第16話 番外編:ニャンニャンニャン

 赤色の空には暗雲が立ちこめ、大地には奇っ怪な枝振りの木々が茂る暗い森が広がり、血の川が流れる。


 ここは魔界、人ならざる者達が住まう世界……


「殿下ー!今日は猫の日なんだって!」


「そうだな!ニャンニャンニャンのゴロ合わせで猫の日だな!」


 ……その魔界でも、二月二十二日は猫の日と定められていた。

 魔界の一角に聳える岩山の頂上に築かれた城の一室で、飾り毛のついた丸みを帯びた小さな耳と、緑色のボタンのような丸い目が特徴的な、薄い色をした茶トラの仔猫のモロコシは、凜々しい表情を浮かべて白いフカフカな手を握りしめた。


「猫の日だからボク頑張るよ!おめかしもしてきたんだ!」


 その言葉通り、モロコシはフードの付いた光沢のある緑色のローブを身につけている。


 もちろん、フードはバッタの頭部を模している。


 そんなモロコシを見て、先のとがった大きな耳と、青いアーモンド型の大きな目が特徴的な、サバトラ模様の仔猫シーマ十四世殿下が、シマシマの尻尾をダラリと垂らして脱力した。


「……おめかしはいいんだけど、その格好だとバッタ要素が強すぎないか?確かにちょっとカッコイイけど……」


「カッコイイなら大丈夫だよ!そう言う殿下もカッコイイね!」


 モロコシが尻尾を立てて笑顔で褒めると、シーマはフカフカの手で顔を洗う仕草をしてごまかしながらも、尻尾を立てて喜んだ。


「そ、そうか?」


 照れるシーマの格好はというと、襟にフリルが施されたシャツを着て、サスペンダーつきの半ズボンを履き、頭にはトビウオを模したかぶり物を被っていた。


「うん!すごくカッコイイよ!みんなにも見せに行こう!」


 モロコシが目を輝かせながらそう言うと、シーマも目を細めて頷いた。


「そうだな!そうしよう!」


 そして、シーマはトビウオのかぶり物の被り具合を直し、モロコシはバッタのフードを被り、二人仲良く歩き出した。



 かくして、猫要素が若干行方不明になりながらも、二人はおめかしをお披露目する旅に出かけたのだった。


 

