2話
喫茶室・ジョリン。いつもと同じ、友江と。
「あのさ、カナ。」
「なんですか?」
「あんた、ここしばらく顔色悪くない?」
「そー…ですか?…ファンデーション変えたからですかねー…。」
「ダイエットでもしてるんじゃないの?あんたは充分細いんだから、それ以上痩せなくていーの!あ、そういえば今夜、部の飲み会。古都であるけど…、行かないわよね?」
「そうなんですか?私も参加します。」
加波子は埋めた、時間と心を。埋まるはずなどないとわかっていても。そうせずにはいられない。体も心も動かそうとした。
ある夜、場所は新宿。駅のトイレで、鏡を見ながらリップスティックを塗る加波子。1枚しか持っていないワンピースを着ている。いつもより少し高いヒールのパンプス。髪を整え、時計を見て慌てる。
その日は友人と会う。加波子の数少ない友人。理由までは知らないが、リストカットの痕を知る友人。その心の痛みが理解できる、そんな貴重な存在。彼女たちと出会っていなかったら、加波子は同じことを何度も繰り返していたかもしれない。
1人は、ねこ
待ち合わせ場所には庄子がいた。久しぶりと挨拶をかわすと、加波子の後ろからドンっとぶつかるねこ姉。3人揃い、ねこ姉が予約した店へと向かう。可愛い外観の店。席に着く3人。ねこ姉と庄子の会話が始まる。
「このお店、店員が全員イケメンらしいよ。」
「ねこちゃん、それほんとにぃ?」
「だから予約したんだもん。」
ドリンクが運ばれてきた。
「うわーイケメン!」
店員を見た庄子が叫ぶ。そして料理も運ばれてきた。ドリンクも料理も可愛らしく、料理のお皿には小さな花が添えてあった。加波子はそれらに見惚れていると、庄子は店員に聞く。
「ねぇねぇ、彼女はいるの?」
聞かれ慣れたかのように店員はニコッと答える。ベビーフェイス。
「いませんよ。」
「彼女いないって!ねこちゃん!チャンスよ!連絡先聞きなよー!」
2人の調子、テンションはいつもこんな感じ。話す内容は近状報告から始まり、恋愛事情、仕事の愚痴。特別変わったことはない。それでもそれがいつも楽しく、嬉しい加波子。
彼女たちといるといつも時間を忘れる。帰りたくなくなる。3人の都合がなかなか合わないからこそ、余計つらくなる。それでも時間は来る。
庄子の家は加波子の一駅手前。ひとりになる直前まで一緒にいることができる。そして庄子と別れ、加波子はひとりになる。
その時、加波子は何も考えないようにしていた。その後迫り来る虚無感に備えて。
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