和製ホラーのニュータイプ

※映画 来る の感想です。元の記事にある画像を省いているので読みにくい部分があります。

(元の記事→https://www.pandaonthsofa.com/entry/2020/02/07/104117)


 ホラー映画を観るのが好きである。

 と、人に話すと大抵「怖くないの?」と訊かれる。当然怖い。むしろ怖くなかったら観る意味がない。しかしそういうふうに答えると、今度は「怖いのに、どうして観るの?」と訊かれる。理由を考えてみた。



 おそらくだが、私がホラー映画を好んで観る感覚は、絶叫マシーンを好きな人が、絶叫マシーンに好んで乗る感覚に近い。絶叫マシーンに好んで乗る人というのは、絶叫マシーンが提供するスリルを、等身大で楽しむことができる人である。

 私自身は、絶叫マシーンに乗るのが苦手だ。「死ぬかも」と思うからだ。もし走行中に何らかの事故が起きたらどうしよう……と、本来爽快であるはずのスリルに勝手に死の恐怖を加味してしまうせいで、楽しむ余裕がなくなってしまうのだ。


 一方で、ホラー映画を好んで見る人というのは、ホラー映画が提供するスリルを、等身大で楽しむことができる人……つまり、お化けがあんまり怖くない人である。

 私はお化け、中でも特に幽霊なるものが、さほど怖くない。存在を信じていないから…というよりも、彼らには肉体がないため、「いたところで何もできないだろう」という、どこか優越感にも似た感覚があるのだ。


 ホラー映画の肝である幽霊をあまり害のあるものとして認識していないため、おどろおどろしい映像を面白半分で楽しむことが出来るし、「髪を洗っているときに思い出して怖くなる」みたいな現象も起きない。得な性質である。






 さて、導入にしては少々長すぎる雑談は終わりにして、そろそろ本題である映画の感想パートに入ろう。今回の映画は、中島哲也氏監督(『告白』とかの監督)のホラー映画、『来る』である。




 「正体不明の超攻撃的お化けが、自分の家にめっちゃ来る」




 この映画を一行で表すと、大体そんな感じになる。映画の内容は大まかに3パートに別れていて、それぞれで主人公が変わるのだが、最初の主人公である妻夫木聡(役名略)の家に例の超攻撃的お化けが3回くらい来て、その3回目で妻夫木氏がぶっ殺される……というところまでが、1パートめのあらすじである。


 この正体不明の超攻撃的お化けは、ジャパニーズホラームービー界においては異端に感じられるほど、超強力・超攻撃的である。具体的に言うと、電話越しに霊媒師のおばさんの片腕を吹っ飛ばしたり、走行中のタクシーを直接襲撃したりする。「他の奴が見てないうちに殺す」みたいな奥ゆかしさは一切なく、こういう物理攻撃がアリになるなら私だってお化けを怖いと思うが、ここまでくると怪異というよりも、災害とかテロリズムといった、どうしようもないタイプの脅威に近い感じがする。





 2パートめが始まると、視点は妻夫木氏の妻である黒木華氏(役名略)に代わる。そして何だかんだで黒木氏も例のお化けに撃破され、一人娘である知紗ちゃんが攫われてしまう。


 曰く、このお化けは負の感情などの“ケガレ”を吸って成長するらしく、実はゴリゴリに不仲であった妻夫木氏と黒木氏の結婚生活から生み出されたケガレによって、このお化けはここまで強くなった、ということらしい。そのため2パートめでは、そのケガレが生み出される過程、すなわち足並みの揃わない結婚生活や、何一つ上手くいかないシングルマザー生活が主に描かれており、ホラー映画というよりはヒューマンドラマに近い側面がある。





 3パートめでは、1パートめからちょくちょく顔を出していたオカルトライターの岡田准一氏(役名略)に視点が移る。知紗ちゃんを取り返すため、陰陽師、JK巫女、シャーマン、僧侶、祈祷師、科学者などなど日本全国の霊能関係者たちが妻夫木氏のマンションに集まって、例のお化けとの最終決戦に臨のだが、大半が死ぬ。

 岡田氏は己の過去や、命の危険を冒して知紗ちゃんを助けることなどに色々葛藤するのだが、葛藤してばかりなので基本あまり役に立たず、彼の恋人兼霊能キャバ嬢役の小松菜々氏の方がよほど活躍している感があった。彼女と他霊媒師たちの奮闘により、死に物狂いで知紗ちゃんを奪還したところで、物語はおしまいとなる。




 日本のホラー映画の最大の特徴は、お化けに“個性”があることだと私は思う。『リング』の貞子然り、『呪怨』の伽耶子然り、彼女たちには正体があって、人を祟る理由がある。


 一方この映画に出てくるお化けは、人が生み出したケガレにより凶暴化して人に害を為す、ある種の公害のような存在であり、そのため“どのようにしてケガレが生み出されたか”という部分は詳しく語られるが、“どこから来たのか”、“なぜ妻夫木氏を狙ったのか”といったお化け自体の個性は、作中では一切語られない。そういう “お化けを鏡にして人間関係を描く” という点こそがこの作品の個性であり、「斬新ですごい」と心から思う。




 その他にも、霊媒師役で出てくる松たか子・柴田理恵の怪演、カプセルホテルを利用する神官たち、邪気を払うために使用されるファブリーズなどなど見所はたくさんあるが……まぁ、こんなところである。


 正直言って、映画の感想をこんなふうにダラダラと話すのは、やっていてあまり面白くない。聞く側として、知らん映画の話を長々駄弁られても私は興醒めであるし、話す側としても、「観てない奴に言ってもな」という虚しさが常につきまとう。


 映画の感想・紹介というのは、Twitterの140字か漫画1, 2ページくらいで描くのがちょうど良いのかもしれない。それがわかっただけでも今回は良しとしよう(映画自体は面白かったのでぜひ観てほしい)。



 あぁ!エロ小説もなかなか書き上がらないし、この感想を書くのにも2週間くらいかかったので、大分ストレスが溜まっている。従って次回は久々にエロの話である!!テーマは最近読み始めた商業BL漫画と『腐女子』に関する考察だ!!心して待て!!

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