第134話 6階層ボス戦

 厄介な魔物を倒し終えた俺達はそろってボス部屋へと足を踏み入れた。これからいよいよ6階層のボス戦である。一応2種類の魔物を見たわけだが、いったいここのボスはどんなのがでてくるのだろうか。とりあえず今までの感じから大きい魔物ということだけは確定しているが。


 後ろにある扉がゆっくりと閉まっていくとやはり中央付近に大きな魔法陣が浮かび上がった。その光りがおさまると中央に馬に乗った鎧が現れた。その鎧の頭部は外され左脇に抱えられている。頭があるべき場所からは青白い炎が揺らめいていた。あれだ、一般的にデュラハンと言われるやつに特徴が似ている。


「うひぃ~やっぱボスはでけぇーなっ」


 確かにでかい。まあ毎回それは同じなので驚くことではない…が、今回は馬つきだ。移動も早そうである。


 馬がぐるぐると走り出した。どうやら様子を見て隙を突いて飛び掛ってくるつもりなのかもしれない。


「固まるなーっ 危ないぞ!」


 俺の声を合図に馬が走り出した。お前に言ったわけじゃないぞと言いたいが意味はないだろうな。狙われたのは一番背の低いリノだ。見た目的に弱そうに見えたのだろう。それを見たファーナさんが馬の背後から後ろ左足の腱に矢を射る。馬はよろけ走る速度が少し落ちた。リノは馬の突進を右へとかわしつつ同じく左前足へ1撃入れる。再び馬がよろけた。この間にミネが詠唱に入る。それに気がついた健太はミネが狙われないようにミネの前に出て盾を構えた。


 鎧が右手に持っている大きな傘を閉じたみたいな槍をミネのほうへ向けると、馬の進行方向がミネのほうへと変わった。どうやら詠唱に気がつかれたみたいだ。その馬の背後側に俺は回り込み馬が健太の前につくよりも少しだけ早く『ソリスト』を使う。ピタリと馬の足が止まり、俺のほうへ頭を向けた。すぐさま『ソリスト』を解除すると再びファーナさんが今度は右後ろ足の腱に矢を放った。その矢はしっかりと刺さり馬ががくんと尻餅をつくかのように崩れ落ちた。これで馬としての速い足が封じられたということだろう。


「やべぇーな…すっごい連携取れた狩り方みたいだぜっ」

「よし…今のうちに馬の足元を完全に崩すぞ! ファーナさんは右側から弓で、みんなは左側からだっ」


 俺の言葉を理解したのかそれぞれがそのように動いていく、ミネだけはその場で詠唱を続けている。鎧が右手に槍を持っているから右側にあまり近づけないのだ。


「詠唱完了! 急いで離れてよーっ」


 ミネの声が上がった。馬をタコ殴っていた俺達は急いで馬から離れ壁際を目指す。そして俺は振り返ってそれを見た。鎧が槍を上へと向けているのを。その槍が光るのとミネの魔法が発動するのは多分ほぼ同時だったと思う。


「『フレイム』!!」

「!!」


 真っ赤な蠢く炎と一瞬だけ眩しい視界…響く大きな音。


「ひゃっきゃあああああああああああっ」


 そしてミネの悲鳴。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る