 二人がまず向かったのは、魔王城の台所であった。


「ふふーんふんふん」


 そこでは、クラシカルなメイド服に身を包んだ老女、森山はつ江が、上機嫌で鼻歌交じりにコンロの周りの拭き掃除をしていた。


「はつ江ー!」


「はつ江おばあちゃーん!」


 シーマとモロコシの声に気づいたはつ江は、顔を上げると、二人の姿を見て目を丸くした。


「あれまぁよ!二人とも随分と可愛らしい格好じゃないかい!」


 はつ江が大袈裟に驚くと、シーマは得意げな表情で、ふふん、と鼻を鳴らし、モロコシもシーマの真似をして得意げな表情で胸を張り、ピスピスと鼻を鳴らした。


「どうだ!はつ江!カッコイイだろ!」


「今日は猫の日だから、殿下とおめかししてるんだー!」


 二人はそう言うと、自分達の衣装を見せびらかすようにくるりと身をひるがえした。はつ江は、それを見てニッコリと笑うと、二人に近づきフカフカの頬を撫でた。


「うんうん、カッコイイだぁよ」


 二人は目を細めて喉をゴロゴロと鳴らしていたが、不意にシーマが我に返り、コホン、と咳払いをした。


「もう!子供扱いするなよ!」


 尻尾をパタパタと振って照れるシーマに、はつ江はカラカラと笑いかける。


「わははは!悪かっただぁよ!ところで、シマちゃん、モロコシちゃん、猫の日には何をすればいいんだい?」


 はつ江が問いかけると、シーマとモロコシはハッとした表情で顔を見合わせた。


「うーん……そう言われてみると、何をすればいいんだろうな……」


 シーマがそう言いながら腕を組んで考え込むと、モロコシもシーマの真似をして腕を組んで首を傾げた。


「なんだろうねー?」


 悩む二人を見たはつ江はニッコリと笑うと、二人の頬を再び優しく撫でた。


「どれどれ、それなら……よっこらせ!」


 そして、アイランド型の調理台に向かうと、引き出しを開けて何かを取り出し、再び二人の前に戻ってきた。


「猫の日のお祝いに、これをあげるだぁよ!」


 はつ江の手には、赤い文字が書かれた黒い包み紙にくるまれた飴玉が四つ握られていた。二人は、それを見ると黒目を大きくして、尻尾をピンと立てた。


「こっちに来たときに、ズボンのポケットに入ってただぁよ!お祭りのときに買った飴にはかなわないかもしれねぇけど、甘くておいしいだぁよ!」


 はつ江はそう言うと、二人に向かってウィンクをした。


「はつ江!恩に着るぞ!」


「はつ江おばあちゃん!ありがとう!」


 二人がフカフカの手で二つずつ飴玉を受け取ると、はつ江はニッコリと笑った。


「どういたしまして!じゃあ、折角おめかししてるんだから、ヤギさんにも見せに行くといいだぁよ!」


 はつ江の提案に、シーマはギョッと表情を浮かべてから、気まずそうに頬を掻く。


「兄貴か……なんか面倒なことにならないといいけど……」


「大丈夫だよ殿下!魔王さまにも見せに行こう!」


 モロコシはそう言うと、シーマの手を取ってスタスタと駆け出した。


「うわぁ!?ちょ、待てよ!モロコシ!」


「二人とも!気ぃつけて行くだぁよ!」


 トレンディドラマで人気の俳優のような台詞で焦るシーマの背中を、はつ江はニコニコと微笑みながら見送った。


「ふふふふふふふーん」


 二人が台所を出て行くと、はつ江は楽しそうに鼻歌を歌いながら、コンロの拭き掃除に戻っていった。


 台所をあとにしたシーマとモロコシは、赤い絨毯の敷かれた廊下をキョロキョロと見渡しながら歩いていた。


「魔王さま、いないねー」


 モロコシが残念そうに呟くと、シーマもどこか淋しげな表情を浮かべて、小さくため息を吐いた。


「自室にもいなかったから、執務室で仕事中かもしれないな……」


「そっかぁ……じゃあ、お邪魔できないね……」


「いや、まったくもって、全然、何も、決して問題はないぞ」


 シーマとモロコシが、耳と尻尾を垂らしてシュンとした表情を浮かべていると、突然背後から声がかかり、二人は飛び跳ねて驚いた。


「うわぁ!?」

「わーっ!?」


 二人が胸は胸を押さえて呼吸を整えると、息ぴったりのタイミングで振り返った。そこには、赤銅色の長髪と同じ色をした瞳と堅牢な角が特徴的な美青年、魔王が黒ずくめの服を着て立っていた。


「バカ兄貴!驚かすなっていつも言ってるだろ!?」


 シーマが尻尾を大きく縦に振って抗議すると、魔王はしょげた表情を浮かべて肩を落とした。


「悪かったよ……ところで、二人とも、何か用か?」


 魔王が問いかけると、モロコシがフカフカの手を上げて嬉しそうに目を細めた。


「魔王さま!今日は猫の日だからおめかしをしたので、見せにきました!」


「そうか……」


 目を輝かせながら魔王が嬉しそうに呟くと、シーマは軽く咳払いをしてからフカフカの頬を掻いた。


「仕事中に邪魔して悪かったな、兄貴……」


「いや、気にするな。ちょうど、国家予算案の修正に行き詰まってて、気分転換したかったから……」


 魔王はそう言うと、クマのできた目で力なく虚空を見つめた。シーマとモロコシは心配そうに魔王の顔をのぞき込んでいたが、不意にモロコシが何かに気づいた表情を浮かべて、ローブのポケットに手を入れた。


