第一章 生態及び撃退方法について
基本生態、身体能力
何だ今更、とうんざりする方々も多数おられるかと思うが、少し我慢をいただきたい。
六月十八日に東京で発生したゾンビは、映画にならって、『旧ドン系』と呼ばれている。つまりは『走る』のではなく、『歩く』のである。
また、噛みつくことによって感染し、時間をおいて発症、ゾンビ化する。
発症までの時間は個人差があり、速くて数分(これは諸説あるが、公式の記録で最速は三分弱だという。しかし数十秒で発症したとの主張もあるが――これは眉唾だ。動画サイト等に全く無いのだ。ただ――フェイク映像の類や、映画の一部抜粋でそういう物もあるのだが……)、遅い場合は半日程度。この時間差が感染が拡大した原因と言われている。
つまり、噛まれた人間が移動する事により、感染が拡大した、というわけだ。
だが、作者としては、『他の五大都市でも同時多発的にゾンビが発生した』という点を考慮し
『実は、発症者が相当数、解き放たれたので、感染が拡大した』という説の方を推したい。
読者諸君も実際に目撃するか、動画サイト等で見たと思うが、『ゾンビに噛まれた人間は、即座に前後不覚になる』のである。故に、救急搬送されてしまい、病院等で爆発感染を引き起こすことになるのだが、とにかく、遠方までの移動は不可能であろう。
いや、しかし電車等に乗る場合もあるじゃないか、という疑問は当然のように出てくるのだが……関東限定で言えば、都内以外でゾンビが確認されたのは、早くても六月十九日なのである。
ちなみに作者の住む地元には新幹線が停まるが、ゾンビ達が姿を現したのは、六月の二十五日であった。(まあ、後述する迅速な処置が功を奏していたのではあるが、としても、一人も来なかった点は見逃せない)
次はゾンビの身体能力である。
大体の資料や著作物では、歩行速度は、時速四~五キロメートル。筋力等は、脳のリミッターが外れた状態なので、怪力を発すると記されている。
確かに、そうなのだろう。実際にゾンビによって破壊された家屋や、損壊された遺体の写真や映像もある。
だが、それは『なりたて』の場合に限るのだ。
個人的には、地方に拡散したゾンビ――所謂『熟成ゾンビ』の筋力は、移動する脚力以外は、ほぼゼロに近かったのではないかと考えている。
嘘だ、とお思いの地方在住の読者諸君は、よく思い出していただきたい。
ゾンビがドアノブを回しただろうか?
ゾンビが物を持っただろうか?
ゾンビが掴みかかってきただろうか?
連中の筋肉で、数日後に役目を果たすほどの動きができたのは、顎と足ぐらいだったのではないだろうか?
壁を破った、という話も、よく聞いてみれば――それはゾンビ達の重さで壁が崩れただけではなかったか? 施錠をして立てこもった諸君は、殆どが生存しているのではないだろうか?
しかも、その顎の筋肉や足の筋肉ですらも、時間経過で更に弱くなっていったのではないか?
原因は簡単だ。
『腐敗』と『乾燥』である。
日本の夏はアフリカよりも暑い、とマサイの人が言ったとか言わないとか。
まあ、ともかく、これを執筆している時点の日本の六月は非常に暑い。全国平均が35℃越えで、東京にいたってはヒートアイランド現象やらなにやらで更に暑い。
618事件当時は、六月の観測史上最高気温を叩きだしていたそうで、しかもゲリラ豪雨が各地で頻発した。(なんと北海道も連日32℃越えだった)
雨でぐしょ濡れになり、アスファルトで焼かれ、また雨でぐしょ濡れになる。
つまり、五大都市で発生したゾンビ達は、行軍の途中で半数が『腐敗して行動不能』になり、残りの半分が『動く干物』のような状態になっていったのだ。
体重は――活動停止した状態の物を、数体計測したが――大体、30~40キロ以上の個体はいなかったのである。(最も軽かったのは、長身の女性で、17キロだった)
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