1→3散 SS 人が消え、人が雑ざる日
『番組を御覧の皆様。中継の映像はVR等の合成ではありません。シェルターからの不要不急の外出を避け、軍の指揮に従ってください。』
木星周辺のプラント等との連絡が途絶して以降、暗いニュースばかり流れるようになった。
木星は豊富な資源惑星だった。黒い球体が現れるまでは。
小惑星の資源を取り尽くした人類が、太陽系外へ進出し始めた昨今。宇宙人との
「1か月で50億人以上が行方不明、1億人以上が死亡、出現位置の予測も不可能。どこに逃げれば……。」
『情報管制が敷かれています。検索できません。検索内容は不適切と判断されました。以降、検索結果から削除されます。』
「どうなってるの……。」
黒い球体に関する検索は、
一部の居住区では銃火器を携えた兵士により、暴動の鎮圧が行われている。
太陽系から人が、減っていく。
今そこにある事実を知る事すら出来なくなっていた。
『商業区への移動は禁止されています。居住区からは出ないようにお願いします。』
面白くは無いが、
『居住区外への移動は制限されています。権限を有するIDを提示してください。』
――技術者である私すら、権限が足りない現実。
「何が、起きてい」
私の呟きに答えるかのように居住区全体が大きく揺れ、眠れない夜が始まろうとしていた。
――――――――――
『ダメだ、ダメだ。隔壁の外は危険だと報道されているだろ、どこに行くつもりだ!』
「放して! こんの!」
技術者を舐めてはいけない。
腕を掴む兵士の腕に噛みついても、
ブロンドの髪を引っ張られても、諦めない。囲んでいる兵士の装備の違いから、外で起きた事を予想する。
黒い球体が現れて以降、外での活動には軍を同伴させなければならない。
『シェルター外にて捜索中の二班が消息不明。ただ今より、ボツッ、非常事態を宣言する。繰り返す。非常事態を宣言する。各員は——』
連行されそうになっていた私と兵士たちは、区内放送に
非常事態って、星を放棄する時の……昔の戦時下でもないのに、二班が消息を絶ったくらいで宣言する?
「非常事態? そんなヤベェのか。」
「早いとこ、こいつを追い出して戻るぞ。」
あと少し、あと少しで出れたのにと隔壁を見た時。
厚さ20センチの与圧壁と隔壁をほぼ同時にぶち破り、そいつは現れた。
照明を反射しない黒い外皮、おそらく目だと思われる赤い筋、そして頭部から生えた
あまりに、異様な姿に言葉が出なかった。
「お、おい! 壁が壊れたぞ? あの黒いのは何だ!」
「こっちを見てるぞ! 住民の避難を急げー! 隔壁を閉じろ!」
兵士たちも見た事が無い侵入者らしい。銃弾を弾いたり、笑ったり、一瞬で違う場所へ移動させられたり。
私が人であるか、モノなのかさえ分からなくなっテ……気づイたラ、タべていタ。
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