第18話『中間テストやねんけど』

せやさかい・018


『中間テストやねんけど』      




 今日から中間テスト!

 学校は午前中だけで、テストだけやっておしまい。


 小学校の時は、平日の授業の中でテストが行われたんで、まるまるテストいうのは新鮮!


 いつもは机の中に教科書やらノートやらゴチャゴチャ入ってんねんけど、そんなんは一切出してテストに臨む。


 机の上には筆記用具だけで、下敷きも出したらあかんねん。


 せやさかい、なんや気持ちが引き締まる。


 監督の先生が入ってきて、問題と解答用紙が配られるけど、すぐには書かれへん。


「ええか、先生が『かかれ』言うまで表むけたらあきません。取り掛かったら、最初にクラスと出席番号と氏名を書く。時計のアラームは切って、スマホは電源を切っておくこと。では、今から配ります」


 先生が最前列ごとに問題用紙と解答用紙を置いて行って、順繰りに前から後ろの席にまわしていく。


 ふだんはイチビリの瀬田や田中が真面目な顔してるのもおかしい。


「はい、やめー! 列の後ろの人、解答用紙だけ集めなさい! 先生の確認が終わるまで立ったり喋ったりしてはいけません」


 先生の声で三時間目のテストが終わる。


 隣のクラスから軽いどよめき。いかにも頑張ったテストが終わったいう感じ。それに比べて、うちの一組はシラ~っとしてる。二か月足らずで、それぞれのクラスに個性が現れてきたんやなあと思う。


 テスト期間中は掃除当番もない。部活もないよって留美ちゃんといっしょに教室を出る。


 あ!?


 校舎を出てビックリした。


 校門手前の広場に特設ステージが出来てて、ステージの上に気色悪い人らが立ってる。


 女子の制服着た男子二人と、男子の制服着た女子。


 三人の上には横断幕があって『性差のない制服を考える会』と書いてある。


「ちょ、あれ頼子さん!」


 留美ちゃんが目を丸くして立ち止まった。


 確かに、女装の男子に挟まれてる男装の麗人は頼子さんや。うちらは、こないだの部活で見てるから一発で分かったけど。せやなかったら、目ぇ合わせたないよって、さっさと通り過ぎたやろと思う。


「三年生有志は、性差のない制服の改訂を考えています。女子がズボンを、男子がスカートを穿いてもいいんじゃないかと考えています。もしよかったら、感想をお聞かせください……」


 男子二人はテレテレやけど、頼子さんは宝塚の男役みたいにカッコいい。そのうちに上着を脱いでスピーチを続ける頼子さん。


 胸張って堂々と喋るもんやさかい、例のCカップと思しきバストも強調されて、いやはや……ですわ。


 よう見ると、ステージの横には三年の女子三人が控えてて、机の上に置いたプリントに感想書いて欲しいとアピールしてる。


 ステージの頼子さんと目が合いそうになったけど、幸か不幸か目は合いません。

 そそくさと正門に向かって歩く。


 なんでや、頼子さんは反対やったはずやのに?


 思たけど、あたしも留美ちゃんも口を利かずに正門を出てしまった。

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