象
象がいた
動物園に
象が
ただの象だ
虹色に輝いているわけではない
普通はいるのだ
おれはそう思った
動物園に象がいるのは普通だ
さらにこう思った
象は鼻が長すぎるのではないか?
「そう思わないかい?」
話しかけてみることにした
「ぱおおーんっ 」
鼓膜が潰れかけた
うるせえええっ
おれは柵を乗り越え象を蹴り飛ばした
すると自らの足首がおもしろい方向へと折れ曲がった
早速かかりつけの接骨医に電話予約しようと思った
「もしもし?」
「はい」
一呼吸おいて続けた
「骨が折れました」
「どうして?」
どうしてだって?
おれは少し考えた
「この世界の正義を遂行しようとしたけれど失敗しました」
電話の向こうは今のところ黙っている
おそらく次に聞こえてくるのは拍手だろう
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