第552話 三姉妹の作戦会議
「――ということで、サキュバスクイーンのリリスだ」
「知ってるよ」
ケビンがリリスやオリビアたちを連れて帝城に戻り、憩いの広場にて紹介をしたのだがティナのいつもの名ゼリフは飛んでこず、変わりに「知ってるよ」という言葉が飛んできた。
「え、何で?」
「ケビン君がサキュバスの街についた翌日にオリビアから連絡があったよ。『帰ってこない連絡が届いたので、サキュバスクイーンのリリス様を堕としたと思います』って」
「……」
「その更に翌日にはサキュバスの街で裸祭りをして、1週間ほど祭りを楽しんだってのも聞いたよ」
「……」
ティナから告げられるケビン情報のダダ漏れ感に、ケビンは嫁ネットワークの凄さを改めて実感させられてしまうと、もうネットワークを破壊するのは無理だろうと諦めてしまうのだった。
「だから私たちにも1週間はお付き合いしてね」
「…………わかった」
ティナから特に責める態度ではなくただ単にケビンにかまって欲しいという気持ちが告げられると、ケビンは子供たちの手前もあるのでサキュバスの街のように裸祭りはできないが、1週間の間は嫁祭りを開催して嫁たちを腰砕けにしていくこととなる。
そのような催しが予定されている時に、リリスは嫁たちからの自己紹介を受けていて、あまりの多さに1度では把握しきれないでいたのだが、絶対に忘れられない名前だけは恐怖とともに頭に刻みつけられていく。
「私がソフィーリアよ。人によってはソフィという愛称で呼ぶわ。お仕事は女神をしているの」
「…………は?」
「女神よ、女神」
大事なことは3度言うソフィーリアの言葉に、早くも自己紹介されているリリスの頭は理解が追いつかない。と言うよりも『この人、頭大丈夫か?』などと不敬なことを考えていたら、ソフィーリアからそれを指摘されてしまう。
「頭は大丈夫よ」
「え……」
「貴女がいま頭の中で考えていたでしょう?」
(いやいやいや、それはありえないはず。……ちょっと試してみようかしら。ケビンのバーカ、バーカ!)
「あなた、リリスがあなたのことを『バーカ、バーカ!』って考えているわよ」
「――ッ!」
「リリス、あとでお仕置きな? エンドレス気絶だ」
「い、いや、今のは試しただけだからそれだけはやめて! アレをされると何が何だかわからなくなるの!」
「ソフィの言葉を信じないからだ。自業自得だな」
「だって、いきなり『女神です』なんて言われて誰が信じるのよ! 混乱するのは当たり前でしょ!」
「ふふっ、リリスの言う通りね」
そのような感じでソフィーリアの自己紹介が終わると、リリスはありえない状況に混乱が後を絶たないが、更なる追い討ちをかけてくる者の自己紹介でリリスはビクビクしてしまうことになる。
「私はクララだ。白種のドラゴンの長をしておる」
「……あ、あの……本当に……ですか?」
遥か雲の上の存在であるいるかいないかもわからなかった女神よりかは、遥かに身近な存在であるドラゴンの登場となり、リリスはケビンから人化できるドラゴンがいると聞いていたので、本当だったらヤバいと思ったのかついつい敬語を使ってしまっていた。
「そのように畏まらんでもよい。嫁に序列が付いておるのはソフィ殿を始めとするサラ殿とマリーだけだ。他の者たちは横並びなのだが、側妻たちは正妻を何かと立てようとするの。して、本当かどうかの証明をするなら……主殿よ、久々にアレをやろうではないか」
そう言うクララがケビンの元に歩いていくと、自ら帯を解いてその端をケビンに手渡した。それによりケビンもクララが何をしようとしているのかを察して、久々にノリノリでクララを回し始める。
「よいではないか、よいではないか」
「あ~れ~♪」
そして着物の帯をノリノリのケビンに全部引っ張られたクララが着物を脱いだら、翼としっぽをだしてリリスに見せつける。
「ほれ、この通りだ」
「……はい」
ケビンとクララの余興の時点で理解に苦しむリリスは、既にクララがドラゴンであろうがなかろうがどうでもよくなっていた。そしてクララの次に現れたのは、またしてもリリスの頭を悩ませる人物だ。
「うちはクズミと申します。基本的に商人をやってますけど、ちょっとした神でもありますえ」
「……はい?」
まさか2人目の神様が現れるとは思わなかったリリスはつい聞き返してしまい、クズミはそれを証明するためにクララのように裸になるような度胸はなく恥じらいを持っているので、狐耳と着物の上から9本のしっぽを顕現させて、亜人族の狐人族とは違うということを証明した。
「ケビン……もう私……ダメ……」
あからさまに自分とはかけ離れた存在である3人の自己紹介を受けてしまったリリスは、キャパシティを超えてしまったのかケビンに白旗を上げて気持ちを吐露するのだが、ケビンは「残りはみんな普通だから」と言ってリリスを元気づける。
