第182話『自転車でお散歩』


せやさかい・182


『自転車でお散歩』さくら   






 トランプ占いをやってる。




 と言うても大統領選挙でねばってるトランプさんの勝敗を占ってるわけやない。


 まじ、トランプ占いです。


 占いの中身は、今日の行動、今日はなにをしたらええかっちゅうこと。


 コロナの第三波で、大阪は、ちょっと大変。


 看護師さんが足らんから自衛隊とか他府県に応援を求めてる。


 そのあおりを受けて、不要不急の部活は自粛しろとのお達しで、文芸部はお休み。


 大掃除には間があるんで、今日は一日フリーというわけ。


 おっちゃんもテイ兄ちゃんもお寺の用事で忙しい。専念寺さんのお手伝いもあるしね、この二三日は、お祖父ちゃんも檀家参りをするようになった。


 詩(ことは)ちゃんは部活。真理愛女学院もコロナで自粛やねんけど、吹部は、地元の商店街からの要請で、パレードと演奏会。めっきり人出が少なくなった商店街を元気にするためのイベントということらしい。


 高校は中学と違って、世間の付き合い的なことはなおざりにはでけへんということらしい。


 


 占いの結果は『書を捨てよ、街に出よう』になった。




 よし、久々にダミアを前かごに乗せて自転車散歩!


 一歳を二か月超えたダミアは本堂の縁側で日向ぼっこ。


「散歩にいくで」


 声をかけると、スゴイジト目で睨んできて――さくら一人で行っといで――と言ってる。


「……前かごに乗せるには、ちょっと肥え過ぎか」


 メインクーンという種類のダミアに子ネコのころの面影はない。


 なんせおっきい。こないだ計ったら八キロもあった。頬っぺたの周りにはタテガミみたいな毛ぇがサワサワと生えてて、シルエットだけ見たら、ミニチュアのライオンさん。ご先祖はマリーアントワネットの飼い猫やったという気位の高いネコなんで仕方がない(^_^;)。


 こころなし人通りの少ないご町内というか校区をゆっくりと自転車で走る。


 キーーコ キーーコ チリチリチリチリ………


 キーーコキーーコいうのは、あたしが健気にペダルを踏み込む音。手入れがいいのんで、ほんまは音せえへんねんけど、雰囲気ね(^▽^)。


 チリチリチリチリ………いうのは、ペダルを止めて惰性で走ってる時、


 15キロくらいのスピードを出すと、漕ぐのんを止めても100メートルくらいは惰性で走る。


 生活道路やから、スピードは出されへんし、平地ばっかりの堺市内やから(御陵さん周辺だけはきつい坂やけど)、まあ、こういうズボラというかのんびりした走り方ができるわけです。


 堺は、だいたい碁盤目状に道が通ってるさかい、一本曲がるとこを変えるだけで、新しい景色が開ける。


 中学になって越してきたあたしは、校区の中でも知らん道がけっこうある。


 普段は学校の行き返り、せいぜい図書館とかコンビニ・スーパーの往復ぐらいやから、けっこう新鮮。


 ワン!


 ビックリした(*_*)!


 真横で犬に吠えられる。剃り込みが入ったみたいな顔してる大型犬、たぶんシベリアンハスキー。


 なにインネンつけとんねん……思たら、しきりに尻尾振ってる。


 もうちょっと小そうて可愛らしかったら相手したるねんけど、剃り込み犬はパス。『けいおん』で平沢ゆいが、犬を見るたんびに「よーしよしよしよし(o^―^o)」してて、犬は例外なくゆいに懐くんやけど、あれは才能やね。


 50円から!


 大安売りの自販機を見つける。500CCのお茶が80円なんで、嬉しくなって買う。


 こういう安売りは、賞味期限が迫ってるのを安く仕入れて売ってるとワイドショーかなんかで言うてた。


 一口飲んで製造年月日を調べる。


 すると、賞味期限は半年先。なんか得した気ぃになる。


 角を曲がると、向こうの方から保育所の子ぉらが先生三人に連れられてお散歩中。


 みんな仲良く手ぇつないで、めっちゃかいらしい。


 特にかいらしいのが、おっきな乳母車に乗せられてる子ぉら。歩いてる子ぉらよりは小さい。一人の子ぉがウトウトしてて、横の子ぉにもたれそうになってる。あたしも、あの中に入りたいなあ。


 それから三十分ほど散歩して家に帰る。


 お昼寝すると、ダミアが寄ってきて『いっしょに遊んでえ』とアピールしよる。


 無視してると、いつの間にかいっしょに寝てしもて、気が付いたら夕方でした。


 

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