大人の階段


風船は

しぼんだ

容赦なくしぼんだ

しぼみまくった

「おれはしぼむぞっ」

そのような言葉を風船が吐き出した

おれは呆然とした

風船が喋った

とにかく凄まじくしぼむつもりなのだと宣言された

そして翌日の朝にはしぼんでいた

宣言通りだ

おれは信じられなかった

昨日まであんなにぴんと張っていたのに

風船はしぼむそういう物なのだった

風船はしぼむところまで含めて風船なのだった

だから過度に期待すべきではなかった

どうせしぼむ

しぼまない風船は風船ではない

それがわかればこれからはそれほど哀しまずに済むだろう

「この風船はしぼむ」

おれは自分にそう言い聞かせて眠りに就つ

実際そうなっているのだから大人の階段を昇らざる負えない


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