「魔王さま!あめ玉一個あげるから元気だしてください!」


 そして、先ほどはつ江からもらった飴をフカフカの手で掴んで、魔王に差し出した。魔王が目を丸くして驚いていると、シーマもズボンのポケットをゴソゴソと探って、飴を一つ取り出した。


「魔界を統べる者が倒れたら一大事だからな!特別にボクのも一個分けてやる!」


 顔を背けながらも、シーマも尻尾を立ててフカフカの手で飴を差し出した。


「そうか……二人とも、ありがとうな……」


 魔王が幸せを噛みしめるようにそう言いながら、二人から飴玉を受け取った。


「どういたしましてー!」


「ふん!べ、別に大したことはしてないんだからな!」


 モロコシが頭をぺこりと下げ、シーマが頬を膨らませながらそっぽを向いていると、魔王は薄く微笑んだ。そして、飴玉を胸についたポケットに大事そうにしまうと、口元に手を当てて、ふぅむ、と呟いた。


「……では、礼と言ってはなんだが、これを持って行くと良い」


 魔王はそう言うと、パチリと指を鳴らした。すると、魔方陣が宙に浮かび上がり、ガラス製の小瓶が召喚された。魔王は小瓶を手に取ると、二人の前に差し出した。


「昨日の夜、気分転換に作ったラムネ菓子だ。はつ江にも好評だったから、味は保証するぞ」


 二人は目を輝かせながら尻尾を立てて、小瓶を受け取った。


「ありがたく受け取ってやる!」


「魔王さま!ありがとうございます!」


 嬉しそうにする二人を見て、魔王も、うんうん、と頷きながら嬉しそうに微笑む。


「じゃあ、ボク達はこれで失礼するよ、兄貴」


「じゃあね!魔王さま!あとは……殿下!バッタ仮面さんにも会えるかな!?」


 モロコシがシーマに顔を向けてそう言うと、シーマと魔王はビクッと身を震わせた。


「あー……いや、バッタ仮面も色々と忙しいらしいから……」


 シーマが目を泳がせながらフカフカの頬を掻くと、モロコシは尻尾を垂らして淋しげな表情で肩を落とした。


「そっかぁ……正義の使者だから、困っている人を助けに行かないといけないもんね……」


 モロコシの様子を見た魔王は、決意に満ちた表情を浮かべて手を握りしめた。


「二人とも!あれを見てみろ!」


 そして、大声を出しながら二人の背後を指さし、二人が驚いて後ろ向いた隙を突いて姿を消した。


「魔王さまー、なにもいなかったよ……あれ?」


 モロコシは振り返ると、魔王の姿が消えていることに驚き首を傾げた。その隣で、シーマが頭痛を堪えるようにトビウオのかぶり物を被った頭を押さえる。


「バカ兄貴め……」


「少年達よ!私を呼んだかな!」


 シーマが嘆息を漏らしながら呟いていると、どこからともなく声が響いた。


「とう!」


 そして、威勢の良いかけ声とともに、天井から赤いスカーフとバッタの面を被った魔王……もとい、正義の使者バッタ仮面が舞い降りた。途端に、モロコシの目が輝き出す。


「正義の使者バッタ仮面、参上!」


 バッタ仮面が律儀に決めポーズを取っていると、モロコシは尻尾をピンと立てて、パチパチと拍手を送った。


「わぁ!バッタ仮面さんだ!」

「わー、バッタ仮面さんだー」


 シーマもモロコシに付き合うように、ヒゲと尻尾をダラリと垂らしながら棒読みでそう言うと、ポフポフと力なく拍手を送った。


「バッタ仮面さん!今日は猫の日なのでおめかしをしました!」

「おめかしをしましたー」


 興奮気味のモロコシと脱力気味のシーマがそう言うと、バッタ仮面は腕を組んで、うんうん、と頷いた。


