第2話 実は日本で……

 何もない空間でちゃぶ台を挟んで座る2人のうち、女神であるソフィーリアが続きを話し始める。


「あなたが今から行く異世界は、私の管理する世界の内の1つです。その世界は日本で言うところの剣と魔法の世界になります。文明レベルは中世ヨーロッパ辺りを想像しててください。あとは、勇者や魔王といった存在がいますが、特段気にする必要はありません。あなたの生きたいように生きればいいだけです」


「今までに俺のような形で異世界へ行った人はいるのですか?」


「何人もいますが、そういった方たちは異世界召喚された場合や、転生された場合とあります。前者は基本勇者になって魔王を倒してくれと頼まれるパターンですね。まぁ、騙されて元の世界に帰れないのがオチですが。後者は着の身着のまま生きられる方が多いですね。最近は現代日本に疲れ果てて、スローライフを目指す方が多いようですけど」


「召喚された挙句、騙されてるってのは癪ですね」


「それがわかっている一部の人は、早々に国に見切りをつけて自分で世界を巡る冒険に出ていますね。その後、力をつけた後に復讐に走る人もいますが」


 復讐かぁ……その気持ちはわからんでもないな。勝手に呼び出されて元の世界に帰れないんじゃあ、本人からしてみればやってられないよな。


「あとは稀に自身で異世界渡りの方法を見つけ出して、元の世界に帰られる方もいらっしゃいます。その場合こちらで身につけた技能等は引き継がれますので、俺TUEEEEを現代文明でリアルに出来てしまうんですけどね。でも、戻った世界で物足りなくなってしまって、また異世界へ旅立つのですが」


「まぁ、当然ですね。何でも出来てしまっては、日本では生きづらいでしょうから。野生動物相手に無双したところで虚しいだけですし、一夫多妻のハーレムなんて日本じゃ望めませんから」


「そうでもありませんよ? 力をもってして法律を変えたり、スキルを使用して隠蔽したり出来ますから。あながち、捨てたもんじゃないんですよ? 物足りない部分は、バトルジャンキーになった場合ですね。強者との戦闘というものがありませんから」


 ん……? そうすると、その部分さえ問題なければ日本でも生きられるのか。まぁ、俺は死んだ身だから日本に帰るという選択肢はないのだが。


「ちなみにバトルジャンキーじゃない人で、日本でしれっとハーレムしている人っているのですか?」


「いますよ。先程申し上げたスキルによる隠蔽を使って、違和感を感じないように深層心理に働きかけて戸籍とか作ってましたよ」


 戸籍を作る? えっ!? もしかして……


「異世界の住民を日本に連れて帰っているのですか?」


「はい、そうですね。異世界でハーレムを作って日本に帰る時に連れて帰り、戸籍がないと不便だからということでスキルを使って作成する。日常生活は偽装スキルによって姿を変えているので、普通の人と変わりない状態ですよ」


 気づかなかった……そんな人たちが日本に住んでいたのか。羨ましすぎるな、おい。日本でリアルハーレムかよ。


 お金なんてスキルを使えば何とでもなるんだろうし、養えないことはないんだろうな。そもそも、自力で異世界渡るぐらいの力の持ち主なんだから、不都合になることなんてないんだろう。


「ちょっと話が横道に逸れてしまいましたから戻しますね。それで、あなたには異世界へ渡る前にスキルを付与したいと思うのですが、何か希望はありますか?」


「俺の場合は、召喚じゃなくて転生になるんですよね?」


「いえ、そうとも限りませんよ。姿形は任意に変えられますので、転生が良ければこれから生まれてくる赤ちゃんに、召喚が良ければこれから召喚しようとしている所に、転移というのもありまして任意の場所に転移させる方法と、大まかに3種類ほど選ぶことが出来ます」


 なんと!? 姿形は任意なのか。てっきり、赤ちゃんからやり直しかと思っていたが選べるのか。


 でも、召喚だけはないよな。ヤバそうな感じがする……赤ちゃんからやり直すか、転移にするか悩みどころだな。


「仮に転生した場合は、今持っている知識とか技術は無くなるのですか?」


「どちらでも構いませんよ。好きに出来ますから」


 そうなると、仮に転移だったらそこから異世界の知識を学ばないといけなくなるな、赤ちゃんからやり直した方が順調に知識は蓄えられていくか……


「転生でお願いするとして、スキルってどんなものがあるのですか? 種類とかわからなくて……」


「スキルは膨大な量がありますので、一覧からお選びください」


 ソフィーリアがそう伝えると、湯のみしか置いてなかったちゃぶ台の上にモニターをいきなり出現させた。


 モニターには定番なものからよくわからないものまで、びっしりと隙間なく並んで表示されていた。


(うん、ありすぎて見づらい。カテゴリー分けとか出来ないのかな?)


「これってカテゴリー分けとか出来ないんですか?」


「えーと、ちょっと待ってね」


 ソフィーリアはそう言いながら健の隣へと移動して座りなおす。


(ちょっと、近いんですけど!? ドキドキしてしまうじゃないか。しかも、なんか良い香りがするし……ヤバいな、何も考えられなくなる)


「ここをこうしてっと、……出来たよ! ってあれ、どうしたの? 顔が赤いよ? 体調が悪いの?」


「いや、好きな人がこんなに密着した状態でいたら、顔も赤くなるっていうもんでしょ?」


「――ッ!」


 ソフィーリアも健の言葉に釣られて顔を赤らめてしまう。


「と、とりあえず、カテゴリー分けしたから見やすくなったと思うよ。確認してみて!」

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