VRMMOの章
天才開発者
いまこの世界で大流行している世界初のVR型MMORPG、『ファンタジー・ノベル・オンライン』略してFNOは絶頂期を迎えようとしていた。
しかして、プレイヤー数、販売数、顧客満足度、その他全てにおいて既存の製品を上回る勢いであるらしいこのゲームは、いま途轍もない災厄、デスゲームに見舞われようとしている。
故に現在、僕はそんな大層なゲームを作り上げた天才開発者、
そう、今回の仕事はこの日本と良く似た異世界で開発された、VRMMO空間が舞台となるらしい。
事の始まりは2日前、ようやく決まった就職先である会社、神様が運営する天空城へと出社した僕が、自分に用意されたお願い確認用タブレットを操作している所から始まる。
──☆☆☆──
面接の日を除けば初出勤となる今日、僕はさっそく神様に呼び出され、仕事のやり方と報酬の決め方を教えてもらっていた。
「でね、武藤くんにはこのタブレットを使ってもらい、自分にあった願いと、僕から受け取る事のできる報酬を決めて欲しいんだ」
ふむふむ、なるほど。
神様が見せてくれているタブレットの画面には、あらゆる世界のお願いが難易度別で区分けされており、さらに必要と推定される戦闘力や能力などが細かく記載されていた。
また画面のタブを切り替えると、今度は僕の仕事の成果に応じた
ようするに、日本にいる間はこのタブレットを通じて色々できるといった所なのだろう。
タブを操作し納得した僕は、まずは報酬の内容を決めるべく受け取れる能力の確認を急ぐ。
なにせ今の僕はただの一般人に毛が生えた程度の、ド素人だ。
いくらクロードさんの教えと魔法銀の指輪があるとはいえ、今の魔法力ではとてもじゃないが仕事をするには物足りない。
「何々、え~っと、剣術に、体術、魔力増幅、……etc」
なるほど、確かにより取り見取りだ。
ちなみに前回の仕事を達成して受け取れる報酬はこの中のどれか、という事らしいけど、帰って来た時に神様も言っていた通り、仕事の内容が良かったのでボーナスとしてさらにもう一つ取得できるらしい。
例えば剣術を二回取得すれば、剣術2、として表記される事になる。
この取得したスキルというのは、僕が自力で鍛えた技術とはまた別に、加護として備わるものらしいので何を取っても損はないとの事。
既に実力が達人級の剣術士だったとしても、剣術の加護を取得するだけでさらに剣の腕に磨きがかかるという。
そういう至れり尽くせりの仕様のようだ。
そこで僕はまず表示されているお願い一覧を眺め、自分が取得できるスキルと照らし合わせて様子を見ていく事にする。
まだ2回目の仕事なので、できるだけ難易度が低く尚且つ面白そうなお願いを見つけていくと、ふと一つの項目に目が留まった。
表記されている異世界の名前は僕のいるこの国と同じく、
どうやら少しだけ科学の進んだ日本が舞台となるようだった。
同じ日本なら勝手知ったる僕も動きやすいだろうし、何より表示されている難易度がそこまで高くない。
これなら僕にもこなせそうであった。
とはいえ僕一人の判断ではまだ不安が残るので、上司である神様に確認をとる。
「ああ、確かにその仕事は武藤くんに適任かもしれないねぇ。ただ同じ日本といっても、その世界での主な活動内容は暴走したAIが住まう空間、VR空間での戦闘となるはずだ。その事を踏まえてスキルを選ぶといいよ」
「なるほど、ゲームの世界ですか……」
「そうそう。オススメは剣術か体術かなぁ。武藤くんの習得した魔法体系はVR空間でも問題なく使えるけど、戦闘の経験がないから上手く立ち回れないでしょ?」
確かにその通りだ。
いくら近代世界で魔法が使えるチートな技術を持っているといっても、僕が戦闘に向いてる訳ではない。
至近距離なら素人が殴るパンチのほうが全然早いし、火力なら機関銃や爆弾のほうがよほど脅威だ。
今の実力では、戦いに向いているとはとても言えない。
それでも尚、神様が仕事として向いていると言ってくれているのは、習得できるスキルを考慮した上で、さらに同じ日本が舞台となるからだろう。
勝手知ったる土地柄故、適正があると判断されているのだ。
「分かりました。では剣術と体術を習得の上、現地へ向かわせていただきます」
「ああ、頑張っておいで。期待しているよ」
そう言って神様は手をヒラヒラとふり、僕はオススメスキルを二つ習得して異世界へと飛ばされていくのであった。
ちなみに、召喚される場所は天才開発者の自宅の近く、近所のコンビニである。
だっていきなり不法侵入するわけにもいかないし、見知らぬ人間が家にいたら会話どころじゃないだろうからね。
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