第50話【VS〝アイナ〟子育て日記二日目 激闘編その3】




 私だけが孤独感と闘っていると思っていた。


 私だけが傷を負い苦しんでいると思っていた。


 私だけが大切な人を失ったと思っていた。


 私だけが――――


 だけど現実は【非情】に襲ってきて、過去に囚われている2人の女性が苦しみもだえながら、自分じゃどうしようも出来ず、当たりどころのない怒りとあらがえない【過去の産物】と向き合おうとしているんだ。


 ニッシャは弁解するわけでもなく、静かに目を閉じた……


 左眼から流れる一滴ひとしずくの涙は、懺悔ざんげをするかの様にゆっくりと頬を伝っていき、音もなく落ちてゆく。


「それが貴女の答えなのね……良いわ、私が――――」


 両手に力を込め、ニッシャの息が次第に止まっていき、意識が途絶えてきた……その瞬間ときだった――――


 周りの弟子達の視線が天井付近に集中しており、殺伐とした空気の中、一筋の光が差し込んでいく。


「おい見ろよ、何だあれは!?」


「おぉ――――これは美しい……生まれてこの方、筋肉を愛し筋肉に愛された男【鋼のバルクス】と呼ばれているが、この世に三角筋よりも綺麗な物があるとは……今、俺はとてつもなく感涙している!!」


 それは、夜空を照らし出し天上に散らばる無数の星のように、天井の360゜を覆うその絵には、子ども達が思い描く【理想の結晶】と呼べる作品が眼前一杯に広がる。


 そこには弟子達含め、ミフィレン、ラシメイナ、ニッシャにアイナの仲睦まじい絵が描かれていた。



 魔法筆マジックペンを両手で持ち乱舞しているラシメイナを左手で抱きながら、もう片方の手で描き続けるミフィレンの姿が見て取れた。


 自作の有羽天馬ペガサスを造り出したのか、大きな7色の両翼に一本結びの髪の毛に似た長い尾。


 それから大きな体に似つかわしくない短足の馬に二人がまたがっている姿があり、何者にも縛られないそらを自由気ままに駆け回っていた。


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