「二人ともとってもカッイイのだ!!」


「わーい!」

「わ、わーい……」


 バッタ仮面は仮面の下に微笑みを浮かべると、二人の頭を優しく撫でた。


「二人とも、今日もとても良い子だったと魔王から聞いたのだ!だから、特別にバッタ仮面キッズの称号を与えるのだ!」


「わーい!バッタ仮面さんありがとー!」

「ありがとー……」


 バッタ仮面から贈られた称号に、モロコシはピョコピョコ飛び跳ねて喜び、シーマは尻尾の先だけをピコピコと動かした。


「どういたしましてなのだ!では、二人ともさらばなのだ!」


 バッタ仮面はそう言うと、とう!、というかけ声とともに跳び上がり、赤い霧となって姿を消した。


「バッタ仮面さん!またねー!」

「またねー……」


 モロコシとシーマは赤い霧に向かって手を振りながら、バッタ仮面を見送った。


「モロコシ、良かったな」


 シーマが力なくそう言うと、モロコシは目を輝かせて力一杯頷いた。


「うん!バッタ仮面さん、今日もカッコよかったね!」


「そうだな……」


 シーマがそう言ってヒゲと尻尾をダラリと垂らしていると、壁に備え付けられた百合の花の形をした拡声器から呼び鈴の音が響いた。


「たのもー!」


 そして、呼び鈴の音に続いて力一杯叫ぶ声も響いてくる。モロコシはその声を聞いて、キョトンとした表情で首を傾げた。


「殿下、五郎左衛門さんの声がしたみたいだよ?」


「ああ。何か急用かもしれないから、行ってみようか」


「うん!」


 二人は顔を見合わせて頷くと、玄関に向かって駆け出した。


 シーマとモロコシは玄関にたどり着き、力を合わせて玄関の重い扉を開いた。するとそこには黒い忍び装束に身を包んだふさふさの毛並みの柴犬、柴崎五郎左衛門が封筒を手に立っていた。五郎左衛門はシーマが被ったトビウオのかぶり物とモロコシが被ったバッタのフードを見ると、円らな黒い目が可愛らしい顔にキョトンとした表情を浮かべた。


「殿下、モロコシ殿、その格好は一体いかがなされたのでござるか?」


 小首を傾げる五郎左衛門に対して、シーマは得意げな表情で、ふふん、と鼻を鳴らした。


「今日は猫の日だから、おめかしをしているんだ!」


「ねぇねぇ五郎左衛門さん!カッコイイ?」


 モロコシが目を輝かせて、鼻をピスピスならしながら尋ねると、五郎左衛門は円らな瞳を細めてニッコリと笑い尻尾を振った。


「お二人とも、実に格好良いでござるよ!」


 柴崎が答えると、二人は尻尾を立てて嬉しがった。


「ときに、殿下。本日は、魔王陛下はお忙しそうでござるかな?」


 五郎左衛門が本題を切り出すと、シーマは気まずそうな表情を浮かべて、尻尾をゆらゆらと揺らした。


「うーん……ちょっと仕事が大変そうなんだけど、急ぎの用なら呼んでくるぞ?」


「いえいえいえ、滅相もないでござる!」


 シーマの提案に、五郎左衛門はブンブンと首を横に振った。


「先日ゴブリン族の探検隊が発見した遺跡について、調査報告書ができあがったのでお届けにまいった次第でござるゆえ、魔王殿にお渡しいただければ大丈夫でござる」


 五郎左衛門はそう言うと、封筒をシーマに差し出した。


「分かったよ。ありがとうな五郎左衛門」


「いえいえ、でござるよ」


 シーマは軽く会釈すると、五郎左衛門から封筒を受け取った。五郎左衛門はニッコリと笑顔を浮かべた後、何かを思い出した表情を浮かべて、忍び装束の懐に手を入れて中を探った。


