第32話『クリーン作戦』
せやさかい・032
『クリーン作戦』
期末試験は三日間で終わり。
三週間ほどで夏休み。そう思うと授業に身ぃはいらへんやろなあ……夏休みまでは試験あれへんし。
これは、グータラとかダラダラとかの予感がする。
そんな気持ちをぶっ飛ばすように、朝からクリーン作戦や!
クリーン作戦とは、全校生がゴミ袋持ってご近所のお掃除をするという勤労奉仕。
掃除当番仲間の瀬田と田中と留美ちゃんとあたし。田中は転校した田中さんとちごて男子の田中。
四月ごろは瀬田とつるんで、よう掃除サボっとった。一発カマシテからは模範的とはいかんでも掃除はサボらんようになった。
一時間かけて学校北側の道路の掃除。いちおうホウキと塵取りは持ってるけど、おもにゴミ拾い。
「ちょ、さくらちゃん」
「え、なに?」
留美ちゃんの視線を追うと、瀬田と田中がめっちゃ真面目に掃除をやってる。そう、ゴミ拾いちごて、ホウキと塵取りで。
よう見ると、二人の向こう側には五六人の外人さん。仁徳天皇陵が世界遺産になったんで、堺の街も微妙にインバウンドの増加。観光客の人やろか、ニコニコしながら掃除してる生徒の写真を撮ってる。
欧米の学校には掃除当番てないんだよ。頼子さんが言うてた。
学校の掃除は人を雇ってしているそうで、その人件費を足すとけっこうな額になる。そやから、生徒自身の手で学校の掃除をやるのは財政的にも教育的にもええ習慣らしい。学校を掃除しても珍しいのが、ご近所の掃除までやってるんやから、これは絶好の被写体になるんや。
「さあ、あの角曲がっておしまいよ!」
リーダーに指名されてる留美ちゃんが宣言する。
「「「オーー!」」」
みんなで雄たけびを上げる。
角を曲がってフリーズしてしまう。
灰色のアスファルトの上に黒々としたシミが付いてる。
「これは……」
四人がそろって思い出した。
きのう、学校の近所で交通事故があった。ほら、頼子さんとお茶してたら救急車の音がした……家でニュース見たら、高校生二人が事故に遭うて、一人は出血多量とかで亡くなったらしい。
ということは、あのシミは……!?
「掃除しなきゃいけないのかなあ……」
真面目な留美ちゃんが呟く。
気持ちは分かる。そばがゴミの収集場所になってて、ゴミ袋がカラスにでもやられたようで、けっこうなゴミが散らばってる。むろん、血だまりは水を流してきれいにされてるんやけど、現場検証とかが終わったあとやったんで黒いしみになって残ってるんや。
「お、オレらがやるわ」
瀬田が名乗りを上げる。よう見ると、さっきの外人さんらがまだいてる。瀬田はかっこつけたいだけや。付き合うんは堪忍してほしい。
「あ、おまえら、ここの通りはやらんでええ」
菅ちゃんが飛んできた。
どうやら、最初から除外してあったんを菅ちゃんが言い忘れてたみたい。
しっかりしてください、菅先生。
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