奴もいるのかもしれないが

選別なんてしていられないので皆殺しにする他無い

詩人ごときにそんな手間暇かけられない

わたしは再び銃器を肩からぶら下げ立ち上がった

詩人がいた

見渡す限りに

さっき殺したはずの詩人が何事もなくそこにいた

輪廻転生したのだ

わたしの手首はもう死にかけているというのに


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