「そうだ、殿下、モロコシ殿、本日は猫の日ゆえ……こちらをどうぞでござる」


 そして、経木の包みを取り出し、二人の目の前に差し出した。


「母上が作った干し芋でござる。おやつに最適でござるよ!」


 モロコシは尻尾を立てて包みを受け取り、ボタンのように丸い目を細めて満面の笑みを浮かべる。


「ありがとう五郎左衛門さん!」


「ありがたくいただくよ、五郎左衛門……そうだ」


 シーマは五郎左衛門に向かってお辞儀をした後、ポケットに手を入れてガラスの小瓶を取り出した。そして、中身のラムネを数粒取り出して、柴崎に差し出した。


「報告書と干し芋の礼になるかは分からないけど、兄貴が作ったラムネだ。受け取ってくれ」


「五郎左衛門さん、ぼくのも分もどうぞー」


 シーマに続いて、モロコシも五郎左衛門にラムネを差し出した。


「なんと!これは実にありがたき幸せでござる!」


 柴崎は尻尾を振りながらニッコリ笑うと、二人からラムネを受け取った。そして、ヒョイと口に放り込むと、カリカリと音を立ててかみ砕いて飲み込んだ。


「とても美味しかったでござるよ!魔王陛下にも、お礼をお伝えくだされ!」


 五郎左衛門はそう言うと、尻尾を勢いよく振りながら頭を下げた。


「それでは、拙者はこれにて御免!」


 そして、くるりと踵を返し、スタスタと駆け出していった。


「またなー!五郎左衛門!」

「またねー!」


 シーマとモロコシは、遠ざかる五郎左衛門の背中に手を振りながら見送った。五郎左衛門の姿が見えなくなると、モロコシは手を下ろしてシーマに笑顔を向けた。


「殿下!今日はおかしをいっぱいもらえたね!」


「そうだな!モロコシ!」


 二人は笑顔で頷き合っていたが、どちらともなく何かに気づいた表情を浮かべた。


「ねぇ、殿下」


「なんだ?モロコシ」


「これって、猫の日というよりも、収穫祭のおかしあつめなんじゃないかな……」


「うん。ボクも、そんな気がしたな……」


 二人は腕を組みながら、猫の日とはこれで良いのか、としばらく悩んだ。しかし、城の中から、お茶をいれただぁよ、と言うはつ江の声が聞こえると、悩んでいたことも忘れて、ヒゲと尻尾をピンと立てて、楽しそうに駆け出していったのだった。



 一方その頃、草原地帯に本拠地を構えるバッタ屋さんの面々も、猫の日のお祝い会を開催していた。


「親方!本日は猫の日ということで、肩たたき券を作りやした!どうぞ、お好きなときにお声をかけてくだせぇ!」


 カナヘビのチョロは、画用紙を切って作った回数券を手にして勢いよく頭を下げ、


「親方ー!忠二と一緒に似顔絵描いたー!」


「親方ぁ!あげるぅ!」


 白いハツカネズミの忠一と、茶色いハツカネズミの忠二は黒猫の描かれた画用紙を掲げ、


「ヴィヴィアンも、親方にプレゼントがあるみてぇでございやすよ!」


 ムラサキダンダラオオイナゴのヴィヴィアンは、赤い花を口にくわえてカクカクと首を左右に動かした。

 そんな面々を見て、バッタ屋さんの責任者である黒猫のマダム・クロは、目尻の上がった金色の目を潤ませ、毛羽だった短い尻尾をピンと立てた。


「アンタ達……!ありがとう!……でも、マダムと言ってちょうだいね」


 クロが目を拭って、細く切れ込みの入った耳をパタパタと動かすと、三人はそろえて口を開いた。


「かしこまりやした!親方!」

「親方ー!了解ー!」

「親方ぁ!了解ぃ!」


 ヴィヴィアンも三人に続くように、翅をパサリと動かした。


「アンタ達!いつになったら覚えてくれるのよ!?」


 相変わらず、スットコドッコイ気味な面々に対して、クロは短い尻尾を縦に振って憤慨した。

 かくして、バッタ屋さんでは、猫の日が母の日に近いイベントとして、過ぎていったのだった。  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る