失ってからも気付かない
梅雨が明けた!
長く、辛い季節だった。何日も太陽を拝めず、雨降る道は歩きづらく、電車やバスの中は不快な湿気に充ち満ちていた。散歩やランニングなど、屋外での趣味を制限された人もいたことだろう。私も辛かった。そしてその辛さは、他の多くの人々よりもさらに耐えがたいものだった。
「他の人より」だなんて、どうしてそんなことが言えるのか?簡単である。私は傘を持っていないのだ。
おそらくあなた方のうちのほとんどは、私が約1ヶ月ぶりに提示したこの話題を「買えよ」の一言で片付けようとすることだろう。目も合わせないままに言い捨てられる三文字の、なんと冷たいことか!社会の荒波を助け合って生きるソーシャルアニマルとして、もう少し思いやりの心を持っていても損はないはずだ。
私の友人が大きな会社に内定をもらったとき、先輩社員にこう言われたらしい。
「キミは頭が良いけど人の心がないから、就職までに飲み屋でおじさんの話を聞いたりして人情を育てておいでよ」
一体どんな就職活動を展開すれば未来の先輩から「人の心がない」と言われてしまうのか想像もつかないが、それは一旦置いておこう。重要なのは、その先輩の言葉が正しいとすれば、「飲み屋でおじさんの話を聞くと人情が育つ」、つまり「どうでもいい話を聞くことは情操教育に良い」ということである。
そういうわけで不肖飯田、聞き手諸君の心を育てるという大義を背負い、今日も今日とてどうでもいい話を披露させていただこう。
さて、私が傘を持っていないという話だが、一応、今年の5月くらいまでは折りたたみ傘を1本持っていたのだ。確か去年の梅雨には一度、コンビニでビニール傘も買ったはずだ。しかしそれらはいつの間にか、私の手元から消えていた。私はそれほどだらしがないというわけではないはずなのだが、どうにも傘だけは、気付かぬうちにすぐ失くしてしまうのである。失くした瞬間を自覚することさえできないのだから、重症と言わざるを得ないだろう。
まぁ十中八九、というか確実に出先の傘立てに差したまま忘れて帰ってきているのだが、それを防ぐため傘立てに差す必要のない折りたたみ傘を愛用していたのに、それすら失くしてしまうのだから最早お手上げとしか言い様がない。
私の職場の先輩にこのことを相談したところ「お気に入りの柄の傘を買ったら、大事にして失くさないんじゃない?」とのアンサーを賜ったが、正直どんな柄だろうが、大して使わない上に使用中はほぼ視界にも入らない『傘』というアイテムを、私は好きになれる気がしない。
では傘無しで、6月半ばから7月末まで続いた今年の梅雨をどう乗り切ったかというと、単純に打たれたのである。雨に、直にだ。一月と半分の間、私はほぼ毎日雨に濡れながら職場に通った。
引くな!話は最後まで聞け。
日頃Twitterで素人丸出しの映画レビュー(謙遜である)や然程面白くない漫画(謙遜である)を公開していることから『ミス面の皮』の異名で親しまれている私であるが、さすがにびしょ濡れの状態で職場に行って良いとは思っていない。同僚が濡れてたら不気味だし、不潔感があるし、床が濡れて危ない。そのくらいの常識はある。じゃあなんで平気で雨に打たれているのかという話であるが────あくまで私の体感なのだが、ここ仙台では、雨の中を歩いても大して濡れないのである。
私は西東京で生まれ西東京で育ち、京都にちょっとばかり住んだことのある人間であるが、この2つの地域では強い雨が降ることが多かったように思う。傘を差せばパラパラと音を立て、露先(傘の骨の先の部分)からしずくが絶え間なく滴るような雨である。ああいう雨のときはさすがに、傘無しで外を歩こうとは思わなかった。
しかしこの仙台に降る雨は、どういうわけか小雨がとても多い気がするのだ。フードの付いた上着さえあれば、10分くらい傘無しで歩いてもほとんど濡れずに済む。長雨も少なく、出勤と退勤のどちらかに降っていてもどちらかには止んでいるということが多かった。
さすがは仙台、雨ですら人に優しい街である。
……なんの話だったか。私は長すぎた梅雨の愚痴が言いたかったはずなのだが、思い返せばそんなに辛くなかったし、最終的には仙台賛美に帰着してしまった。
あぁ、それにしても、話すことがない。
本ブログのバックナンバーを遡ると、シベリアだのYoutubeだの、果てはケジラミだのと底抜けにどうでもいい話をしてはいるのだが、そういうどうでも良い話さえ最近は思い浮かばないのだ。
ブログに書くほどのボリュームのない話を漫画の方で利用しようと『出張オンザソファ』なる漫画を描いたは良いものの、一生懸命描いたそれより『このインド映画どこで買えますか?』という質問ツイートの方がなぜかたくさんいいね&リツイートされてしまう始末である。あぁいうとこ、やっぱTwitterはダメだ。反響の有無が見えやすいせいで、私お得意のシュレディンガー方式が通用しない。やはりあそこは出先であり、安心できるホームはこのブログだけなのだ。
それじゃあ、次は最近始めたライターのバイトについて少し話そう。きっとまた誰の役にも立たない話になるが、あなたの暇つぶしくらいにはなるだろう。
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