だが、普通の人族の身でありながらも規格外と呼ばれるサラの戦闘力については、この時のリリスはまだ知る由もない。更に人族としては次点であるプリシラという完璧メイドが存在していることも。
それをリリスが知ってしまえば「もう休ませて……」とケビンに訴えかけること間違いなしであったが、自己紹介で戦闘をするようなことはないのでリリスのなけなしの平穏は守られることになる。
その後は無事に?自己紹介を終えたこともあり、リリスは嫁たちから新たなメンバーとして受け入れられたのだが、そのリリスは自己紹介を受けるだけで疲労困憊してしまいケビンの凄まじさを改めて再認識するのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
明くる日のこと、ケビンが里帰り第1陣を終えて帝城に戻ってきたのはいいが、新たな嫁を連れて来ていたということで危機感を募らせている者たちがいた。その者たちは宛てがわれている部屋のうち1室に集合すると、作戦会議を始める。
「おねぇ、早くしないと」
「ねぇ、九十九先輩が動く前に」
「そうね、何としてでも異世界勇者組の1番乗りは私たちが取るわよ」
そう、ケビンが新たな嫁を連れてきて危機感を募らせていたのは三姉妹である
「おねぇ、具体的にはどう動く?」
「お嫁さんたちから得た情報によると、健兄は強引に攻めればお嫁さんにしてくれるそうよ。その代わり待っているだけだと健兄任せになるから、中々お嫁さんにしてもらえないってこともあるみたい」
「でもお嫁さんにしてって言ったよ?」
「
「…………~~ッ!」
「お、おねぇ……まさか……」
「健兄がいつまで経っても手を出してくれないのは、もしかしたら私たちのことを、まだ可愛がってくれていた頃の姪っ子として見ている可能性があるからよ。それなら私たちからもう大人だってことを教えてあげないと」
「お……大人……」
「
「抱いて…………~~ッ!」
そして悶絶する2人を他所に長女としての余裕を見せつけている
そのような3人の計画は神であるソフィーリアに筒抜けとなっており、楽しそうに仕事場でモニターを見ながらクスクスと笑っては、そのことを嫁ネットワークにて広めていく。これにより三姉妹の行動を後押しするため嫁祭りの一時中断が決まると、その日の夜は三姉妹のためにケビンをフリーにしてしまうのだった。
そしてその日の夜、嫁たちから部屋で待ってて欲しいと言われたケビンは素直に部屋で待っていたら、ドアをノックする音が聞こえてきたので入室の許可を出すと、そこに現れた三姉妹の姿を見て唖然とする。
「健兄……」
「おにぃ……」
「にぃ……」
その場に現れた三姉妹は誰かからの援助があったのか、私有物ではないスケスケのネグリジェに身を包んでおり、
それもひとえに、今の服装であるスケスケのネグリジェが最もな原因とも言える。本来は色気の“い”の字もない簡易服装でこの場へやってこようとしていた三姉妹だったのだが、嫁たちに捕まるとあれやこれやのうちに今の服装にチェンジされてしまったのだ。
その時のティナの言葉が『この姿でいけばケビン君はイチコロよ』であるのだが、それを聞かされた三姉妹は当然それどころではない。三姉妹がなけなしの抵抗を見せようと下着をつけようとしても、それをティナに阻止されてしまうのだ。つまるところ
当然それを見せられているケビンは姪っ子たちの成長に目が離せず、視線を逸らすでもなくガン見しながら言葉を口にする。
「3人ともどうしたの? というか、この状況だと考えられるのは1つしかないんだけど……」
「だ……抱いて欲しいの……」
「おにぃの……お、女にして……」
「に、にぃの……ものにして……」
3人が3人ともそれぞれの想いを口にすると、ケビンはガチガチに固まっている3人の緊張を解すために、まずは軽い世間話から始めようとしてティータイムを始める。
「ここでの生活には慣れた?」
「うん……もう2ヶ月くらい経つからだいぶ慣れたよ」
「ダンジョン攻略も順調だよ」
「にぃの役に立つ」
「そっか……思い出させるのも悪いけど、兄さんたちは元気に暮らしてた?」
「お父さんとお母さんは元気だよ。おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に暮しててみんな元気なんだけど……健兄の仏壇に手を合わせる時だけはみんな悲しい顔なの……」
「父さんや母さんには申し訳ないことをしたな。せっかく孤児の俺を育ててくれたのに親よりも先に死んでしまうなんて……とんだ親不孝をしてしまった」
「そ、そんなことないよ! 女の子の命を救って立派だって褒めてたよ!」
「立派か……最期に胸を張れることをできたのがせめてもの救いか……」
