第15話 母の昔話

 とりあえずスキル欄の中にあった【隠蔽】で何とかするしかないな。使い方は……よし、頭の中に流れてきた。これで、スキルと加護と何故かあった称号の欄を何も無い状態に隠蔽しよう。


 よし、あとは普通に両手を乗せてゆっくり確認すればいいかな。ステータス値は低かったから、異常ってことはないだろう。


 そして、ケビンは改めて両手を魔導具の上に乗せる。




ケビン・カロトバウン

男性 3歳 種族:人間

職業:年端もいかない子供

状態:焦り


Lv.1

HP:5

MP:4

筋力:6

耐久:4

魔力:8

精神:6

敏捷:5




「ガイル司教様、表示されました。この後、どうしたらいいのですか?」


「カロトバウン夫人、拝見されますか?」


「そうね、折角だし見てみましょうか」


 そう言って2人してこちらに寄ってくると、ウインドウを覗き込む。


「やはり、加護はついていないようですな。神像が光ったので『もしや?』と思っていたのですが」


「そうですわね。しかし、これからの成長もありますし、先を見据えた神様からの祝福かも知れませんわ」


「そういうこともあるかも知れませんな」


 2人で談議するのはいいが、置いてきぼりはさすがに困るのだが。


「もう手を離してもよろしいですか?」


「おぉ、これは失礼を。もう手を離されて大丈夫ですよ。ついつい主役を差し置いてカロトバウン夫人と話をしてしまいましたな」


「お疲れ様、ケビン。アレスも待っていることだし、帰りましょうか?」


「はい、わかりました」


 教会の入口へ進むと直立不動のアレスが出迎えてくれる。もしかしてずっとその体勢だったのだろうか? 休んでないのだろうか?


「それでは、ケビン君。機会があればまた来てください。あなたに神の祝福があらんことを」


「本日はありがとうございました、ガイル司教様。機会があれば是非お伺いしたいと思います」


 そう答えると俺は馬車の中に乗り込む。母さんはすでに乗り込んでいたようだ。アレスも俺の乗車を確認したら御者台へ向かう。


「では奥様、出発します」


「お願いするわ」


 帰ったらステータスの詳細を確認しないといけないかな。ステータスは魔導具を使わないと見れないような雰囲気だったが、母さんは魔導具無しで表示させていたから大丈夫だろう。


 多分やり方はわかるが、いきなり使えるようになっていたら不審がられるかもしれないし、母さんに聞けばやり方を教えてくれるだろう。ノリノリで。


 そして家についてからしばらくして、俺は母さんのところへ向かった。


「ねぇ母さん、聞きたいことがあるんですけど、少しお時間よろしいですか?」


「そろそろ来る頃だと思ったわ。ケビンは頭がいいから矛盾に気づいたのでしょう?」


「母さんには敵いませんね。ステータス表示のことを教えていただきたいのです。教会でのことを考えると普通はステータス表示できないのですよね? 魔導具を使わない限りは」


「そうよ。普通はね……周りに人もいないし教えてあげるわ。こっちへいらっしゃい」


 ソファで寛いでた母さんの元へ向かい、俺は隣へ座る。


「そこじゃないわ。ここよ」


 そう言った母さんは俺を膝上へと抱えて座らせなおす。母さんはここへ座らせるのが好きなのだろうか?


「ふぅ……やっぱりケビンを抱っこすると落ち着くわ。精神安定のスキルでも持ってるの? というか、スキルは何も無かったわね」


「そうですね。それで、何故母さんはステータス表示が出来るのですか?」


「私が冒険者をやってたことは教えたわよね。その時に、ソロじゃなくてパーティーを組むこともあったの。その組んだパーティーの中にね、嘘か本当かわからないけど、“異世界から来た”って人が居たの」


 マジか……もしかして、召喚組の脱走者か? 勇者をやってなかったら、冒険者をやってるはずだしな。それか若しくは転移者か転生者だな。


「でね、その人と話している時に愚痴ったのよ。自分の強さを確認するのに教会に行くか、魔導具を買うかしかないから面倒だぁって。そしたらね、そりゃ不便だなって言って、その後に自分はそんなことをしなくても見れるって言うのよ」


 そりゃそうだよな。異世界から来るやつの特権みたいなものだしな。


「その時は『こいつ頭おかしいのか?』って思っちゃったんだけど、それが顔に出ててわかったのでしょうね。実際にやって見せてくれたときには驚いたわ。それからそんな簡単に見られるならやり方を教えてくれって頼んだの。最初は凄く渋ってたんだけどね、私の根気勝ちで教えてくれることになったの。まぁ、教えてくれるまで襲い続けるって言って、戦闘を吹っかけてたんだけどね」


 母さん何やってんだよ……心底、その異世界人に同情するよ。母さんが戦闘を嬉々として吹っかけている様子が目に浮かぶようだ。


「でね、最初に絶対守れって言われたことがね1つだけあるの。それはね、信用できる相手以外には絶対見せるなってことなの」


「それは何で?」


「この力を使うとね、自分と同じ異世界人だって誤解されて、最悪強制労働させられるか殺されるからだって。奴隷じゃあるまいし、そんなことあるわけないのにね」


 今ので確定したな。その異世界人は召喚組だ。強制労働は勇者の仕事で、使い道がなければ殺されるってことだろうな。


「その異世界から来たって人は大変だったんだね」


「ケビンは会ったこともない人にも優しいのね」


 会ったことはなくても、その人の状況はだいたい想像がつくからな。

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