痴的好奇心に救われて
性教育を受けたことがない。 ないったらない。
別に怒っているわけではないのだ。 ただ事実として、義務教育9年、および高等教育3年の合計12年の間に、私は性教育を受けたことが一度もない(月経などに関する授業は受けた。性行為に関する授業を一度も受けたことがない)。
高校2年生の頃、1学年6クラス中4クラスが保健体育で性行為について学んでいたとき、私を含む2クラスは津波について学んでいた。 津波だ。
私が高2だったのは2010年、奇しくもあの東日本大震災が起きる1年前である。 避難の方法や注意事項についてかなり詳しく学んだため、もし私の故郷が東北地方、太平洋沿岸部であれば、当時の体育教師の未来予知じみた行動に国中が畏れを抱いたことだろう。 しかしめちゃくちゃ西東京の内陸部だったので、結局彼がなぜ性教育を捨て置いてまで津波に関する授業を敢行したのかはよくわからなかった。
前置きが長くなったが、要するにこの国では、当たる教師によっては一切触れずに課程を修了できてしまうほど、性教育がザコいということである。
この国では、セックスについて触れた多くのコンテンツについて、18歳未満の閲覧を禁止しているが、私がセックスの詳しい内容と正しい避妊具の使い方を学んだのは15歳のとき、R-18のWeb小説を自主的に閲覧したときである。
これはれっきとした違法行為であるため、過去とはいえこんな風に堂々と言うべきことではないのだが、さっきも言ったとおり私は18歳、つまり高校を卒業するまで一度も性教育の授業を受けなかったため、もし法律を遵守した場合、『性的なことにほとんど無知な女子大生』が爆誕していたわけだ。
サークル、先輩、ヤリ捨て等など、様々なワードが浮かんでは消えていく。 『性的なことにほとんど無知な女子大生』がみんなそういう目に遭うとは限らないが、そういう目に遭いそうになったとき、逃げ遅れる確率が爆上がりすることだけは、間違いないと言える。 性的な知識というのは、性的な危機を回避するために不可欠なものなのだ。
だから、私個人としては、エロの全てを18禁として締め出すのではなく、正しい手順で行われているセックスに関してのみ、18歳以下の閲覧を許す……というか、公的機関かなんかで『正しいセックス』の進研ゼミの広告的な小冊子でも作って年イチで配ったら良いんじゃないの と思う。 『正しいセックス』の内容は広く色んな人が話し合って決めてくれたら良いと思うが、近年の風潮を見るに ・両者の合意がある ・避妊具を正しく使用している ・相手が嫌がったらやめる あたりはマストだろう。
正しい と 正しくない の判断基準が共有されれば、それだけで未然に防げる性的な問題もたくさんあることだろう。 セックスなんか遅かれ早かれリアルにしろヴァーチャルにしろほとんどの人が通るのだから、早め早めに学んでおいて損はないはずである。
あぁ、なんか小論文みたいになってしまった。しかも話をまとめようとしすぎて、一番言いたいところが入らなかった。
要するに、昨今のアダルトコンテンツにおける規制の嵐について物申したかったのだ。 最近そういう規制が激しくなりすぎて、エロゲーなのにほぼ顔しか映ってなかったり、エロ漫画の性器に陰毛より濃い黒ベタを塗らなきゃならなかったりするのだ。
結構話題になったので知ってる人も多いと思うが、今年の8月頃、週間少年ジャンプの編集部にに向けて「『エロ』と『性暴力』を区別してください」という署名運動が起きた。つまりラブコメ漫画の中で描かれている性暴力表現を真に受けた子どもがセクハラヤングマンになったら困るので、そういった表現を含む全てのコマに ※マネしないでね 的な注意書きを入れてほしいという訴えがあったわけである(ちなみにこの訴えの中の『性暴力』とは、『同意のない性的な行為』、つまりはキャラ同士のセクハラはもちろんキャラの下着が読者に見えていたりする場合も当てはまるそうだ)。
署名を募るサイトで、この運動を起こした人の主張を読んだが、よくわからなかった。その人は、ギャグ表現に落とし込まれた性暴力が読者にすり込まれることで、少年が性的加害者になったり、性的加害が容認される世の中になってしまうことを危惧しているっぽかったが、なんか全体的にイマイチ共感できなかった。「ぼくたちは狼なんかじゃない」で検索すると一番上に出てくるので、よかったら読んでみて欲しい。
しかし一カ所だけ、大いに共感できる箇所があった。サイトからその部分を抜粋したものを以下に示す。
僕は少年ジャンプを作っている人たちに「子供は現実とファンタジーの区別ができる、倫理観や道徳観を持っている、判断がつく」というような期待をされました、そして今の僕がそれに答えるとしたら、「性的な表現に関しては十分な性教育を受けていなかったので正しい判断はできてなかった」と答えます
これである! これに尽きる!
「性的な表現に関しては十分な性教育を受けていなかったので正しい判断はできてなかった」ならば、十二分な性教育を受けさせることが最優先の課題なのではないのだろうか。
たとえ少年漫画誌から性暴力表現が消えたとしても、そういう表現を含む作品は必ずインターネットのどこかの、未成年の手が届く位置に存在して、根絶することはできないだろう。シンプルなセクハラだけでなく、レイプもリョナもペドもスカも、読んだ人が正しい判断を下せないかもしれないコンテンツを世の中から消すことは、断言するが絶対に不可能だ。
したがって、有るものから目を背けて中途半端に隠すよりも、スタンダードを判断する基準を、最低限守るべきルールを周知する方が、よほど人を守ることに繋がるのではないだろうか。
こういう主張は言うだけでは仕方がないからして、今度自分で、『正しいセックス』を示した進研ゼミ風漫画でも描いてみようかと思う。ただ一つだけ問題を挙げるならば、『正しいセックス』を教示しようとする私が、人生で一度も性教育を受けたことがない人間であるということである。
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