そう呟くケビンはお茶をひと口含むと、ふと思い出したかのように助けた女の子の話を
「そうだ、
だが、ケビンがそのことを口にすると
「知ってる……けど……」
「
「だって、あの子があそこで遊んでなければ……」
「あの子は悪くないって思ってても……」
「悪いのはトラックの運転手とトラックに勝てなかった俺だ」
「トラックに勝てる人なんていないよ!」
「そんな人見たことない!」
「目の前にいるだろ。今なら余裕で勝てるぞ」
「それはおにぃが異世界で俺TUEEEEしてるからだよ!」
「ルール違反! 元の世界に魔法はない!」
「魔法を使わなくてもステータスだけで止めれそうだけどな」
そう笑いながら答えるケビンのおかげか、
「で、どうなんだ、
「……元気は元気よ」
「含みのある言い方だな。俺が突き飛ばしたから後遺症とかが出たのか?」
「違うよ。今も五体満足で生活しているよ。ただ……再会した時に1度だけ会話をしたことがあるの」
「ああ、気を使って申し訳なくしていたとかか?」
「それは異常なまでにあったよ。その子はね、『私には幸せになる資格がない』って言ったのよ」
「はあ? 俺が命を張って助けたんだから、幸せになってくれないと困るぞ」
「その子……私たちが健兄のことを大好きだったって知ってるのよ。だから、『貴女たちから大好きな人を奪ったから、私は幸せを求めない』って」
「ちょっと待て、なんで当時年端もいかなかった子がそんなことを知っている?」
そこから
当時、健の葬儀の際に足を運んだ女の子を助けられた相手方家族は、健の両親に何度も何度も頭を下げたのだと言う。そして、両親から説明を受けている女の子も同じように頭を下げていたのだが、その女の子を見た
――大好きなおにぃを返して!
――にぃを返して!
当然その行為は
――おねぇだっておにぃのこと大好きなのに、どうしてあの子の味方をするの!
――あの子がいなければにぃは元気なままなんだよ!
結局のところ2人が落ち着かないので別室へと連れていかれ、その場で
「はぁぁ……」
そしてその説明を受けたケビンが溜息をつくと、
「仕方がない年頃と言えば仕方がないんだが……それ以降はその子に何も言ってないな?」
「言ってない……」
「うん……」
「それならよし。ずっと言い続けていたのなら、2人をお説教しなきゃいけなかったからな」
「ごめんなさい、おにぃ……」
「ごめんなさい、にぃ……」
しかしながら現在の問題は、ケビンがその子に対して気にせず幸せになってくれと言えないことである。
「どうしたもんかなぁ……もし手紙とか送れたら気にせず幸せになってくれって伝えられるけど……死んだ俺が送っても意味がないか。悪質な悪戯として受け取られかねん」
ケビンがそのようなことで頭を悩ませていると、思いもしないことを
「今なら直接伝えられるよ」
「…………は?」
「さっき言ったよね? 『今も五体満足で生活しているよ』って」
「え……」
「“今”っていうのは、言葉の通りで“今”だよ」
「いやいやいやいやいや……え、なに? どういうこと?? もしかし……いや、それはない。年齢が合わない。ソフィが1クラスだけって言ってたし……いやしかし……ソフィのことだから……あぁぁぁぁ! 頭がこんがらがってきた!」
「ま、待て……日本から海外に飛び級で入学する話は聞いたことあるが、海外から日本に飛び級で入学ってあるのか? 大学じゃなくて高校だろ?」
「あったみたいね。私も驚きだけど」
(これ……絶対にソフィーリアが絡んでないか? もしかして聖戦の時から準備してたとか? 魔王を倒すなら勇者が1番だし、教団の勇者召喚は必然とも言える……)
そのような思考がグルグルと頭の中を回っている時に、ケビンはふと気になったことを
「1度だけ会話ってことは、今もお互いに気まずいままなのか?」
「ううん、その子って私たちに関係なく他人と深く関わろうとしないみたい。最低限のことはするけど誰とも仲良くならず距離を置いているの」
「マジかよ……俺のせいか?」
「わからない。そこまで深く入り込んで会話をしたわけじゃないし……」
「悩んでも仕方がないか。その子のことも気になるけど、俺が今1番気になってるのは、そのスケスケのネグリジェだしな」
3人の緊張がなくなったのがわかったためケビンがそのようなことを口にすると、3人は今の今まで忘れていたことを思い出してしまい、顔を赤らめてはモジモジとしだしてしまう。そのような3人を連れてケビンがベッドに上がると、それぞれにキスをしていく。
「健兄とキスしちゃった……」
「おにぃとのキス……」
「にぃ……もっと……」
それからケビンは代わるがわるそれぞれにキスをしていき、
その後は、ケビンが回復した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます