第178話 ○人揃って、コンシェルジャー ~第弍話 二日酔いほどきついものはない~

 翌朝、ケビンが必然的に真っ先に目覚めることになりベッドで起き上がると、周りでは好き勝手にスヤスヤと眠っている女性陣たちが目に入った。


「二日酔いとか大丈夫かな? まぁ、リバースする人がいなかったのが幸いだけど」


 ケビンはリビングへ向かうと、魔導通信機を使い軽めの朝食と二日酔いに効くようなさっぱりとした飲み物を注文した。


 しばらく待っていると食事が運ばれてきたので、受け取ったあとはテーブルへ適当に並べていく。


 朝食の準備が出来たところで、ケビンはみんなを起こすことにした。


「朝だよーみんな起きてー」


「うぅ……」


「頭痛い……」


「お願い……大声出さないで……」


 その光景は死屍累々の有様で、ゾンビが這うかの如くのそのそと動き出す女性陣たち。そんな様子を見てケビンは予想通りの結末に嘆息するのである。


 そんな二日酔いで死んでいる酔っぱらいたちに、二日酔いに効くドリンクと朝食を用意してあることを伝えて、酔いが覚めていそうな人は自分の足で向かってもらい、ダメそうな人は再び抱っこして運びだすことにした。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ケビンが朝食に用意したものは、柑橘系のサッパリしたドリンクで、喉越しが爽やかに感じたのか、思いのほか全員のおかわりが進んだ。


 数人は既に二日酔いから回復しているみたいなので、浴室でサッパリしてくるように伝えると、各々で向かって行き軽めの入浴をしてリビングへ戻ってきた。


 ケイラに仕事の方は大丈夫なのか尋ねると、そもそも俺の専属であるために、一緒にいる時点で仕事をしているようなものだと何故か豪語していた。


 ダンジョン探索組は回復が早かったようなので、午前中は様子を見て午後からダンジョン探索に向かうことに決める。


 一通りの予定が立ったところで、午前中はのんびりと部屋で過ごしながら、二日酔いが未だに尾を引いている者たちには、復活した者たちが世話をして、行動を開始する午後まではみんなでゴロゴロして過ごした。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 午後になるとケビンたちはダンジョン探索に向かうために、夢見亭を後にする。


 前回の続きである31階層から攻略を始めて行き、新たな顔ぶれとなる魔物との戦闘を繰り広げていた。


 この階層には、ヘビ型の魔物やクモ型の魔物が多く徘徊しており、死角からの攻撃を仕掛けてきて、気配探知がなければ易々と奇襲を受ける羽目になったであろうことが、容易に想像できた。


 魔物によるその奇襲作戦も、ティナの気配探知により容易に躱されていき、全く意味をなさないものに成り果てている。


 その様子を眺めていたケビンは、まだ自分の助けはいらないだろうと、後ろからのんびりと観戦していた。


 その後も順調に攻略を進めていき適度なところで切り上げて、この日の攻略は終わりを迎えた。


 やはり、午後の時間だけではボス部屋まで辿り着けないようであった。【マップ】を使えば難なく攻略可能ではあるが、ティナたちの成長に繋がらない。


 お風呂から上がったケビンはリビングでくつろぎつつ、今後のダンジョン攻略に思いを馳せる。


 現在のスピードで攻略すると、最深到達部の43階層まで近日中に辿り着けそうで、明らかに胡散臭い連中が待ち構えていそうだったからだ。


 意図的にボス部屋を細工した者たちかも知れないので、41階層目から先を独占している可能性も高い。


 しかも、この都市の有名なクランは2つあり、もしかしたら協力関係にある可能性があることもケビンは否定できない。


 それならばそれで構わないと思うケビンだが、奴隷に落とした月光の騎士団員は、団長のパーティーは真面目だと言っていたことも気になり、中々腑に落ちる結果を導き出せずにいた。


 問題はテイマーの職種を持っている者が、果たしてどちらのクランに所属しているかだが、どちらにも所属せずに単独で稼いでいる様なことはないだろうと考えていた。


 恐らく明日にはその答えがわかるだろうが、大した結論も得られずに、その日は悶々とした気分で、ケビンは眠りにつくのだった。

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