通勤
おれは貧乳だった
間違いなくな
誰かに問われたら答える準備は出来ていた
「貧乳ですけど、何か?」
それでもまだ文句を言う奴がいるならそこら辺に転がっている瓦礫で思いっきりそいつの頭部を打ち付けてやるつもりだ
「貧乳だって言ってるだろ!」
言ってもわからないような奴なら暴力を振るっても構わないのだ
おれは白線の内側にいてそこでくすぶり続ける狂気そのものだった
先週から父親がえら呼吸を開始した
全く何もかもにうんざりさせられる
それでもはみ出す勇気それさえあれば人は何にでもなれるのだ
おれの陰茎は常に社会の窓からはみ出していた
そして会話もした
おれは引っ叩いて黙らせた
今は自分の陰茎と話しをしたい気分ではなかった
陰茎の方もいきなり引っ叩かれて不満げだった
「もうこいつの陰茎を卒業したい」
そんなことも言い出した
こいつの言っていることは間違ってはいない
そう思った
おれは覗き込んだ
陰茎は死んだように黙り込んでいる
ぺちんと叩いた
「おいきこえてますかあ?」
だが死んだふりをし続けた
隣りで一緒に電車が来るのを待っていた男がぎょっとした表情でこちらを見た
おれは即座に自らの陰茎をしまい込んだ
それはサッカーで例えるならボランチの動き
電車が来てあとは押し流されるようにその中へと紛れ込むだけ
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