第七話 国王一家救出作戦

その1 救出作戦を実行します

 危険予知魔法は反応していない。

 でも相手に魔力を探知されないよう受動専用モードで走査魔法を使ったところ、確かに魔力反応が見つかった。

 場所は……以前魔法を試した海辺付近か。

 残留魔力を追ったのかな。ならなかなか優秀な魔道士がいる模様だ。

 今の場所は魔法陣で念入りに魔力を隠したから見つからないけれどな。


「さて、そろそろ行きますか」

 ジーナの台詞に皆が頷く。

「そうだね。敵も空間魔道士を10人も展開しているようだし、今なら手薄じゃないかな」

「以前は敵の魔道士に危険予知魔法を使える者がいたようです。ですので充分注意していきましょう」

「アミュ、悪いが少しここで待っていてくれ。2時間もしない間に戻ってくるから」

「うん、アミュ、いい子で待ってる」

「頼んだよ」


「では移動します。最初は私が案内します」

 シェラの移動魔法で一気に世界を移動する。

 あっという間にあの古ぼけた砦の前だ。

 なお例によって本来の空間から少しずれた場所に位置しているので、敵から探知される可能性はごく低い。

 こっちからは丸見えだけれども。


「やはり常時通信魔法を展開していますね」

「出来るだけさっさと動くことにしよう」

「そうですね。ではお父さんは地下牢控え室の4人をお願いします。あと3人で2階の魔道士を叩きます」

「合図は魔法音声でシェラの方からしてくれ」

「わかりました」

 そんな訳で私は地下牢入口にある見張所兼控え室へと移動する。

 

 敵の魔道士はそれなりに優秀なようだ。

 既に何か危険が迫っている事を感知している模様。

 通常の入口である地上からの階段だけでなく、牢の奥方向や他の空間からも敵が出ないよう、なおかつお互いが視界に入るよう配置している。

 だが空間系魔法を使える魔道士はいない模様だ。


『お父さん、準備はいいでしょうか』

『大丈夫だ』

『ではカウント開始します。3,2,1,0!』

 私は魔法を起動する。

「強制睡眠!」

 何せ別空間からかけたのだから防ぎようが無い。

 あっさり3人が倒れる。

 独りは魔法抵抗力で少しだけ抵抗したが、魔法を強化したところで倒れた。

 ちょっと危うかったかな。

 私の睡眠魔法はあまり強力ではないようだ。

 今回はあまり相手に魔法抵抗力がなかったから大丈夫だったけれども。


『こっちは無事成功だ。そっちは』

『こちらの魔道士と衛兵も眠らせました。すぐそっちへ向かいます』

 私は一足先に牢内に入り、魔法無力化の魔法陣を壊す。

 牢の中に入っていた1人が魔法が復活した事に気づいたようだ。

『そのまま待ってくれ。すぐ助ける』

 全員に聞こえるように魔法音声で伝える。

 余分な動きをして脱出の邪魔になってはまずい。


 すぐに3人がやってきた。

『それでは予定通り行きましょう』

 まずはシェラが魔法音声で全員に伝える。

『シェラです。遅くなりましたが救出に参りました。これから移動魔法の使い手で一時的な隠れ家へと案内します。そちらで詳細は説明させていただきますので、移動するまではこちらのお願いに従って動いて下さい』

「わかった。言う通りにしよう」

 これは国王だな。


『それでは魔法移動をかけます。真っ直ぐ立って軽く目を瞑って下さい』

 実際に移動を担当するのは私、マリエラ、ジーナの三人だ。

 私が王、王妃、皇太子の移動を担当。

 ジーナがそれ以外の王子担当。

 マリエラが王女を担当する。

 シェラは今回は全体の見張りと指示役だ。

 あと砦からの救出終了後にシェラだけ少し寄り道をしてくる予定。

 今の皆の魔法の腕なら直接出現しなくても数人を魔法移動させるのは難しくない。


 そんな訳で私は担当の三人をそれぞれ魔力で包み、一気に魔法移動をかける。

 合流場所はペンションのラウンジ、あそこなら広さも充分ある。

 オーナーには話をして誰もいない状態にしてもらっている。


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