第54話 闘技大会 ~総員戦~ ④
~ シーラside ~
「ねぇ、Fクラスがやられてますわよ。大丈夫ですの?」
「大丈夫よ。Fクラスの旗を守ってるのはケビンだもの」
「言ってる傍からFクラスの1グループがやられましたわ。このままでは旗まで攻め込まれましてよ」
「そうね。やっぱりFクラスは毎年のことながら弱すぎるわね」
「それはそうですわ。数合わせのために選ばれた生徒達ですのよ。毎年FクラスがEクラスに繰り上がることはないのですから」
「今年はそうはならないと思うわよ」
「いくらあなたの弟さんが凄くても、クラス全員をEクラスの実力まで押し上げるのは無理ですわよ。Fクラスは所詮Fクラスなのですから」
「見てればわかるわ」
「それは楽しみですわね。ほら、予想通り旗まで攻め込まれてますわ。あら? あなたの弟さん魔法で狙われてましてよ。敵が近くにいるのにまだ寝てますわ」
モニターではちょうどEクラスの生徒がケビンに対して魔法を撃つところだった。
「ケビンの眠りを邪魔するなんて、万死に値するわね」
「そんなことよりも周りの生徒は起こさないのかしら? ダメージを受けますわよ」
モニターではEクラスの生徒から魔法が放たれたあと、ケビンの所までは届くこともなく霧散する。
「ラッキーですわね。相手が魔法を失敗したみたいですわよ」
「あなたにそう思わせることができたなら、ケビンの作戦勝ちでしょうね」
「どういうことですの?」
「今の魔法失敗はケビンの仕業よ」
「っ!? ありえませんわ。ケビン君は寝ているじゃありませんの」
「既に起きてるわよ。あの子、気配を読むのが物凄く上手いんだから」
「たとえ起きていたとしても、相手の魔法を失敗させることなんてできませんわよ。どれだけ距離が離れてると思ってますの? 攻撃すらしてないじゃありませんか」
「そこがケビンの怖いところね。攻撃されたと思わせないのよ。現にEクラスは失敗したと勘違いしてるし、誤魔化すために味方の魔法も妨害してるわね」
モニターに映る魔法の撃ち合いは、適度に失敗している生徒が敵味方問わず散見されていたのだった。
「ありえませんわ。魔法の妨害は術者への攻撃しかありませんのよ。魔法を発動した後に妨害して失敗させるなんて聞いたことがありませんわ」
「私も聞いたことがないわ。今初めて見るもの」
「それならただ単に失敗しているだけではございませんの? ケビン君がやった証拠なんてないのですから」
「もしかしたらそうかもしれないわね。でも、可能性は捨てきれないわ。ケビンはもう目を開けているのだから」
「目を開けると何かありますの?」
「戦場把握でしょうね。幾ら探知できるとはいえ、目で捉えた情報の方が多いから。ほら、ケビンが何か指示出ししているわ。ここから形勢が逆転するわよ」
シーラの言葉通りで、モニターの中ではFクラスがEクラスを圧倒していった。少しずつ数を減らしていくEクラスに対し、Fクラスの生徒は衰えることなく攻撃していく。
「もう何回目かわかりませんがあえて言わせてもらいますけど、
「ケビンがそこにいる。それだけで“ありえない”ことも“ありえる”のよ。入学試験で満点を取るのよ? そこらの生徒よりかは断然頭がいいのよ」
(はぁ……今日のケビンもカッコイイわ。ハグしてあげたい)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
~ ケビンside ~
(ゾクッ)
ヤバい……やっぱり姉さんが見てる。ここまで観られてるならもう雲隠れは無理だな。早く終わらせてベッドに逃げ込みたいけど、自分で動くと絶対に目立つし、人に任せると時間が掛かるしでジレンマだな。
そのような中で、とうとう最後のEクラスの生徒が倒れた。
「……あ……ありえねぇ……」
「よし、攻めてきてた奴等はもういないな。みんな、急いで倒れた奴等を来た方向と別の森の中に隠せ。もうそいつらは戦えないんだから雑に扱って構わないぞ。森の中へ投げてしまえ。残りのグループがここに辿りつく前に何事も無かったようにしておくんだ」
ケビンの号令とともにFクラスの生徒たちがEクラスの生徒たちを森の中へと運んでいく。律儀にちゃんと運ぶ者や言われた通りに投げる者と様々だった。
「運び終わったら休憩だ。また敵が来るからのんびりしておけ。休める時に休んでおけよ」
その場に腰掛ける者や雑談を始める者、そうやって皆思い思いに戦い始める前と同様に暇な時を過ごすのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
~ シーラside ~
「これは何なんですの!? Eクラスの生徒が一部とはいえ、負けてしまいましたわよ!」
「さすがは私のケビンね。カッコよすぎる手際だわ」
「あなたのかどうかは知りませんが、凄いことですわよ。私の知る限りでは今までFクラスは蹂躙されて終わりでしたのよ。たまに一矢報いる生徒もいましたけど」
「これは次のグループも同じように倒されるわね。もう勝つのは今まで通りのEクラスではなくFクラスよ。面白くなってきたわ」
「次も同じようになると言いますの?」
「何故ケビンが倒れた生徒を片付けさせたと思う?」
「質問を質問で返されてしまいましたわね。……戦闘の時に邪魔になるかもしれないからではないの?」
「違うわね。最初からケビンは2グループ来ていることに気づいていた。その内1グループが先に到着して先乗りしたことに喜んでたでしょ? つまり、残った1グループも何もない所に出てきたら口に出すか出さないかはわからないけど、先乗りしたことに喜ぶはずよ。Fクラスを格下と思っているのだから。そう思わせるために倒れた生徒を隠したのよ。そして何より格下と思って見下している相手に慎重になることはない。慎重になるのならそもそも見下したりはしないから。その驕りに付け込んで倒したのがさっきの戦闘よ」
「そんなことをまだ年端もいかない1年生が考えていますの? 異常ですわよ」
「そんな天才的なところもケビンの魅力よ。素敵でしょ?」
「あなたの超弩級ブラコンには敵いませんわね」
「私はブラコンじゃないわ。可愛い弟を愛しているだけよ」
「それを世間一般ではブラコンと言うのですわ」
「それは世間の認識が間違っているだけね。家族を愛せないだなんて悲しい世間ね。滅べばいいわ」
「サラリと怖いことを仰いますのね」
「何時までもそんな下らないことを言ってると、ケビンのカッコイイ姿を見逃すわよ」
「カッコイイ姿って……未だに立ち上がってすらないのですけれど? ずっと座って寝てるか指示出ししてるかですわ」
「ほら、次のグループが来たわよ。罠とも知らず間抜けね」
モニターに映し出されるは、Eクラスのもう1グループがちょうど森から出てきたところであった。
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