第118話 ファーナの事情

 リノとミネに見つめられながらファーナは少しだけ目をそらしていた。どうやら何かファーナさんにはこのダンジョンへきた理由があるらしい。リノ達は調査に来た結果このダンジョンを消したいと言った。ファーナさんもそれには同意らしく、その状態でも達成できるここに来た理由とは…


「どこから話せばいいのかな…?」


 ファーナさんのこの言葉にリノは軽くため息をつくと、まずは私が話しますかと言うように口を開いた。


「ファーナ・エレノアール。エレノアール家の長女で、領主の娘。わがまま、し放題で、家を追い出された。これが、私が知っている、情報」

「…あれ?領主ってファーナさんのおやつ取り上げた人じゃねーのか?」


 大人しく話を聞いていた健太がリノの言葉に反応した。確かに俺達はファーナさんからはそう聞いている。


「…おやつ?」


 呆れた顔をしてリノがファーナさんを睨んでいる。ちょっと俺も混乱中だ。この領主ってのがファーナさんの父親だとすると、ただ親にわがままばっかりやるなと取り上げられたということになる…のか?


「そーだよっその通りだよ!追い出されたってのはちがくて、大見得はって領地のためになることでもしようとして飛び出してきたの! それでこのダンジョンなら初級だし私でもつぶせるかなーって来たんだけど見ての通りってことなのっ」


 いつもと違う喋りのファーナさんが勢いよく喋った。きっとこれが普段の口調なのだろう。それに押され俺達は黙って話を聞く形になった。


「そりゃ、ヨシオとケンタを利用しようとしたのは謝るけど…でも1人じゃ無理だったんだもんしかたないじゃない! それに…おやつ美味しいし、思ったよりケンタとかやさしいし?あ、ヨシオはちょっと偉そうだと思う」


 いや、お前が言うなって話なんだが。というかファーナさんはどうみても健太に餌付けされてるわこれ。


「なんとなくどういうことなのかわかったが…問題の男達はなんなんだろうな?」

「んー…多分でいいなら予想は出来るけど、父様が雇った冒険者とかかな。ダンジョン内での私の安否の確認依頼とか…? あとはあんまり考えたくないけど、私よりも先に攻略させる依頼とか…」


 なるほど、どっちにしてもファーナさんの安全を取ろうとしているかもしれないってことだな。普通初級ダンジョンとはいえ1人で来るところではないのだろう。現にファーナさん最初スライムに囲まれていたしな。


「めんどくさい、わね」


 リノがいやそうな顔をしている。まあわからんでもない。


「みんなそう責めるなよ。簡単にいうと親と口喧嘩して飛び出したから他の人が探しにきたってことだろう?」

「大体あっているが健太は少し勘違いしているぞ」

「ん、どのへんだ??」

「おやつを取り上げられたってことは、ファーナさんが何をしているかわかっている。だから依頼が出たかもしれない。ということはただ探しているってことじゃないんだよ」

「つまり…どういうことだ?」

「捕まったらファーナさんは連れ戻される。そしてここにもうこれないかもしれないって事。ファーナさんは攻略するまで帰るつもりはないんだろう?」

「当たり前でしょうっ」


 まあそれなら待ち伏せでもしていればいいだけのことなんだが、それをしないところが不自然なんだよな。だからきっとそいつらはファーナさんを捕まえる以外にも目的があるかもしれないってことだ。

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