part.3-1 私を救ってくれた人
異世界『アレンガルド』この世界の大半を占める大陸に『リアラ大陸』が存在する。リアラ大陸には数々の国が有り、結ばれた条約によって人々は自由に国を行き来することが出来る平和な世界だ。しかしながら、人間と同等、又はそれ以上の力を持つモンスター達がこの世界の住人を苦しめてきた。そんな中、ここ『ガレルヤ王国』領内の『カドゥ平原』は王国内でも屈指の穀物生産地として知られて来た。しかし、農村の村人の高齢化、人口減少、そして有害なモンスターの増加により、穀物地帯は年々減少し、ここ数年間税としての麦を納め切れていない。幸いなことに王政は国民に対して寛大的で本件も『気長に待つ』とのことで税の一部免除、及び納付猶予が与えられているものの貧乏な国家故にあまりに悠長にしていると国が潰れかねない。
「そこで、君へクエストを発注したい」
カドゥ村の村長は厳格な顔立ちでそう言った。冒険者である『スミノフ イヴァンカ』も自然と指先に力がこもる。
「具体的には探索とモンスターの討伐だ。特に最近はレイジフォックスの被害が増えている」
「探索?モンスターの討伐は既に伺っていますが……」
「ああ。探して欲しいのは水場だ」
「水場、と言うと?」
「かつて使われていた古井戸や池などの水場があるはずだ。水が無いと作物は育てられんだろう?」
「なるほど、確かにそうですね」
「だが、水場があったとしてもそこはモンスターの巣窟となってしまっている場所もあるはずだ。だから安全な水場を確認して欲しい」
と、村長は答えた。つまりイヴァンカの初仕事は水場周辺の安全を確保すると言うことだ。
「よろしく頼む。これが過去のカドゥ村の地図だ。井戸の場所も大雑把に描かれてある」
「ありがとうございます」
イヴァンカは村長から地図を受け取った。
「くれぐれも気をつけてくれ。君の父さんも油断してしまったから……」
「分かっていますよ。行ってきます」
村長の気遣いにイヴァンカはそう答えた。
◉ ◉ ◉
イヴァンカの父親である『スミノフ クレオス』は冒険家だった。冒険家としてのランクはそれなりで、レイピア一本で多くのモンスターと戦ってきたクレオスは彼女にとってまさに『自慢のお父さん』だった。
『イヴァンカ、強い人になりなさい。身体の強さでは無くて心の強さだ。心さえ強ければ良い、後は男が守ってくれるさ』
イヴァンカの父であるクレオスが良く言っていた言葉だ。だからイヴァンカが『お父さんみたいに立派な冒険家になりたい!』と言う言葉を許してはくれなかった。今となっては真意は分からないが娘に危険な想いをさせたくないという想いが強かったのかもしれない。
ある時、クレオスは死んでしまった。モンスターに追い込まれて崖の端まで追い込まれて、そのまま転落死したらしい。その後、遺体は発見されて、今はカドゥ村のお墓で眠っている。
「お父さん、ごめんね?でも、お父さんも結局私を守ってはくれなかったから……」
クレオスが眠る墓の前でイヴァンカはそう言った。イヴァンカはクレオスが決して認めてくれなかった冒険者になることを選んだ。クレオスが生きている間に振るっていたレイピアを、今は彼女が握っている。
「それじゃあ、行ってきます!」
イヴァンカはそう言うと、クレオスのお墓を後にした。
続く……
TOPIC!!
『レイジフォックス』危険度 ★
群れで狩りを行う肉食系の狐でルビー色の瞳が特徴。
個々の戦闘力は低く、単独なら冒険者で無くても対応出来るほどだが
群れで襲われると手が付けられなくなる。
行動パターンは
<1.捜索フェイズ>
獲物を探して周囲を単独で徘徊している状態。単独のため、最も対処が簡単な状況となる。
<2.アラートフェイズ>
獲物、もしくは敵と認識した生物を発見すると、遠吠えで仲間のレイジフォックスを呼ぶ。この間、発見した側のレイジフォックスは防戦体制を取り、仲間が駆けつけるまでの時間稼ぎを行う。
<3.ハンティングフェイズ>
仲間と合流すると標的を囲み、一斉に攻撃を行う。
となる。また、群れでの階級や役割等が存在する為、非常に社会性の高いモンスターとして知られている。
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