第302話『あの子、来てへん』

せやさかい


302『あの子、来てへん』さくら 





 酒井さん!


 はひ!


 クスクスクス( ^ิ艸^ิ゚) ププ(Ŏ艸Ŏ) ウフ(❁´ω`❁) アハ( ^ิ艸^ิ゚)


 また笑われてしもた(-_-;)


 これで三回目。



 朝、教室に入って見たら、窓側の机が一つ多い。


 ピンときた。ペコちゃん先生が言うてた例の子や。


 安泰中学の隣の中学出身で、なんでか入学が今日からの子。


 たぶん、堺市が発表してた内申の成績間違うて付けられてた子。


 75人も付け間違いがあって、高めに付いてた子もいてるけど、中にはホンマの成績よりも低く目に付けられてた子も居てて、本人が希望したら、その子らは追加合格になるとニュースで言うてた。


 それに違いない。


 なんかの事情で登校が遅れてるだけやったら、定員の中に入ってて、入学の日から名列にあるやろし、席もあるはず。


 それが、今日からやいうことは、やっぱり……そうやねんわ。


 それに、内申のわずかな加点で合格が決まるいうことは、テストの点数は低い『わたしはアホです』言うてんのといっしょ。


 やっぱり、いざ、登校するとなると……抵抗あるやろなあ……自分を、その立場に当てはめてみると、そういう結論になる。


 それに、入学の日から机の右前に貼ってある名前の紙が、その机には貼ったあれへん。


 いや……よう見ると、机の、その場所には、いったん貼って剥がしたようにセロテープの跡がある。


 やっぱり、朝になったら、ようこうへんようになってしもて、朝一番で学校に電話して、ペコちゃん先生が慌てて教室に行って名札を剥がした。


 ペコちゃん先生は、学校の裏手の神社やさかいに、走ったら一分もかからんと学校に来れる。


 そうなんや、ペコちゃん先生が安泰中学辞めて、真理愛学院に来たんは、そういう職業倫理感みたいなもんもあるさかいや。


 直接、うちらには言わへんけど、ようできた先生や。


「こら、さくら!」


「ハヒ!」


 いつのまにか、次のペコちゃん先生の現社になってしもてて、慣れた口調で怒られてしもた。


 (灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)(灬º 艸º灬)


 教室のクラスメートのみなさんは必至で笑うのん我慢してるし(≧▽≦)。



「せんせー!」


 授業が終わると、うちは、廊下に飛び出してペコちゃん先生を掴まえた。


「せんせ、例の子は!?」


「え、あ、ちょっとね……そんなことより、授業中はちゃんと集中しなきゃダメだぞ」


「そら無理です! あんなに前振りされてしもたら気になってしゃあないです!」


「先生、他にも言ったよ」


「はい、分かってます!」


 廊下で説教されてはかなわへんので、すぐに回れ右。


 教室の前で留美ちゃんが二人分の体操服抱えて待ってる。


 せや、次は体育の授業やった!


 一年生の真面目さで、もう、教室に残ってるもんは一人も居てへん。


 日直の○○さんが(まだ名前憶えてへん)困った顔して後ろのドアの前に立ってる。


 せや、日直は戸締りせんと行かれへんねんや!


「ごめん、えと……」


 いちおう謝るけど、名前を付けて謝られへん。


 ああ、なんか横柄に聞こえたやろなあ……。


「伊達さんだよ(-_-;)」


 留美ちゃんが教えてくれるけど、本人は、ちゃっちゃと走って、すでに後姿。


 挨拶とか声かけとかは、タイミングを失うと言われへんもんです。


 


☆・・主な登場人物・・☆


酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生

酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。

酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居

酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父

酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる

酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生

酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 

榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 

夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生

ソフィー      頼子のガード

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