可哀想なゾンビ


シャンプーがしたい

ゾンビはそう思っているに違いない

そのような誤解を秘め

わたしのボランティア精神が炸裂した

フローラルな香りのするシャンプーを

ゾンビの頭部に問答無用に塗りたくった

背後から奇襲した

ゾンビは逃げまどうのだ

照れているのだ

強烈な偽物の花の匂いが辺りを包み込んだ

一見そこには平和な理想郷が実現したかのように思えた

だがゾンビは苦しがっていた

悶絶だ

誰がどう見たってそうだ

だがわたしはそれには気付かず微笑んで両指を激しく動かした

泡立てた

「きもちいいねえ」

ゾンビは人を殺す

だがそれは映画やゲームの中だけのお話しだ

現実にいるゾンビはちょっと大人しめのただの腐った人だ

ゾンビは花の香りに包まれてこう思った

(死にたい………)

もう既に死んでいたがさらに死にたいと思った

窒息寸前だった

シャワーで全て流された

だがこの後まだリンスが残っていた


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