第65話 孫劉同盟復活
呉軍迎撃で応援に来ていた馬超、張飛、黄忠の三人は後始末を終えると魏軍の攻勢に備えて任地に引き返した。魏延も三人と一緒に上庸へ引き揚げた。
*****
闞沢は徐州で陸遜に会い、大都督復帰など諸々の手続きを終えて建業に戻ると今度は大鴻盧(外務大臣)として江陵を訪れた。荊州側は劉封、韓玄、龐統の三人で、関羽は政庁の警戒に当たっているので不参加だった。
「この度は当方が多大なご迷惑をお掛けした事をお詫び致します。」
闞沢の第一声は不始末に対する謝罪だった。余計な事を一切言わなかったので三人も闞沢に対して信用に足る男だと安心感を抱いた。
「国内にも呂蒙の協力者が居たのではないか?」
韓玄は商人を利用した情報網を持っており、そこから張昭が絡んでいるらしいという情報を掴んでいた。
「孫喩と張昭が呂蒙と結託していた事が明らかになりましたので二人は斬首にて処分致しました。」
韓玄は孫権に罪は無いと闞沢が暗に仄めかしていると判断した。
「劉封様、孫権殿はこの件に絡んでいないと思われます。」
「私もそう思う。今回の件は我々に反感を抱いた者たちによる反乱行為だと理解したので孫権殿にはその旨を伝えて欲しい。」
謝罪の件はあっさり決着した。
「後は今回の被害に対する補償だね。」
龐統は立ち上がって壁面に掲げている地図の前に移動した。
「こちら側に一方的な非があるとはいえ多数の兵を失っております。どうかお手柔らかにお願い致します。」
龐統は闞沢に対して分かっているから心配するなと云わんばかりにに大きく肯いた。
「江夏、豫章、建安の割譲を要求しようかね。」
「お待ち下さい。三郡割譲は厳し過ぎる。」
孫権からは呈示される条件については出来るだけ受け入れるようにと言われていたが三郡割譲は承諾出来るものではなかった。
「こっちも砦や烽火台を破壊された上に死傷者も出たからね。」
「その事は承知しておりますが、我々も主力軍の大半を失っております。加えて三郡を割譲する事になれば呉は死に体となってしまいます。」
「それを言われてもねえ。あっしらはこのまま戦争を継続しても良いんだよ。荊北と雍州の魏軍は身動きが取れないようにしているからね。」
「そうなれば我々も全滅覚悟で戦わざるを得ません。荊州軍もそれなりの損害を覚悟して頂きたい。」
闞沢は一歩も引かない姿勢を見せた。
「お前さんの言うように無理強いすれば相打ちになる可能性が高いし、反劉備派が息を吹き返すだろうね。それを考えれば江夏一郡だけで矛を収めようか。江夏はあっしらが占領しているから譲れないよ。」
「承知致しました。」
「それでは孫劉同盟復活で宜しいですね?」
劉封と闞沢は握手を交わした後、誓約書に署名して互いに一部ずつ保管する事になり、孫劉同盟は再び結ばれた。
*****
闞沢が三郡割譲要求を交渉の末に江夏一郡割譲で纏めたので孫権に対して顔も立ち、呉の内部に燻る戦争継続派を鎮める事に繋がった。荊州内部では江夏一郡のみ割譲は軽すぎるという意見も出たが、強硬な態度を貫いて呉と全面戦争になれば漢中で痛い目に遭わせた魏に復活する時間を与えるだけで何の得にもならないと関羽の主張もあり抑え込まれた。
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