巡洋艦の種類と歴史

軽巡洋艦や重巡洋艦の登場する前の話です


【スループ・コルベット】


いずれも帆船時代に砲を積んだ小型船の事を指します。

大きさはスループ>コルベットで、違いとしてはサイズ以外にも砲門数の差がありました。

ただ、時期によってはコルベットの大型化もあって、この表現がすべてに当てはまるとは言えません。

基本的に小型になるコルベットの方が速度は速いですが、船体強度の関係から両社とも沿岸警備が主任務でした。

帆船から船体に推進機関を載せるようになってからもしばらくスループ・コルベットという言葉は使われ続けますが、やがてこれらが『巡洋艦(cruiser)』と名を変えていくことになります。


ちなみに今ではスループは存在しませんが、コルベットと以下のフリゲートと呼ばれる艦種は当時と同じ沿岸警備用や護衛の小型船として活躍をしています。




【フリゲート】


フリゲートとは、スループ・コルベットよりも大きく、戦列艦・装甲艦よりも小さな、準大型軍艦という存在でした。

フリゲートがスループ・コルベットと最も違う点は、戦列艦に随伴することができる航行能力の高さでした。

門数も当然スループ・コルベットより多く、戦列艦よりも速度のあるフリゲートは先行偵察なども行っていました。


スループ・コルベットの登場と、推進器の搭載、巡洋艦への移行という流れでフリゲートは一時消滅しますが、やがて第二次世界大戦に際して沿岸護衛艦の必要性が高まります。

この時に再び注目されたのがフリゲートという名前で、役割は異なるものの、そこそこの大きさ、量産性の高さ、外洋にも出れる護衛艦として建造が始まりました。

しかしこのフリゲートの分類基準は曖昧で、だいたい巡洋艦>駆逐艦>フリゲート>コルベットの順の大きさです。

戦後の世界の解釈にもばらつきがあり、はっきりした線引きは出来ていません。




【装甲巡洋艦・防護巡洋艦 誕生と消滅】


時代が「戦列艦」から「装甲艦」へと移行しつつあった1860年代。

この時は炸裂弾の性能向上と製鉄技術向上が立て続けに進み、攻撃力も防御力も高めることができるようになりました。

この技術を使って装甲艦が誕生しますが、特に陸上要塞に対して、速度は遅くても洋上から砲撃が出来、かつ陸上からの砲撃に耐え得る防御力は非常に魅力的でした。


しかし当然ですが、装甲を施すと重量が増えます。

イギリスが「装甲帯巡洋艦」という、装甲艦よりも小型で速度が出る船の建造を始めたものの、実際は巡洋艦というにはあまりにも遅い12ノット少々。

フランスの世界初の装甲艦【ラ・グロワール】は機帆走装甲艦で、速度は13ノット。

無用の長物もいいところでした。

その後、ロシア建造の【ゲネラール=アドミラール】という装甲巡洋艦が、世界初の実用的な装甲巡洋艦として名を残していますが、結局重たいことに変わりはなく、世界に普及はしませんでした。


そこで現れたのが、装甲ではなく、重要区画の周囲のみ装甲で覆う、軽量型の「防護巡洋艦」です。

これは砲撃を防ぐことはできないけど、心臓部さえ守れれば何とかなるという構造でした。

これはチリが費用削減のためにイギリスにこのような構造での船を発注したのが始まりで、装甲巡洋艦のあり方に問題を感じていたイギリスや、チリ同様莫大な資金をかけることができない各国の海軍はこぞって「防護巡洋艦」の配備を進めました。


ですが、防護巡洋艦の人気は長くは続きませんでした。

防護巡洋艦は「肉体はやられても骨を守れば何とかなる」というコンセプトですが、1890年代から速射砲が続々と搭載されるようになり、砲弾の嵐で骸骨になってしまうのでこの目論見は崩れてしまいます。

建造当初の口径より多少小さくなっても、数多く撃てるのであれば速射砲へ換装するほどでした。


そこで早くも復権したのが装甲巡洋艦です。

結局防護巡洋艦はハリボテに過ぎない事と、製鋼技術のさらなる向上によって速度と防御力がある程度担保できる新しい装甲巡洋艦が誕生しました。

新装甲巡洋艦は、戦艦に次ぐ主力艦として中口径の砲と20ノット前後の速度を誇り、当初は通商破壊や船団護衛を担っていましたが、やがて準主力的な存在となっていきます。


しかし装甲巡洋艦の上限値は意外と低く、装甲を厚くすれば速度が落ちて重くなる、速度と重量を重視すれば装甲が薄くなるというジレンマにすぐに陥ってしまいます。

軍艦は基本的には自艦が世界水準に並んでいるとし、すなわち自艦搭載の砲撃に耐え得る装甲であれば防御力は確保できているという認識です。

ところが装甲巡洋艦はこの確保が出来ないまま建造されるケースも出てきてしまい、このままでは防護巡洋艦の二の舞です。


力のあったイギリスとドイツはそれぞれ、装甲巡洋艦の派生として大口径を搭載した巡洋戦艦を建造・配備していますが、これも第一次世界大戦の「ユトランド沖海戦」でイギリスの巡戦がドイツの戦艦に一撃で轟沈されられるという被害もありました。

(イギリスの巡戦は速度型、ドイツの巡戦は堅牢型で、ドイツの巡戦も被害はあったもののイギリスの比ではありませんでした。)

これにより、装甲巡洋艦の要である「装甲」は、もはや海戦に必要なレベルには到達しないという烙印が押されてしまったのです。


おりしも小型艦では駆逐艦の躍進があり、小型艦で大口径砲に勝るとも劣らない魚雷を搭載できる高コスパの船に注目が集まっていました。

やがて巡洋艦はこれらを率いる船として新しい歴史を紡いでいくのですが、防護巡洋艦、装甲巡洋艦はそのコンセプトを維持することができなくなり、消滅していくのです。


ちなみに、「非防護巡洋艦」というペラペラ艦も存在しますが、もちろん戦闘に使える能力は有していないので、一時的ではありますが哨戒任務などで使われます。

日本では「通報艦」に分類されるように、あくまで偵察艦、巡視艦としての扱いにすぎませんでした。

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