第146話 罠作動

 この通路にも罠はなかった。なかったんだが、途中何故かベンチのようなものがあったので休憩を取ることになった。いきなりベンチがあるとか怪しすぎるんだが、まったく気にもせず健太とファーナさんが座る。とりあえず何事もなさそう…かな。

 …と思ってたんだけど、おもむろに健太が立ち上がろうと背もたれに手を置き力を加えたらベンチが何故か壁側へくるりと回転した。


「キャッ…」

「うをっ」

「ちょっ健太、ファーナさんっ」


 慌てて声をかけるが元に戻ったベンチに2人の姿はない。


「罠…ね」

「ちょっと2人はどこへいっちゃったのよ!」


 久々に頭が痛いわ…やっぱり健太は健太だった。

 ベンチに近づき背もたれを押してみると後ろへ下がる。ほんとにそれだけの罠のようだ。ただ問題はこのひっくり返った先がどんなところなのかによるだろう。


「どうしようか…同じように中へ入っても良いんだが、どんなところかわからないからやめたほうがいいよな」

「そうね、仮にその先に、針山やマグマ、とか不思議でもないし…」


 おいおい、もしそうだったら2人は無事じゃないぞ。


「ひにゃああああああ~~」

「うをおおおおおっ」


 健太とファーナさんの声が足元のほうから聞こえてきた。辺りを見回すが足元は地面だけ。2人の姿は見えない。一体どこから…


「…っと」


 何かにつまずいたか…? チラリと自分の足を見て原因を探す。それはどう見ても人の手だ。俺が踏んだのはそれらしい。


「は…手??」


 手が転がっているように見える。いや地面から生えているのか? 違う…動いているよこの手。まるで地面を這うかのように、手探りでもしているかのように動いていr。そしてその手が俺の脚を掴んだ。


「うひぃ…」

「な、何?」

「うわあ…何その手!!」


 横から覗き込んだリノとミネも声を上げた。振りほどこうとするが振りほどけない相手も必死なんだろうか。するとすぐその近くにさらに別の手が生える。でもこっちは見覚えがあった。ファーナさんが装備していたものが手についている。ということは…俺の脚を掴んでいるのは健太の手か?


「リノ、ミネ手伝って。この手健太とファーナさんだっ」

「わかったわっ」

「んっ」


 3人がかりで健太とファーナさんを引き上げる。一人づつ引き上げれば何とかなりそうだ。2人が這い出してきたのは丁度ベンチの下辺りだ。なるほど…ある意味これも落とし穴の罠だったんだな。


「目が…目が…」

「うう…チカチカするぅ~…」


 一体何があったのか話しを聞いてみると、落ちた先で沢山の光りを見て眩しくて叫んでいただけだそうだ。つまりこの落とし穴の先は黄色いスライムだらけってことなんだろう。


「まるでただの嫌がらせだな…」


 もうその一言しか言いようがないな。

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